成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「……でも怒られるのも猛特訓もやだぁ……」
「ーーああ。 さすがは優秀と名高いだけのことはありますわよね? 貴女の評価を教師に直接たずねに行くなんて……なんて主人思いなのかしら⁇」

 ビアンカは手で口元を覆いながらニヤニヤとした笑いを浮かべると、揶揄うような視線をリアーヌに向けた。

「くっ……! 全部オリバーさんが悪いんだ……なんでもかんでもヴァルムさんに報告しちゃうから……‼︎」

 新しく使用人となったオリバーは、来年のために少しでも学園に慣れておくーーと言う理由から、リアーヌの送り迎えを担当するようになっていた。
 ーーそして、リアーヌのマナーや社交の実力に疑問を覚えていたオリバーは、教師たちの所へ直接出向き、リアーヌの実力や授業中の話を根掘り葉掘りたずね始めた。
 通常ならば、例え使用人であろうとも、個人の評価などをペラペラ喋るようなことは無いのだが、教師たちにも思うところがあり、その口は思いの外軽くペラペラと良く回ったのだったーー

 その結果、オリバーが聞いた話は、すぐさまヴァルムに共有され、リアーヌは家に帰っても社交やお茶会の特訓を再開する羽目になっていたのだ。

(今までは無かったことにしてきたアレやコレが、オリバーさんを通じてヴァルムさんたちにすぐさま伝わっちゃって……私の特訓が日に日に強化されていった……ムリだって……もう覚えられんて……ーー大体あの人、今は完全に部外者のくせして、なんでああも好き勝手にこの学園の中を動き回っているのかと……ーーまぁ、咎める立場の教師陣がなにも言わないんだから、誰に咎められることも無いんだろうけどー)

「ーーさっさと歩かないと置いていきますわよ」

 いつの間にかリアーヌを抜き去り、だいぶ離れたところまで歩みを進めていたビアンカが、後ろ振り返りながら呆れたように言った。
 その言葉にパッと顔を上げたリアーヌは「やだぁー待ってぇー」と情けない声を上げつつ小走りでビアンカに駆け寄っていく。
 リアーヌはこれまでの経験から、今追いついておかないと、ビアンカが本当に自分を置いていくと知っているからだった。

 それから少し歩くと、廊下に人気が多くなってきた。
 学生同士で歩いている者、後ろにメイドや護衛が付き従っている者ーー様々な生徒たちが、学年、コースをごちゃまぜに、廊下を行き交っている。
 ビアンカと連れ立って歩きながらその光景を見ていたリアーヌは、小さくため息をきながら心の中で再びボヤく。

(そりゃ、こんだけ人が多く出入りする学校だもんなぁ……ーーオリバーさん一人ぐらい見咎められるわけないかぁ……)
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