8 / 1,038
8
しおりを挟む
「ーーあっ⁉︎ 教養科ってことは奇跡が起きれば同じクラスに……⁉︎」
天井を眺めていたリアーヌは、その言葉と共にガバリッと飛び起きる。
が、すぐに肩を落として、再びベッドの上にゴロリと横たわった。
「そんなん無理だよねー……なんで合格だったのか理解できないくらいにマナーの試験じゃ何も出来なかったし……そんなヤツがSクラス入りは詐欺でしょ……」
レーシェンド学院には、中等部、高等部、研究院という3つの学部に別れていて、そこからさらに、教養学科、一般学科、育成学科、専門学科という4つの学科に分かれていた。
リアーヌの元の世界では、貴族科、平民科、騎士科、ギフト科という通称で呼ばれていて、どの学科も成績ごとにクラス分けされている。
一番上のクラスがS、そこからABC……となっていた。
学科の試験に合格すれば元平民のリアーヌが教養学科に合格したように、血筋で落とされることは無いーーというのが学院側の主張だ。
ーーただし、暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するもので、王族が教養学科の試験に落ちたという事例は一度もなく、婚外子ーーいわゆる愛人の子供が教養学科の試験に落ちる確率は非常に高い。
……一般学科を設立する際も、建前としては、平民であろうとも優秀な者たちには、等しく平等に学ぶ機会をーーということだったが、一般学科に所属する殆どの生徒が、教養学科の試験に落ちた者たちばかりで、貴族階級にある者が一般科の試験に落ちたという話は誰も聞いたことがなかった。
ーー国立のレーシェンド学院。
つまりは国の管理下にある学院で、国の上層部は王族と貴族ばかり……ーー暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するものなのだ。
騎士科はその名の通り、騎士育成学科となっていて、この学科が学院一の実力主義だと見做されている。
ーーある程度は、という枕言葉はついてしまうが。
「そういえば来年はザームが騎士科受験するって話だったな……ーー英断すぎる。 あの子にマナーや紳士としての立ち振る舞いは無理よ……」
父親が子爵家を継ぎ、嫡男となったザームだったが、その性格や素質から、教養学科に入り子爵家の運営をするよりも、騎士となり国に貢献する方がいいだろうと判断され、早々に騎士科の試験を受けることが決まっていた。
「ーーゆうて【身体強化】のギフト持ちだし、体動かす方がよさそう……最悪、専門科には絶対に合格できるし……」
専門科はギフト持ちならばどんな身分でも入れる学科で、その試験もかなりハードルが低いものとなっている。
それぞれのギフトを強化し、伸ばすことが目的の学科なので、当然マナーが出来なくとも教養が身についていなくとも卒業することができる唯一の学科だ。
(……本当ならここに入るつもりだったんだよねー。 ーーなんでか、両親に相談した次の日には奥様ーーはもう母さんだから大奥様か……ーー大奥様やヴァルムさんたちの知るところになっていて「一般科の方が将来の役に立つ!」と、試験勉強を教わることになってたんだよねー……でもさ? 専門科だったら授業料も安いし、試験もギフトを披露するだけの簡単なお仕事だったんだ……ーーでも実際に勉強始めてみたら、ゲームの中でも描かれてなかった、この国の歴史とか興味しかなかったし、ほかの授業も前世の高校受験のほうがよっぽど……ってくらいのレベルだったしで「まぁ、このくらいなら専門でも一般でもいっかー」とか思ってたら、あれよあれよと言う間に貴族の仲間入り、マナーができれば教養科だって夢じゃない⁉︎ とかいう話になっちゃってーー……そっからはみんな厳しかったなぁ……あの日々が報われて本当によかった……)
ふぅーっと大きく息を吐きながら、優しく襲ってきた、とろりとした心地の良い睡魔に身を委ね、目を閉じてモゾモゾと眠りに入る体勢を整えた。
(あ……合格通知……片付け……ーー)
そこまでは起きていたリアーヌだったが、実際に行動することはなく、合格通知は翌朝、奇妙な皺を刻まれた状態で発見されたのだった。
天井を眺めていたリアーヌは、その言葉と共にガバリッと飛び起きる。
が、すぐに肩を落として、再びベッドの上にゴロリと横たわった。
「そんなん無理だよねー……なんで合格だったのか理解できないくらいにマナーの試験じゃ何も出来なかったし……そんなヤツがSクラス入りは詐欺でしょ……」
レーシェンド学院には、中等部、高等部、研究院という3つの学部に別れていて、そこからさらに、教養学科、一般学科、育成学科、専門学科という4つの学科に分かれていた。
リアーヌの元の世界では、貴族科、平民科、騎士科、ギフト科という通称で呼ばれていて、どの学科も成績ごとにクラス分けされている。
一番上のクラスがS、そこからABC……となっていた。
