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7章 大騒動の冬支度
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マチルダたちがトラブった相手は、そんな、早々に移動して来た相手だった。
マチルダの話では農業や林業や大工なんかで雇われている側の人たちは、冬の間の収入が無くなるので、この街のダンジョンに家族総出で出稼ぎにくることは珍しくないんだとか。
冬支度を始めてから一度もダンジョンに行けていないので知らなかったけど、今ダンジョンはそんな人々でごった返してて、早朝から頑張ってもボス部屋は3回程度しか回れないくらい混雑してるらしい。
マチルダたちが揉めたのはそんな出稼ぎ組のグループで――家族どころか隣近所声を掛け合わせて3、40人の団体でやって来た集団だったらしく、なんとそいつらは、ダンジョン内全ての水場に人を配置して、マチルダたちを水場から完全に締め出してしまった。
水場に続く通路に入れないよう威嚇されたり、ひどい時ではかなり手荒く追い出され、軽いケガを負ったこともあったようだ。
……ダンジョン内で水すら飲ませねぇとか、正気か⁉︎ 冬場の水分こそ意識的にとるもんなんですけどねぇ⁉︎
しかしマチルダたちは孤児で他にも親身になってくれる大人はいない、周りの人たちも、そんな行為に眉を顰めることはあってもマチルダたちを助けるような行動をとる者はおらず……
マチルダたちはボス部屋で周回しつつノドが乾いたらギルド内の食事所でミントティーなんかを飲みながら凌いでいたらしいのだが、肉が手に入らなくなってしまったことや物価の高騰もあり、スープの具材がダンジョン内で取れる草ぐらいしかなくなってしまったらしい。
そうなるとダンジョン近くの屋台がとんでもない誘惑に変わってしまい、ダメだと分かりつつも散財。 貯金も思うようにいかず、なんなら少し減ってしまって――
私たちが癒の日に売っている細長パンがあれば、少しは貯金が出来るんじゃないか……? と、相談にやって来たとのことだった。
「変なのに目ぇ付けられちゃったねぇ……?」
「――多分、大勢知り合いがいるから強気なんだ。 力仕事もしてんだろうな、男どもの腕なんかものすごく太くってさ……」
「そんなに強いなら5階より下に行くとかは……?」
「ないな。 あいつらボス部屋にも並ばねぇんだ」
そう言ってマチルダは大きなため息と共に、羽織っていたブランケットを前でかき合わせながら、ポソリと続けた。
「大銀は減っちまった……」
「……貯金?」
「――ああ。 あたしがうまく止めさせられりゃ良かったんだろうが……スープはその辺の雑草、パンはカチカチだとな……? 高い金出して野菜は買いたくねぇし……あたしだって肉は毎日食いてぇ――じゃあ売りもん買うしか、って……」
そう言いながらマチルダはお茶のカップに視線を落としながら悔しそうに顔を歪める。
マチルダの話では農業や林業や大工なんかで雇われている側の人たちは、冬の間の収入が無くなるので、この街のダンジョンに家族総出で出稼ぎにくることは珍しくないんだとか。
冬支度を始めてから一度もダンジョンに行けていないので知らなかったけど、今ダンジョンはそんな人々でごった返してて、早朝から頑張ってもボス部屋は3回程度しか回れないくらい混雑してるらしい。
マチルダたちが揉めたのはそんな出稼ぎ組のグループで――家族どころか隣近所声を掛け合わせて3、40人の団体でやって来た集団だったらしく、なんとそいつらは、ダンジョン内全ての水場に人を配置して、マチルダたちを水場から完全に締め出してしまった。
水場に続く通路に入れないよう威嚇されたり、ひどい時ではかなり手荒く追い出され、軽いケガを負ったこともあったようだ。
……ダンジョン内で水すら飲ませねぇとか、正気か⁉︎ 冬場の水分こそ意識的にとるもんなんですけどねぇ⁉︎
しかしマチルダたちは孤児で他にも親身になってくれる大人はいない、周りの人たちも、そんな行為に眉を顰めることはあってもマチルダたちを助けるような行動をとる者はおらず……
マチルダたちはボス部屋で周回しつつノドが乾いたらギルド内の食事所でミントティーなんかを飲みながら凌いでいたらしいのだが、肉が手に入らなくなってしまったことや物価の高騰もあり、スープの具材がダンジョン内で取れる草ぐらいしかなくなってしまったらしい。
そうなるとダンジョン近くの屋台がとんでもない誘惑に変わってしまい、ダメだと分かりつつも散財。 貯金も思うようにいかず、なんなら少し減ってしまって――
私たちが癒の日に売っている細長パンがあれば、少しは貯金が出来るんじゃないか……? と、相談にやって来たとのことだった。
「変なのに目ぇ付けられちゃったねぇ……?」
「――多分、大勢知り合いがいるから強気なんだ。 力仕事もしてんだろうな、男どもの腕なんかものすごく太くってさ……」
「そんなに強いなら5階より下に行くとかは……?」
「ないな。 あいつらボス部屋にも並ばねぇんだ」
そう言ってマチルダは大きなため息と共に、羽織っていたブランケットを前でかき合わせながら、ポソリと続けた。
「大銀は減っちまった……」
「……貯金?」
「――ああ。 あたしがうまく止めさせられりゃ良かったんだろうが……スープはその辺の雑草、パンはカチカチだとな……? 高い金出して野菜は買いたくねぇし……あたしだって肉は毎日食いてぇ――じゃあ売りもん買うしか、って……」
そう言いながらマチルダはお茶のカップに視線を落としながら悔しそうに顔を歪める。
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