成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「スパを披露した時『これ温泉だわ⁉︎』って言われた時は「あ、これ……あんまり食いついてもらえないヤツだ」って思いました……」
「……俺もー。 あの時は「あ、儲け話消えたな」って覚悟した」

 宿に向かう馬車の中、ぐったりしながらもリアーヌたちはクスクスと話し合う。

 リアーヌのスパの実演に、大いに食いつき、絶賛してくれた夫人だったのだが、リアーヌが温泉だということを瞬時に理解したように、夫人も匂いを嗅いだ瞬間「これ……温泉?」と声をあげていたのだ。
 幸いなことにタカツカサの領内やこの港の付近に、気軽に行けるような温泉は無いことでリアーヌたちは胸を撫で下ろしていた。
 そして、夫人の実家の領内にはあったということで、夫妻共に温泉に浸かることへの拒否感が無かったのも大きかった。
 ーーもっとも夫妻は、温泉とは身体を温め血行を良くし、体の不調や少しの病気を治すものーーと認識していて、美容にも適していたとは知らなかったのだが。

「ーーこんなこと夫人には言えませんけど、ご実家が少し距離があるところで良かったですね……?」
「本当にね? これで隣の領とかだったら、タカツカサ家との業務提携にはならなかっただろうし……」

 ゼクスはこの港を治めている領主のタカツカサ家との繋がりを望んでいた。
 今でもラッフィナート商会とタカツカサ家は良好な関係のビジネスパートナーだったのだが、ゼクス自身はラッフィナート男爵家とタカツカサ家の繋がりを望んでいたのだ。
 ゼクスとしては二年三年と時間をかけるつもりだったのだが、今回、スパのおかげで、すんなりと業務提携を結ぶことが出来た。
 大満足どころか、完全勝利と言っても過言ではないほどの成果だった。

(まだ報告もしてないけど、爺さんどころか親父にまで褒められそうな規模の繋がりだーー他国とはいえ、この国の貿易の要を担うタカツカサ家との業務提携だ。 多少の損を被ったって得になることの方が多いーーもっとも、羽振りの良い家だから、金払いを渋られることは無いだろうけどー。 ……それにこの話がこの港で出回れば出回るほどラッフィナートの名前は売れていくーーこれもリアーヌのお手柄なのかな? ……うなぎ食い続けられた時はどうしようかと思ったけど……ーーま、結果オーライだ。 豪運持ちの子だからな……子爵を参考にするなら周りがあれこれ支持しないほうが良さそうだし……ーー俺の胃、相当鍛えられそう……)

 ゼクスはそんなことを考えながら、なんだか痛みを覚え始めたように感じる胃のあたりをさすり続けていたーー
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