元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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14話:王女との対面

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 騎士団長の手配で馬車に乗る。城に向かっていた。

 「それで一体何用です?」
 「実は我が国の王女様を救って欲しいのです!」

 王女を救うとはこれはまた大事だな。

 「ご期待に添えるかわかりませんが、どういう症状で?」
 「国王陛下には息子が一人と娘が二人いるのですが、下の王女様は炎の加護を強く受け継いでいるのです。それで能力が抑えられず、一度大火傷をしました」
 「火傷痕なんかが顔に残ってて人前には顔が出せないから治してくれって話かい?」
 「おお、お察しがいい」
 「どうせ断っても面倒なだけだし、女の子の未来の為に引き受けましょう」

 断れば頭とか凄い下げられて、大金出されての話なんだろうけど、それで大金せしめるのは個人的にやりたくはない。きっと王女なんて可愛いだろうし、見れて話すだけでも満足だ。

 「騎士団長!」
 「至急国王に。緊急案件だ」
 「了解しました」

 馬車から降りると、王のいる場所まで案内された。てっきり玉座の間でも行くのかと思いきや、国王の部屋に直接行かされた。それだけ緊急という事だろう。

 「失礼します」
 「おおっ、シドか!それで緊急案件と聞いたぞい。それとそこにいるのは?」

 王様は見た感じは普通の人で、特に高圧的な感じもなく温和な印象だ。

 「ハハッ、この者はジンという方でして、セーブル王女の火傷を治せる者です!」
 「な、なんだと!シドよ、それに相違はないか?」
 「間違いありません。露店街で片眼を失明し傷跡のある女の子の目を、見た事のない魔法で見えるようにしただけでなく、傷跡も完全になくしてました」

 それを聞いた国王がこちらに物凄い形相で来て、無理やり握手を交わす。

 「私はグライド・ミン・エリンギ。知ってると思うがこの国の王だ」

 すみません。知りませんでした。

 「俺はジンソウダです。それで早速王女様の所に」

 すると国王と騎士団長は困ったような顔でこちらを見る。何か問題があるようだ。

 「いや……綺麗で強かった自慢の娘は、今や火傷の後で醜くなってしまってな。何人もの治癒魔導士が来ては失敗して匙を投げているせいか、ウンザリしていてな……近づくと殺されるかもしれん……」
 「なるほど……」

 まぁ無理もないか。なら力づくで治せばいいだけだ。

 「俺は大丈夫なんで案内してください」

 国王に連れられ王女の部屋の前に行く。

 「セーブル入るぞ」
 
 王様がドアを叩くと不機嫌そうな声が聞こえ一緒に入る。さてどうなるか。

 「誰そいつ……」

 ベッドの上に横たわる痛々しい火傷後を持つ紅髪の女の子。あれがセーブル王女か。

 「喜べ。お前の火傷を治す事の出来る者を連れて来たぞ!」
 
 すると不機嫌そうな顔で怒鳴り散らす。

 「ふざけないで!これで何人目?詐欺師ばっかし連れてきて、私のこの顔を見てはみな怯えて帰る……もううんざりなのよ!」

 初っ端からこれだ……近づく者は全員殺すって感じだな。

 「王様、あとは俺に任せて部屋から出てください」
 「ああ、わかった」

 王様を部屋から退出させ二人きりなる。

 「さてと……俺はジンよろしくね」
 「何よあんた……あんたもこの顔見て笑いにきたんでしょ?」
 「いや、美しい顔立ちだなと」

 火傷痕がなきゃ普通に美しいのは一目瞭然だ。さてこの娘の火傷痕を消して美しい顔を拝むとしますかな。

 「な、何それ?お世辞のつもりかしら?言っておくけど近づくと燃やすわよ!」

 やれやれ……少し強硬策に出るか……

 「サウンドアウト……」
 
 まずは音が漏れないようにと……

 「インフィニティシールド!」

 これで侵入を不可にする。

 「さて、君の火傷を治させてもらうよ」
 「こ、来ないでフレイム……」
 「ハマジク!」

 セーブルの周囲に発生させ魔法を打ち消す。こんな部屋で炎の魔法とか危ないわ。

 「あれ魔法が……」
 「大丈夫だから俺を信じて!」

 ゆっくりと近づきベッドに辿り着く。顔だけでなく全身に火傷の後が酷い。だがこの子も元は美しい顔をしているのは見れば一目瞭然だ。

 「何をするつもり……」
 「いいから大人しくしてて」

 さてハマジクを解除して治癒の魔法だ。

 「リザレクション!」

 セーブルの体全体に発動し火傷痕を消していく。すると予想通り美しい顔が見えてきた。

 こんなのちょろいちょろい。

 「はい鏡を見て」

 セーブルは俺が出した鏡を見せると驚き過ぎているのか目を点にしている。

 「えっ……嘘……」

 鏡をマジマジと見たまま自分の顔を触って感触を確かめている。きっと泣いて喜んでくれるかな。

 「どうだい?」
 「凄い……本当に火傷跡がない……」
 「でも君の場合まだこれで終わりじゃないからね」
 「えっ?」

 体にここまで火傷跡ができるぐらい制御が効かないのはおかしな話だ。きっと何かがあるはずだ。

 「君は炎の加護を受けた中でも特に最高のスペックを持っているね」

 それこそ勇者であり優遇され、炎の加護を持っていた桜なんざ比にならないぐらいだ。この世界で見た中では一番と言ってもいい。それぐらいに彼女は炎の精霊に愛されている。

 「そうなの?確かに私もそういう自覚は多少はあったけど……」
 「だからこそ炎のクリスタルの加護を受けないとその火は操れない。確かエリンギには炎のクリスタルがあったよね?」
 「ええ……でもどうやって……」
 「炎のクリスタルに案内して……俺がそばにいる間はそれを外部制御してあげるから外は歩けるし」

 でも王族ならば一度ぐらい炎のクリスタルの元に行くぐらいはしているはずなんだけどな。

 「う、うん……でも炎のクリスタル危ないからって父上が許可してくれるかどうか……」
 「大丈夫。俺がついて行くさ」

 魔法を解き、部屋から出ると国王と騎士団長が待っていた。

 「終わりましたよ」
 「セーブル……おおう本当に火傷跡がない」
 「流石はジン殿だ。連れてきて良かった」

 二人は大喜びだ。セーブルも二人に見てもらい、跡がなくなっているのを改めて認識できたようで笑みと涙がこぼれている。

 「それで王様。セーブル王女をクリスタルの元に連れて行く許可を頂きたい」
 「お父様。そうしないとまた制御が効かなくなって火傷が再発するようですの」
 「なんと!それなら早速許可を出す。すぐにでも向かいなさい!」

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