成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「ーーもし誰だったのか思い出せたら、見事な対応でしたって伝えておいて?」

 そう言いながらコンラートはチラリとリアーヌに視線を走らせる。
 バチッと目が合い、ビクリと肩を震わせるリアーヌ。

「……必ず」

 その視線だけで回復をかけたのがリアーヌだとバレている、と判断したオリバーは、歪む表情を隠すように、さらに大きくこうべを垂れて見せた。

(……ミヒャエリス先生ってば、嘘を見抜くギフトでも持ってるのかってぐらい鋭いんだよねぇ……ーー人が隠してる秘密をうっかりを装って大勢の前で暴露するって趣味を持ってるからこその特技なんだけど……ーー自分がその対象になるのは勘弁願いたいかなぁ……?)

 顔をひきつらせたリアーヌは、無理やり愛想笑いを貼り付けながら、コンラートたちが部屋から退出していくのを静かに見送る。
 途中エドガーが、リアーヌたちに向かってお礼を言うそぶりを見せたが、オリバーが「俺たちはただ居合わせただけだ、礼は助けてくれた人にするんだよ」と、声をかけられ無言で会釈するだけに留めていた。

「あ……あの私……ご迷惑をおかけしてしまって……」

 扉まで歩いていったサンドラはその向こうにビアンカの姿を見つけ、申し訳なさそうに頭を下げる。

「お気になさらないで? 何事もないようで安心致しましたわ」
「すみませんでした」
「ご迷惑おかけしました」

 ビアンカの言葉にサンドラもエドガーも、ビアンカだけではなくリアーヌやゼクスにも向けてペコペコと頭を下げながら立ち去っていく。

 入れ違いにビアンカが部屋へ入ると、ゼクスが大きく伸びをしながらオリバーに向けて口を開いた。

「んー……ミヒャエリス先生への口止めは何がいいですかねぇ……?」
「確かワインを好まれていたはずです」

(ロゼのスパークリングですよね! 分かります‼︎)

「見繕っておきます」
「よろしくお願いいたします」

 頷き合う二人に、少し不安を感じたリアーヌは伺うようにたずねる。

「ーー黙っててくれますかね?」

(あの人本当に愉快犯で……その時が面白いならなんでもありな人ですよ……?)

「養護教諭とはいえ、学園の職員です。 生徒のプライバシーをペラペラ喋るようなおかたいらっしゃらないかと」
「そう信じたいですよねー?」

(……割とペラペラ喋っちゃうんだよなぁ……? ーーいやでも、ちゃんと人を選んで暴露してるって意見も多かったか……ーーだったら、うちはともかくラッフィナートは敵に回さないかな……?)

「ーー問題なのはエドガーの方ですね」

 言いにくそうに紡がれたオリバーの言葉に、皆の視線が集中した。
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