学科の試験に合格すれば元平民のリアーヌが教養学科に合格したように、血筋で落とされることは無いーーというのが学院側の主張だ。
ーーただし、暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するもので、王族が教養学科の試験に落ちたという事例は一度もなく、婚外子ーーいわゆる愛人の子供が教養学科の試験に落ちる確率は非常に高い。
……一般学科を設立する際も、建前としては、平民であろうとも優秀な者たちには、等しく平等に学ぶ機会をーーということだったが、一般学科に所属する殆どの生徒が、教養学科の試験に落ちた者たちばかりで、貴族階級にある者が一般科の試験に落ちたという話は誰も聞いたことがなかった。
ーー国立のレーシェンド学院。
つまりは国の管理下にある学院で、国の上層部は王族と貴族ばかり……ーー暗黙の了解というものはどこの世界にも存在するものなのだ。
騎士科はその名の通り、騎士育成学科となっていて、この学科が学院一の実力主義だと見做されている。
ーーある程度は、という枕言葉はついてしまうが。
「そういえば来年はザームが騎士科受験するって話だったな……ーー英断すぎる。 あの子にマナーや紳士としての立ち振る舞いは無理よ……」
父親が子爵家を継ぎ、嫡男となったザームだったが、その性格や素質から、教養学科に入り子爵家の運営をするよりも、騎士となり国に貢献する方がいいだろうと判断され、早々に騎士科の試験を受けることが決まっていた。
「ーーゆうて【身体強化】のギフト持ちだし、体動かす方がよさそう……最悪、専門科には絶対に合格できるし……」
専門科はギフト持ちならばどんな身分でも入れる学科で、その試験もかなりハードルが低いものとなっている。
それぞれのギフトを強化し、伸ばすことが目的の学科なので、当然マナーが出来なくとも教養が身についていなくとも卒業することができる唯一の学科だ。
(……本当ならここに入るつもりだったんだよねー。 ーーなんでか、両親に相談した次の日には奥様ーーはもう母さんだから大奥様か……ーー大奥様やヴァルムさんたちの知るところになっていて「一般科の方が将来の役に立つ!」と、試験勉強を教わることになってたんだよねー……でもさ? 専門科だったら授業料も安いし、試験もギフトを披露するだけの簡単なお仕事だったんだ……ーーでも実際に勉強始めてみたら、ゲームの中でも描かれてなかった、この国の歴史とか興味しかなかったし、ほかの授業も前世の高校受験のほうがよっぽど……ってくらいのレベルだったしで「まぁ、このくらいなら専門でも一般でもいっかー」とか思ってたら、あれよあれよと言う間に貴族の仲間入り、マナーができれば教養科だって夢じゃない⁉︎ とかいう話になっちゃってーー……そっからはみんな厳しかったなぁ……あの日々が報われて本当によかった……)
ふぅーっと大きく息を吐きながら、優しく襲ってきた、とろりとした心地の良い睡魔に身を委ね、目を閉じてモゾモゾと眠りに入る体勢を整えた。
(あ……合格通知……片付け……ーー)
そこまでは起きていたリアーヌだったが、実際に行動することはなく、合格通知は翌朝、奇妙な皺を刻まれた状態で発見されたのだった。
64
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜
水月華
恋愛
レティシア・ド・リュシリューは婚約者と言い争いをしている時に、前世の記憶を思い出す。
そして自分のいる世界が、大好きだった乙女ゲームの“イーリスの祝福”の悪役令嬢役であると気がつく。
母親は早くに亡くし、父親には母親が亡くなったのはレティシアのせいだと恨まれ、兄には自分より優秀である為に嫉妬され憎まれている。
家族から冷遇されているため、ほとんどの使用人からも冷遇されている。
そんな境遇だからこそ、愛情を渇望していた。
淑女教育にマナーに、必死で努力したことで第一王子の婚約者に選ばれるが、お互いに中々歩み寄れずにすれ違ってしまう。
そんな不遇な少女に転生した。
レティシアは、悪役令嬢である自分もヒロインも大好きだ。だからこそ、ヒロインが本当に好きな人と結ばれる様に、悪役令嬢として立ち回ることを決意する。
目指すは断罪後に亡命し、新たな人生をスタートさせること。
前世の記憶が戻った事で、家族のクズっぷりを再認識する。ならば一緒に破滅させて復讐しようとレティシアには2つの目標が出来る。
上手く計画に沿って悪役令嬢を演じているはずが、本人が気が付かないところで計画がバレ、逆にヒロインと婚約者を含めた攻略対象者達に外堀を埋められる⁉︎
更に家族が改心して、望んでいない和解もさせられそうになるレティシアだが、果たして彼女は幸せになれるのか⁉︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる