成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「ーーそんな顔しないでくださいよー。 お嬢様、ピペーズ通りでのデートお好きじゃないですかー?」

 オリバーは困っていることをごまかすように、どこかわざとらしく、からかうような口調で言った。

 ピペーズ通りには、数多くの見目麗しいスイーツを置く店や、可愛らしい菓子やパンなどが看板となっているカフェなどが数多く出店されていて、流行に敏感な若者たちの間では絶大な人気を誇っていた。
 
 流子に敏感で、可愛いくて美味しいものが大好きなリアーヌもこの通りがお気に入りで、デートのたびに必ずと言っていいほど、この通りで休憩をしたり、立ち寄ってから、帰路についたりして土産を持ち帰っていた。
 だからボスハウト家の人間たちの間でも、リアーヌのピペーズ通り贔屓はよく知られる事実だった。

「それは、そうなんですけど……」

(ーーちょっと行きにくいといいますか……なんかこう、モヤモヤするといいますか……)

 口ごもるリアーヌに、オリバーは少し諦めたように軽いため息をつけながら「それにーー」と続けた。

「……それに?」
「私の見立てでは、おそらく明日からのスケジュールは、全て埋まってしまうと思われます。 なので今日を逃すと次の機会はなかなかやってこないかと……」

 そういいながら恭しく頭を下げるオリバー。

「……え、いやーーでも、私今でも割とマナーとか立ち振る舞いとか……」

(家帰ってから、ずっとやってますよ? 毎日のように頑張ってますよ⁇)

「はい。 幸にしてそちらはお嬢様の努力が実り、お力を付けていているとみなが褒めておりました」
「だったらーー」
「ですので。 ーー明日からは一般教養、そして座学にも力を入れましょう」
「…………テストの点は」
「点が取れているからと言って、理解していないものをそのままにはしておけません」

 ピシャリとはねつけるようにそう言ったゼクスの瞳は、凍りついたかのように冷たかったーー


「……今日はやめとく……?」

 オリバーとの会話でガックリと項垂れてしまったリアーヌに、ゼクスは気を使うように静かに話しかけた。
 リアーヌはそんなゼクスをジッと見つめ返し、縋り付くような声色で答える。

「ーー今日からラッフィナートの子にしてください……」
「うん。 密室とはいえ人聞きが悪すぎるからやめてもらえるかな?」
「……今夜は帰りたく無いの」
「こんな状況で言われたくなかったなぁ……?」

 死んだ魚のような目で、淡々と言い募るリアーヌに、ゼクスは盛大に頬をひきつらせながら答えるのだったーー
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