心霊探偵、神原語は仕事しない

巫夏希

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第二章 シュレーディンガーの幽霊

第22話 自己紹介2

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 いや、進んでいるのかどうかを聞いていたような気がするけれど――その感じからすると少々話題はずれているような気がする。ええと、鷹宮先生? 教授というか准教授というか、そういったものが付いているのかどうかは定かではないけれど。

「ホムンクルスというのはね、人類の未来を切り開く第一歩と言っても過言ではない代物だ」

 まだ、話は続くのか。
 一体いつになったら、ぼく達はこの島にやってきた目的を果たせるのか、全く見当が付かなかったけれど、付かないのであれば付かないなりに、やっていかなくてはならない。
 或いは、もがきを続けるか――その何れかではあるが。

「人類の未来を切り開くというのは、ちょっと烏滸がましいような気がしないでもないが……、でも、間違いではないのだろう。いずれにせよ、それが実現すれば人類の科学力は大きく飛躍するんじゃないかね。例えば、産業革命のそれとは比べものにならないぐらいには」

 確かに、ホムンクルスが実現すれば、世の中のありとあらゆる問題が解決するように思える。
 例えば、人口減少が囁かれる国ではホムンクルスを積極的に開発していけば、労働人口の減少に寄与することだろう。ロボットのそれとはどう違うのかが分からないけれど、機械を嫌う人間も少なからず居るので、そういう人間にもアプローチ出来ると考えれば、ホムンクルスは新たなプロセスを生み出すことが出来るのかもしれない。

「ホムンクルス……。それが生まれれば、例えば人工的に不老不死を生み出すことも可能になる?」
「それは分からないね。何せ、まだ研究段階だ。確かにそれなりに成果を上げているところがあるのは間違いない。しかしながら……、その成果を表立って言えない事情があることもまた、事実だ。事実であるが故に、大っぴらに言えないこともまた然り」
「では、一般人がホムンクルスを知る頃には、上の人間はとっくの昔に知っていることになる、と?」

 上の人間というのが、酷く曖昧であることは今は忘れることとして。

「ああ、そういうことになるね。残念ながら、それがこの世界の理だ。全く新しい技術を一般人が触れられるようになる頃には、既に上の――例えば貴族に近いような存在であるならば、数年前に触っていて慣れ親しんでいる技術と化している、と言っても過言ではないだろうね」

 難しい話だな。
 実際、世界の理というのは真理であることは間違いないだろう――とはいえ、それをひっくり返すことが出来ないのもまた事実。というか、当たり前だ。金を持っている人間の特権、とでも言えば良いだろうか。別に金を持っていないからぼくのような人間が下級階層に留まっているのか、と言われるとそう簡単に解決出来ることではないのだけれど。

「そうですか……。なら、少しだけ残念ではありますね。ホムンクルス。人間とは違う、新たな形の生命……、それが作り出せたとするならば、きっと人間の歴史は大きく変わることとなるでしょうに。タイムマシンは絶対に作れないと分かっていたから、こういった物も出来ないと勝手に思い込んでいましたけれど、科学技術もまだまだ捨てた物ではないということですね」
「おう、勝手に捨ててもらっちゃあ困るって話ではあるな。噂によればもう超が付く程の金持ちはホムンクルスを実際に作り上げるために、一つの国が買える程の金を注ぎ込んで、計画を前に前に進めようとしているらしいけれどね。まあ、何処まで進むかどうかも分からないし」
「分からないし、って……。ホムンクルス研究に対する、ってことならあんたも当事者だろ?」
「当事者だよ、あたしは。けれども、あたしは極論、金さえ出してもらえればそれで良いのさ。あたしは誰から金を貰ったかなんて考えていないし、忘れてもいるし。相手はどれだけ金を注ぎ込んだかなどとくどくど話してくるけれどさ、言わせてもらえればあたしは別に金を払って欲しいとは一言も言っていねー訳だし。勝手に相手が興味を持って、勝手に資金を注ぎ込んだだけだ。それでいきなり権利を主張されても、そいつは困るって話だ。それをしたいなら、それこそ人を買う程の金を――ヒモとして養うぐらいの金を追加で注ぎ込んでくれないとねえ?」

 いや、そういうものか?

「そうねえ。それは流石に無理だろうけれど……、ほら、やっぱりそれならここのお嬢さんに懇願してみるのも良いんじゃないかい? きっと一兆円ぐらいなら出してくれると思うよ」

 一兆円ってそんなポケットマネーで言える金額ではないと思うのだけれどね?
 せいぜいポケットマネーで言えるのって、ぼく達の部類で言えば一万円でも厳しいぐらいだけれどなあ。

「勘弁して下さい。流石に一斤染財閥であろうともポケットマネーでその金額は簡単には出せません」
「ですよねー……」
「半額が限界ですね」

 ……いや、五千億円もまあまあとてつもない金額だと思うけれどね? 五千億円ってそれなりに大きい会社を購入出来そうだけれど、それを一斤染財閥はポケットマネーで出来る、ということか……。恐ろし過ぎる。
 五千億円を手に入れたら、どんなことが出来るんだろうな。あんまり考えたくないけれど、考えたくもなるのもまた人間の性って奴なのかもしれない。結局の話、五千億円手に入れば少なくとも一生遊んで暮らしても使い切れないだろうし、使い切れるとしたらそれはぐうたらと堕落を突き詰めた人間であって、その先にあるのは人間の生活すら送ることの出来ないものとなっていることだろう。

「五千億円でも相当な大金であることは間違いないと思うのだけれどね……。仮に出してくれるのなら、簡単にあたしは権利を売り払うかなあ」
「その五千億円で何をするつもりだ? 流石に全額研究費としては使い切れるとは思えないが……」
「流石にそんな馬鹿みたいな使い方はしないねえ。まあ、七割ぐらいが限界かな」
「七割って、それでも三千億は超えていると思うけれど?」

 この国の研究費上回っているんじゃねえの?
 そう考えるとこの国の研究費が安過ぎるってことでもあるのだけれど、そこについてはしっかり修正してもらえることを祈ろう。

「三千億は使うかな。やっぱりホムンクルスの研究という前例がない研究――正確には錬金術という定義では前例がありまくりでもあるけれど、近代科学では大した前例がないものでね。そうなるとやっぱりお金は掛かっていく。当たり前だ、前例があればこれはしなくて良い、これはしていないからしてみよう、という試行錯誤が出来る。けれども、前例がなければ? 百個のやり方があるとして、前例があれば七十で済むのが、百個全部やらなければならない。となると、やっぱり研究費は嵩み続ける。それこそ、湯水の如くね」
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