成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……思ったままに行動するかたなんです。 笑うことも怒ることも、悪いと思えば相手が誰であろうと頭を下げる。 その心のままに……ーー村人が“嬢”と呼ぶ声に笑顔で答えるような……そんな方ですよ?」
「無駄そうだが……ーーお前はそうは思ってはいないようだな?」

 ため息を吐きながら答えたトビアスは、ニヤリと笑って揶揄うような視線をオリバーに向ける。
 そんなトビアスに、オリバーは少し目を見開き、驚いたような表情になったのち、ゆっくりと破顔しながら口を開いた。

「ーー俺は好ましいと感じます……ーー自分でも知らない間にそう感じてたんで、あの方意外に凄いッスよ? ……初めは、尊き血筋だってことすら認めたくないレベルでしたけど……ーーなんの躊躇も無く心の内を晒して……けれど、必死に貴族であろうとするお姿を見続け、気がつけばーー守って差し上げたいと思っていました」

 オリバーはまるで自分の恋心を告白するかのように、はにかみながら、しかし胸を張って誇らしそうに答えた。

「ーー人を選ぶお方か……」

 トビアスは先ほどのオリバーの言葉を思い返しながら、ため息混じりに言って椅子の背もたれに身体を預けた。

「はっきり分かれるでしょうねぇ? 正直、忠誠を誓えないなら可愛いモンだと思いますよ? 拒否反応するやつは王族とすら認めたくないほどの反応見せそうですし……ーーまぁ、見る目が無いだけなんですけどねー⁇」
「ーーお前には目をかけてきたつもりだが、ずいぶんあっさりと決めたもんだな?」

 トビアスは、オリバーがすでに王城を去り、ボスハウト家へ就職する覚悟を決めているのだと理解すると、苦笑混じりに肩をすくめる。
 相談の一つくらいあっても良さそうなものだろうに……と心の中でグチを言いながら。

「ーーヴァルム様の気持ちも分かってるつもりですが……使用人が圧倒的に不足してます」
「ーーだろうな」
「……一番に切り捨てられるのはお嬢様です」

 苦々しく顔をしかめながら答えたオリバーの言葉にトビアスも似たような表情になり口を開く。

「ヴァルムにそんなつもりはあるまい」
「しかしそうなります」
「……妥協し、使用人を増やすという話に落ち着いたはずだ」
「……それでもあの方の護衛が増える保証はありません。 ヴァルム様にとっては一番に守る方はご先代の子爵夫人であるカサンドラ様、そこから現子爵夫妻、ザーム様……そしてお嬢様です」
「ーーそこまで明確に区別しているとは思えないが……まぁ、お前の言いたいことは理解できた」

 オリバーはリアーヌを守りたいのだ。
 ボスハウト家よりも彼女を。
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