成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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(ーー真実はゼクスの心にしか無い……まぁ、それはそう。 他の誰にも分からないし……え、だって凍結して、ラッフィナートが後釜探し始めたってウワサ流れてーーそれで、火のないところにって……ーーそんなの決定なんだけど? え、ゼクスは……ラッフィナートは、婚約を解消したがってる……?)

「でも凍結で……」

 動揺したリアーヌはそう小さく呟くと、目を伏せたまま不安そうにうろうろと視線を彷徨さまよわせた。

(……でも私たちの婚約って正真正銘の政略結婚だしな……ーー結構いい感じになれてた気がしてるけど……! プロポーズだってされたし! ーー一応全部、本当だけど、あのウワサで全部イヤになっちゃったとか……? ゼクス、お店や仕事大好きだし……全然考えられるーーなんか最後、怒られちゃったみたいだし……)

 レジアンナたちの向かいで、どんよりとした空気を隠そうともしないリアーヌにようやく気がついたレジアンナ。
 自分のせいで! と、慌てて明るい声をかけた。

「う、ウワサはウワサよ! 本当じゃ無いわ⁉︎ それにーー万が一そんなことになったら、私だってフィリップ様だって黙ってないんだから⁉︎」
「……私も、なのかな?」

 必死にリアーヌを元気付けようとレジアンナが声をかけ、その話の内容にフィリップが顔をひきつらせる。

 ーーゼクスとはどうあがいてもいい関係など築けないと感じているフィリップ。
 なので、お遊びで済ませられる口喧嘩程度の嫌がらせならば、いつだって望むところではあった。
 しかしーーゼクスだけならばともかく、ラッフィナートと真正面からぶつかる気などは、今のところは全くなかったのだ。
 しかし、そんなフィリップにレジアンナはあっけらかんと言い放つ。

「だってパラディール家はすでにラッフィナート商会とやり合ってますでしょう? だったら火種が少しくらい増えたって平気よ!」
「……の火種ならね……?」
「ーーだから、その……安心してほしいの! ……確認もしないで勝手を言ってごめんなさい」

 シュン……と眉を下げたレジアンナに今度はリアーヌが慌てて声をかける。

「そんなに気にしないで⁉︎ その……きっと大丈夫だと思うんだ……? きっと問題ないはず……」

 リアーヌは自分に言い聞かせるように言葉を紡いで行く。

 ーーいまや、リアーヌを不安にさせているのはフィリップでもレジアンナでもなく、自分自身のネガティブな考えに他ならなかった。
 婚約が凍結した以上、大っぴらにゼクスとやり取りをするわけにはいかず、それによりゼクスが今どんな考えでいるのか分からなかった。
 それがリアーヌの考えを悪い方へ悪い方へと導く原因になっていたのだーー
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