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「お嬢様、先程先触れが到着しまして、ラフィナート様が少々早めにお越しになるとの伝言と、お嬢様宛の贈り物が届きました」
「贈り物……?」
前髪をいじっていたリアーヌはゆっくりと手を下げながら首を傾げた。
「はい。 本日、ぜひ着用してほしいとメッセージの添えられた、ワンピースだと聞いております」
「ーー……えっ?」
コレットの言葉に、目を見開き驚愕の表情を浮かべるリアーヌ。
「ーーお二人は婚約していらっしゃるのですから、なにも可笑しいことはございませんよ……?」
そんなリアーヌの反応をどう思ったのか、コレットは安心させるように笑顔を作っていったのだがーー
リアーヌは瞳を揺らしながら不安そうに答える。
ーーリアーヌが問題視しているのは、そんなことではなかったからだ。
「……ーーえ、万が一にも入らなかったらどうするんです……?」
(お腹とか二の腕とか……パツンパツンだったりしたら死にたくたるんですけど……?)
「ーー……当家のメイドは優秀でございますれば……」
リアーヌの言葉にグッと言葉を飲み込んだコレットは、スッと頭を下げながら答えた。
「あー……ね?」
(なんだろう……変に『きっと大丈夫ですよ!』とか気休めを言われるよりは好感が持てるけど……言外に『入らなくっても何とかするから心配無いよ!』って言われるのも、メンタルに響くもんなんだな……)
リアーヌは唇の周りをシワだらけにしながら口を窄めると、納得がいかないような恨めしげな顔つきで、コレットの方をチラチラと盗み見た。
「ーーご支度をお急ぎ下さい」
リアーヌの視線には気がついていたコレットだったが、ここで言葉を重ねたところでリアーヌの機嫌を治すことはできないだろう……と判断し、深々と頭を下げながらリアーヌを自室へと促すのだった。
「……はぁい」
そう答えたリアーヌは、再び唇の周りをシワだらけにしながら自室へと戻って行くのだった。
その後ろ姿を見送り、ほかのメイドたちと困ったように苦笑を浮かべ合っていると、廊下からヴァルムの咳払いが聞こえてきた。
そのタイミングの悪さに、あちゃぁ……と頭を抱え、お互い顔を見合わせるメイドたち。
誰かがプッと小さく噴き出すと、やがて全員がクスクスと肩を震わせ始めーー
廊下からこちらを見ているヴァルムに気がつき、サッと表情を消すと視線を交わし合うこともなくテキパキとダイニングの片づけ作業を始めるのだった。
◇
自室でリアーヌの到着を待っていたワンピースは、カスタードクリームのような優しい黄色と、ミルクチョコレートのような明るい茶色のストライプ柄で、控えめなフリルと艶やかなボタン、そしてーー
パフスリーブにウエストをリボンで締めるという、とてもお優しいデザインだった。
そのため、リアーヌが心配していたような事態にはならなかった。
ならなかったのだがーー
そのワンピースをデザインを一目見たリアーヌは、ホッとする気持ちと同時に、やはりどこか釈然としない思いを抱えることになったのだったーー
「贈り物……?」
前髪をいじっていたリアーヌはゆっくりと手を下げながら首を傾げた。
「はい。 本日、ぜひ着用してほしいとメッセージの添えられた、ワンピースだと聞いております」
「ーー……えっ?」
コレットの言葉に、目を見開き驚愕の表情を浮かべるリアーヌ。
「ーーお二人は婚約していらっしゃるのですから、なにも可笑しいことはございませんよ……?」
そんなリアーヌの反応をどう思ったのか、コレットは安心させるように笑顔を作っていったのだがーー
リアーヌは瞳を揺らしながら不安そうに答える。
ーーリアーヌが問題視しているのは、そんなことではなかったからだ。
「……ーーえ、万が一にも入らなかったらどうするんです……?」
(お腹とか二の腕とか……パツンパツンだったりしたら死にたくたるんですけど……?)
「ーー……当家のメイドは優秀でございますれば……」
リアーヌの言葉にグッと言葉を飲み込んだコレットは、スッと頭を下げながら答えた。
「あー……ね?」
(なんだろう……変に『きっと大丈夫ですよ!』とか気休めを言われるよりは好感が持てるけど……言外に『入らなくっても何とかするから心配無いよ!』って言われるのも、メンタルに響くもんなんだな……)
リアーヌは唇の周りをシワだらけにしながら口を窄めると、納得がいかないような恨めしげな顔つきで、コレットの方をチラチラと盗み見た。
「ーーご支度をお急ぎ下さい」
リアーヌの視線には気がついていたコレットだったが、ここで言葉を重ねたところでリアーヌの機嫌を治すことはできないだろう……と判断し、深々と頭を下げながらリアーヌを自室へと促すのだった。
「……はぁい」
そう答えたリアーヌは、再び唇の周りをシワだらけにしながら自室へと戻って行くのだった。
その後ろ姿を見送り、ほかのメイドたちと困ったように苦笑を浮かべ合っていると、廊下からヴァルムの咳払いが聞こえてきた。
そのタイミングの悪さに、あちゃぁ……と頭を抱え、お互い顔を見合わせるメイドたち。
誰かがプッと小さく噴き出すと、やがて全員がクスクスと肩を震わせ始めーー
廊下からこちらを見ているヴァルムに気がつき、サッと表情を消すと視線を交わし合うこともなくテキパキとダイニングの片づけ作業を始めるのだった。
◇
自室でリアーヌの到着を待っていたワンピースは、カスタードクリームのような優しい黄色と、ミルクチョコレートのような明るい茶色のストライプ柄で、控えめなフリルと艶やかなボタン、そしてーー
パフスリーブにウエストをリボンで締めるという、とてもお優しいデザインだった。
そのため、リアーヌが心配していたような事態にはならなかった。
ならなかったのだがーー
そのワンピースをデザインを一目見たリアーヌは、ホッとする気持ちと同時に、やはりどこか釈然としない思いを抱えることになったのだったーー
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