成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 そんな二人の会話を聞いて、レジアンナは首を傾げながら声をかけた。

「ーーじゃあ……婚約は解消しないんですの……? だってーー次を探しているんでしょう?」

 困惑した様子のレジアンナが首を傾げながらたずねる。
 視線をフィリップやビアンカに向けて詳しい説明を求めているようだった。

「ーーそういう聞いてはいるのだけれどね……?」

 フィリップはレジアンナを傷つけないよう、極力言葉を選びながら話し始める。
 情報の精査に力を入れてほしいことは間違いなかったが、愛しい人の勘違いや間違いを指摘して悲しませたいわけでは無かった。
 
 そんな想いから、フィリップは同意を求めるようにパトリックたちに視線を流す。
 するとその意図を汲んだ友人たちは、口々に「そうですね」「私も聞きました」と同意し始める。
 ーーしかし、幼い頃からフィリップやパトリックを知っているレジアンナだったので、そのやり取りを見てなにかを感じ取ったのか、表情を曇らせキュッとその唇を引き結んだ。

「ーー私も聞きましたよ?」
「……その話ならばわたくしも」

 微妙な空気を察知したレオンたちも、フォローを入れるようにレジアンナに声をかける。

 ーー実際、この手のウワサは婚約凍結が発表されてから今日まで、さまざまな者たちがそこかしこで面白おかしく話題に上げていた。
 その為、レオンたちの耳にも少なからず入っていて、ボスハウト家やラッフィナート家の出方や真意を探らせている最中だったのだが……レジアンナは『周囲が言うのだから事実なのだ!』と勘違いしてしまったのだろう。

 ーーけれど、素直で周りの話を鵜呑みにしやすいレジアンナであっても、決して愚かでは無い。
 自分に気をつかう周囲の態度やその反応から、真実に気がついたレジアンナは、小さくため息を付き困ったように笑いながらポソリと呟いた。

わたくしの早とちりでしたのね……」

 悲しそうな声で呟くレジアンナにフィリップは、慌てたように声をかけた。

「ーー火のないところに煙は立たないと言うだろう? だからあながち間違ってないかもしれない……真実などラッフィナートの心にしか無いんだ。 それに凍結したなら解消を心配するのは友人として当然なことだと思うよ?」

 レジアンナを悲しませないよう、次々と言葉をかけるフィリップ。
 ーーその言葉が自分の婚約者以外の耳にも届き、向かいに座る当事者の不安を、大いに煽っていることにはまだ気がついていないようだったーー

 フィリップの言葉に少しだが元気を取り戻し始めたレジアンナとは対照的に、リアーヌの顔色は少しづつ悪くなっていた。
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