成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 しかしゼクスからは口角を引き上げたアンナの姿がよく見えたので、クスクスと笑いをこぼしながらもフォローを入れる。

「ほらほらそんな顔しないのー。 このお好み焼きってのに入ってるツナマヨっての? 美味しいよ? はいあーん」
「ーーあーん!」

(ツナマヨのお好み焼き、好き!)

「あらぁー、若いっていいわねぇ?」
「あんなイケメンに食べさせてもらったら、そりゃ美味しいわよねぇー?」

 二人のやりとりを見ていたご婦人たちがニヤニヤと楽しそうに言葉を交わし始めるが、もきゅもきゅとお好み焼きを咀嚼するリアーヌの耳には届いていないようだった。

「うっまぁー!」

 満足そうなリアーヌの笑顔に今度は近くにいた男性陣がコソコソと言葉を交わし合う。

「……ありゃ“餌付け”って言わねぇか?」
「俺んとこのガキもあんな顔して飯食ってんぞ……?」

 そんな会話も、テーブルの上に並べられた数々の料理に目を奪われているリアーヌの耳には届かないのだっだ。

(たこ焼きにお好み焼きに、だし巻き卵に焼きとうもろこしーーそしてここにあら汁が加わる……! ……もしかしてご飯もあったりする⁉︎ まぁ、今は大丈夫なんだけどー。 でもお味噌汁と言ったらご飯だよね⁉︎ ーーあとでテオさんに聞いてみよーっと!)

 しかし米は食べ方が難しいとの理由からこの国にはあまり出回っておらず、米を手に入れることは出来なかった。

(……無念。 しかも、いつお米と出会ってもいいように、味噌だけでも買って帰ろうとしたのに……アンナさんに「臭いがよろしくありません」って却下されたし……お味噌は臭くないもん。 あれは発酵の匂いだもん……)



「噂には聞いておりましたが、男爵のお見立ては流石でございますねぇ……」
「本当に! お嬢様にぴったりですわ!」

 セハの港の宿屋の中、ゼクスから送られた洋服を纏ったリアーヌの準備を手伝いながら、感嘆の声を漏らすのは、今回の旅から正式にリアーヌ付きとなったメイドのカチヤと、コリアンナだった。

 リアーヌよりも2歳年上という、まだまだ歳若い者たちだが、ヴァルムやオリバーのお眼鏡に適った、将来有望な者たちだ。
 オリバーの遠い親戚筋に当たる少女たちであり、幼い頃より王族の血筋に支える教育を施されているエリートでもあった。

(ーーこの二人ってオリバーさんの親戚なのに、これまで一回も会ったことないって言ってたけど、そこまで関係性の薄い人は親戚と看做していいのだろうか……? ーーいや、血がつながってるなら親戚か……ーーま、ヴァルムさんが雇うって決めたんだから、その辺りは気にすることないかー!)
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