415 / 765
7章 大騒動の冬支度
67
マチルダたちがトラブった相手は、そんな、早々に移動して来た相手だった。
マチルダの話では農業や林業や大工なんかで雇われている側の人たちは、冬の間の収入が無くなるので、この街のダンジョンに家族総出で出稼ぎにくることは珍しくないんだとか。
冬支度を始めてから一度もダンジョンに行けていないので知らなかったけど、今ダンジョンはそんな人々でごった返してて、早朝から頑張ってもボス部屋は3回程度しか回れないくらい混雑してるらしい。
マチルダたちが揉めたのはそんな出稼ぎ組のグループで――家族どころか隣近所声を掛け合わせて3、40人の団体でやって来た集団だったらしく、なんとそいつらは、ダンジョン内全ての水場に人を配置して、マチルダたちを水場から完全に締め出してしまった。
水場に続く通路に入れないよう威嚇されたり、ひどい時ではかなり手荒く追い出され、軽いケガを負ったこともあったようだ。
……ダンジョン内で水すら飲ませねぇとか、正気か⁉︎ 冬場の水分こそ意識的にとるもんなんですけどねぇ⁉︎
しかしマチルダたちは孤児で他にも親身になってくれる大人はいない、周りの人たちも、そんな行為に眉を顰めることはあってもマチルダたちを助けるような行動をとる者はおらず……
マチルダたちはボス部屋で周回しつつノドが乾いたらギルド内の食事所でミントティーなんかを飲みながら凌いでいたらしいのだが、肉が手に入らなくなってしまったことや物価の高騰もあり、スープの具材がダンジョン内で取れる草ぐらいしかなくなってしまったらしい。
そうなるとダンジョン近くの屋台がとんでもない誘惑に変わってしまい、ダメだと分かりつつも散財。 貯金も思うようにいかず、なんなら少し減ってしまって――
私たちが癒の日に売っている細長パンがあれば、少しは貯金が出来るんじゃないか……? と、相談にやって来たとのことだった。
「変なのに目ぇ付けられちゃったねぇ……?」
「――多分、大勢知り合いがいるから強気なんだ。 力仕事もしてんだろうな、男どもの腕なんかものすごく太くってさ……」
「そんなに強いなら5階より下に行くとかは……?」
「ないな。 あいつらボス部屋にも並ばねぇんだ」
そう言ってマチルダは大きなため息と共に、羽織っていたブランケットを前でかき合わせながら、ポソリと続けた。
「大銀は減っちまった……」
「……貯金?」
「――ああ。 あたしがうまく止めさせられりゃ良かったんだろうが……スープはその辺の雑草、パンはカチカチだとな……? 高い金出して野菜は買いたくねぇし……あたしだって肉は毎日食いてぇ――じゃあ売りもん買うしか、って……」
そう言いながらマチルダはお茶のカップに視線を落としながら悔しそうに顔を歪める。
マチルダの話では農業や林業や大工なんかで雇われている側の人たちは、冬の間の収入が無くなるので、この街のダンジョンに家族総出で出稼ぎにくることは珍しくないんだとか。
冬支度を始めてから一度もダンジョンに行けていないので知らなかったけど、今ダンジョンはそんな人々でごった返してて、早朝から頑張ってもボス部屋は3回程度しか回れないくらい混雑してるらしい。
マチルダたちが揉めたのはそんな出稼ぎ組のグループで――家族どころか隣近所声を掛け合わせて3、40人の団体でやって来た集団だったらしく、なんとそいつらは、ダンジョン内全ての水場に人を配置して、マチルダたちを水場から完全に締め出してしまった。
水場に続く通路に入れないよう威嚇されたり、ひどい時ではかなり手荒く追い出され、軽いケガを負ったこともあったようだ。
……ダンジョン内で水すら飲ませねぇとか、正気か⁉︎ 冬場の水分こそ意識的にとるもんなんですけどねぇ⁉︎
しかしマチルダたちは孤児で他にも親身になってくれる大人はいない、周りの人たちも、そんな行為に眉を顰めることはあってもマチルダたちを助けるような行動をとる者はおらず……
マチルダたちはボス部屋で周回しつつノドが乾いたらギルド内の食事所でミントティーなんかを飲みながら凌いでいたらしいのだが、肉が手に入らなくなってしまったことや物価の高騰もあり、スープの具材がダンジョン内で取れる草ぐらいしかなくなってしまったらしい。
そうなるとダンジョン近くの屋台がとんでもない誘惑に変わってしまい、ダメだと分かりつつも散財。 貯金も思うようにいかず、なんなら少し減ってしまって――
私たちが癒の日に売っている細長パンがあれば、少しは貯金が出来るんじゃないか……? と、相談にやって来たとのことだった。
「変なのに目ぇ付けられちゃったねぇ……?」
「――多分、大勢知り合いがいるから強気なんだ。 力仕事もしてんだろうな、男どもの腕なんかものすごく太くってさ……」
「そんなに強いなら5階より下に行くとかは……?」
「ないな。 あいつらボス部屋にも並ばねぇんだ」
そう言ってマチルダは大きなため息と共に、羽織っていたブランケットを前でかき合わせながら、ポソリと続けた。
「大銀は減っちまった……」
「……貯金?」
「――ああ。 あたしがうまく止めさせられりゃ良かったんだろうが……スープはその辺の雑草、パンはカチカチだとな……? 高い金出して野菜は買いたくねぇし……あたしだって肉は毎日食いてぇ――じゃあ売りもん買うしか、って……」
そう言いながらマチルダはお茶のカップに視線を落としながら悔しそうに顔を歪める。
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
イリス、今度はあなたの味方
さくたろう
恋愛
20歳で死んでしまったとある彼女は、前世でどハマりした小説、「ローザリアの聖女」の登場人物に生まれ変わってしまっていた。それもなんと、偽の聖女として処刑される予定の不遇令嬢イリスとして。
今度こそ長生きしたいイリスは、ラスボス予定の血の繋がらない兄ディミトリオスと死ぬ運命の両親を守るため、偽の聖女となって処刑される未来を防ぐべく奮闘する。
※小説家になろう様にも掲載しています。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
<完結>金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」