【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 ボスハウト邸、ダイニング。
 早朝から叩き起こされたリアーヌは、数人の使用人に囲まれ、空の皿を前に、うんざりした空気を漂わせつつも食事のマナーを、徹底的に復習していた。

(今日はゼクスに招かれ、ラッフィナート家で夕飯をいただく日なわけですが……ーーなんだって私は朝もよから、ディナーの時の立ち振る舞いを延々と繰り返させられているのかと……)

「ーーお嬢様、食事中に髪に触れてはいけません」
「す、すみません……」

(ーー全然出来てないからですよね? すみません……ーーでももう限界なんです……延々と空のお皿相手に食べる真似とか……頭おかしくなりそう……)

 受験対策のマナーレッスンの時以上に熱の入った指導に、辟易へきえきとすリアーヌ。

 この状況には、ボスハウト、ラッフィナート両家の思惑が大きく関係していた。

 当初の予定では、すぐにでも食事会が行われるはずだったのだが、ここで両家の思惑同士がうまく一致してしまったのだ。
 それは『食事会の日取りを少しでも先延ばしにしたい』というものだった。
 ボスハウト家としては、マナー等を確認する時間を必要とし、ラッフィナート家は貴族一家を招くための準備期間を必要としていた。
 ーーしかしディナーに招待され、招き返し、実際に食事をすることが決まったにも関わらず、日程を先送りするという行為は褒められたものではなかった。
 両家共にその事実を公表するつもりなどなかったのだが……お互いの家を信用できるほど付き合いがあるわけでもなくーー
 苦肉の策として『リアーヌをゼクスが食事に招く』という、間違いなく時間稼ぎのためだけの食事会が開催されることになったのだった。

(ただでさえ食事のマナーとか不安しかないのに、一人で行かなきゃいけないとか不安が過ぎる……ーーでももう空のお皿は見たくない……)

 リアーヌが大きくため息を吐き、メイドコレットがそれを注意しようと口を開いた時だった。
 一人の使用人が足早にダイニングに入ってきて、コレットに何事かを耳打ちした。

「ーー本日はこれまでにいたしましょう」
「本当⁉︎」

 コレットの言葉に満面の笑みで返したリアーヌは、嗜めるような視線を返されキュッと唇を引き結ぶ。
 しかし、辛かった時間からようやく解放されたという喜びが、リアーヌの唇を自然と綻ばせていた。
 もはや自分ではどうにもならない口元に、リアーヌはチラチラとコレットたちの顔を伺いながら、なんとかごまかそうとその前髪や鼻を、しきりに何度も何度もいじくるのだったーー
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