成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「でも、この方法じゃ卒業資格も貰えないし、繋がりが出来るのもラッフィナートの人間だけだ。 ……それでもラッフィナート商会の庇護下に入るわけだから、契約を盾に全力で守るけどね?」
「ーー本人に意見を聞いたわけでは無いので確かなことではありませんが、そちらの方が家族は安心して王都に送り出せるかと……ーーしかし本当によろしいので……?」

 そう言いながらディーターは探るような視線をゼクスに向けた。
 この話を進めてゼクスになんのメリットがあるのか分からなかったためだ。

「火魔法の使い手をこの村のラッフィナート側に付けられるのは、俺にとって大きな収穫ですよ。 ーー本当に雇いたいのは貴方方とやり合ってくれる代官なんですけどー」

 そう言って大袈裟に肩を落とすゼクスに、ディーターは苦笑いで答える。

「それに……ーーまだ何にも稼働していないけど特例だねー」
「特例、ですか?」
「そ。 魔法……しかも攻撃性の高いギフトは本当に囲われやすいんだよ……ーー本人と話もしないで決めちゃうは申し訳ないけど……正直なところ、うちの領民が学院に通ってすぐにそんなトラブルが起こるのは避けたいんだ……?」
「ーーそれは……確かに」
「なんとかこの方法で受け入れてもらえるよう話してみてほしい」
「かしこまりました」

 頭を下げるディーターを横目に、ゼクスは伸びをしながら椅子の背もたれに体重をかけ、その身体を預けた。

「んー。 他に希望者らしい希望者が居ないようなら、やっぱり来年は見合わせて再来年の入学が良さそうだなぁー」
「これから出た場合は……?」
「入学年齢を超えても入学が可能なら、固まって入学したほうが安心なんじゃない?」
「……それは、そうですねーー可能だと思われますか?」

 ディーターは少し心配そうにたずねる。
 年齢さえクリア出来るのならば入学希望を出しそうな者たちがいるのを把握していたからだった。

「まだちゃんと確認を取ったわけじゃないからハッキリは答えられないけど……ーーリアーヌの実家の力とうちの実家の力があれば、陛下の心を動かせる……かも?」
「……特例と言うことでしょうか?」
「この場合は恩情かな? 事情を説明すれば……って希望はある」

 通えなかった理由が理由だ。
 その辺りを仄めかし、なおかつボスハウト家の援護があるならば、陛下の心は動かせるのでは無いか……? とゼクスは計算していた。
 
「恩情……」

 思うところがあるのか、ゼクスの説明に苦虫を噛み潰したような顔になるディーター。
 ゼクスはかける言葉が見当たらず、わざと戯けたような口調で話題を変えた。
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