成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 もっと言ってしまうのであれば、パトリックの実家であるエッケルト家は、その成り立ちからパラディールの力を借りて叙爵を受けている家なのだ。
 そのつながりは、リアーヌが考えている以上に強固であった。

 ーーその嫡男との婚約が整っているビアンカが、レジアンナも流行を広めるために力を貸したスクラップブックに興味すら示さないというのは、許されないのだろう。

 しかし、リアーヌの目から見たビアンカの表情は、義務感から仕方なく……といったいったものでは無いように見えた。

(どっちかっていうと、なんか楽しんでるような……?)

「……ーー以外に楽しんでる?」
「……思っていたよりは楽しめるものでしたわ?」

 ビアンカはツンッとアゴを逸らしながら、高飛車にも見えるような仕草で答えたが、リアーヌはそれが単なる照れ隠しであることをきちんと見抜いていた。

「へぇー? 見せろとは言わないから、こんなのがあって嬉しかったーとかいうの教えてよー」

 リアーヌはニヨニヨと笑いながら、隣に座るビアンカに軽く肩をぶつけながら、からかうような声色で言った。
 よくよく観察してみると、指先を擦り合わせてみたり、口元は笑うのを堪えるかのようにヒクヒクと動いていたり、その一つ一つから、ビアンカが楽しんでスクラップブックを交換しているのが分かるようだった。

(ーー正直、ちょっと意外。 ビアンカさんってば、結婚なんて所詮は契約でしょ派なのかと……恋愛感情なんて結婚してから芽生えるようになれば良いねー? ぐらいの考えなのかと思ってた……)

「ーー……知らなかったのだけれどね? パトリック様はとても博識でしたの。 私も見たことがなかった民族が織った伝統的な布や文字なんかをたくさん知っていらしてね……?」

 ビアンカは冷静さを装いながらも、 その頬の赤さや、瞳の輝き具合から、内心では大変に興奮していることが丸わかりであった。
 ーーと、同時にリアーヌはパトリックの多大なる歩み寄りの精神に気がつくこととなる。

「リアーヌ貴女、この花を知っていて?」

 ビアンカはペラリとスクラップブックをめぐりながら、その中に貼ってあった紫色の可愛らしい小さな花を差しながらたずねた。

「ーー見たことあるけど名前までは……」

 そんなリアーヌの答えにビアンカは満足そうに微笑むと、得意げに話し始める。

(……これはもう完全に自慢したかったやつじゃん……)

「この花はね、ランタナって名前なんだけど、『協力する』とか『一緒に』なんて意味の花言葉が普通んだけどね?」
「えー! パトリック様花言葉に詳しいの? 凄いね⁇」

 リアーヌは素直な気持ちで心からの賛辞を送った。
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