元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

文字の大きさ
20 / 47

20話:怪しげなバー

しおりを挟む
  王都に帰還した俺達は早速行動に移った

 「あいつらに聞いた話によれば、俺達を狙う奴らが他にもいるようだからね。みんな警戒してね」
 「ええ」
 「しかしどうやって解決するつもりですか?」
 
 最悪パワープレイでどうとでもなるが、それではスマートさに欠けるからな。俺が力づくでというよりは、失脚してくれる方がありがたい。要は暗殺を企て、セーブルを殺そうとしたというのが周りに露呈してくれればいいわけだ。

 「そうだね。あいつらに依頼した奴を見つけるとこからだね」

 あいつらが言うには、ギルドのある通りの裏路地にある、赤い看板の酒場でこの依頼を受けたと言っていたな。そこへ行ってみるのもありだな。

 「何か手掛かりはあるの?」
 「うん、だから今日の夜はリオと俺でとある場所に潜入する」

 大人数での行動は目立つからな。三人は宿で待機していてもらおう。

 「私達は?」
 「シーラはミーナと一緒にセーブルの護衛かな。宿の部屋に結界を貼るから三人で待機」
 「わかった……くれぐれも私の為に無茶はしないで」
 「オーケー」

 
 ◇


 夜になり、その酒場へと向かった。三人の部屋には結界貼ったし、お守りも渡してあるから一晩は問題ないはずだ。

 「それで何で私だけ連れて来たの?」

 リオは不思議そうな顔でこちらを見る。

 「多人数で行くわけにはいかないからね。あの中で一番大人っぽくて落ち着いているリオが適任だと思ってね」
 「なるほどね……」

 少し残念そうな顔を見せる。何か悪い事でもしたかな。

 「まぁそんな顔しないでよ。飲み物や食べ物は俺の奢りだし」
 「あるがとう。そういう事じゃないんだけど、まぁ折角ジンと二人だし楽しませてもらうわ」

 二人で店の中に入り、空いている席にに適当に座る。

 「確かにこれは結構怪し気ね……」
 「ここに来るまでも結構怖い感じだったからね」

 王都と言えど、夜の裏路地は普通に治安が悪いな。リオと二人で歩いていた時も何人もの視線を感じた。逆に威圧してやったがな。

 「そうね。ジンがいなきゃここには来れないわね」
 「ハハッ、とりあえず何か頼もうか」
 「ええ」

 適当にお酒とつまめる物を頼む。さて敵が尻尾を掴ませてくれるかどうかだな。今日は来ないでそのまま無駄足になる場合も十分あり得る話だからな。

 「そういえばジンとこうして二人で話すのって初めてね」
 「そういえばそうだね」

 シーラやミーナとも二人っきりなんてのはあんまりなかったし、後からの加入なら尚更だ。

 「パーティの方の戦闘での連携とかは上手くいきそうかい?」
 「そうね。この間のメガザウラー戦の感じでは上手く戦えてたし、今は問題ないわ。というかジンのあの的確な指示があれば上手くいかないなんて事はないわ」
 「それは良かったよ」
 「力を隠していたとはいえ、ジンが勇者パーティから外されたなんてのが信じられないわ」

 本当それな。アドバイスとかも的確にやっていたつもりだし、戦闘面でもなるべく怪我そないようにしていたんだけどな。何で追放されたのだろうか……

 「俺もいまだに疑問だよ……」
 「でもそのお陰でこうしてあなたと旅出来たわけだしこれは神様に感謝ね」

 リオは嬉しそうな表情を見せる。

 「俺もリオが仲間になってくれて嬉しいよ。これからもよろしくね」
 「ええ、頼りにしてるわ。ニーナはシーラだけじゃなく、今度は私にも色々レクチャーそてね!」
 「ああ、勿論さ」

 折角だしクリスタルの欠片の話とかも聞いておくか。俺の目標としては、四人にそれぞれクリスタルの加護を得てもらいたい。セーブルはもう貰っているからあと三人。今の実力だと次はリオだろう。

 「ねぇリオ。首のクリスタルの話とかって聞いても大丈夫かい?」
 「ええ、問題ないわ」
 「それじゃあ……リオは風のクリスタルと対面をした事は?」
 「ないわ。これは先祖代々から伝わる物なんだ~」

 となると先祖に風のクリスタルの加護を受けた物がいたということか。だが欠片の力で危険を察知する事が出来たという事は、リオ自身も適性があるという事だ。

 「やっぱりリオの家は貴族なの?」
 「貴族ってわけでもないけどそういう感じの家かな。今度街に寄ったら実家を案内するわ」
 「うん、楽しみにしてるね」
 「了解、ところでどうなの?」

 リオが一瞬辺りを見渡す。怪しい奴がいないかどうかという事だろう。まぁここにいる客自体かなり怪しいがな。

 「まだ動きはないね……」

 まだ入ってそんなに時間は経っていない。魔法で店全体の声が聞こえるようにして聞いているが、特にそれ関連の話は聞こえてこない。
 
 「まぁ毎回ここに来るって訳じゃないだろうからね。というかわかるの?」
 「こうやってリオと話ながら店の声も聴いているからね~」
 「あんた何者よ……」

 リオが呆れかえったような表情で笑う。

 「ハハッ、気にしないで」
 「はいはい、別にジンはジンだから別に気にしないけどさ……いずれは教えてね?」
 「えっ……」

 急に真剣な眼差しに変わるリオ。いきなりなのでついドキッとしてしまった。

 「あなたの事もっと知りたいから……三人も同じ気持ちだとは思うけどね……」

 そういえば自分の事何も話してなかったな。流石にこの世界を管理する存在なんて今は言えないからな。でもいつか四人にはこの事を話すかもしれない。いや話さなくてはいけないな。それでも俺を受け入れてくれるなら……その瞬間こそ俺の欲しかった物が得られる。

 「そうだね……そのうちちゃんと話すよ。俺の事全部ね」
 「フフッ、楽しみにしてるわね~それまでジンには私の事もっと知ってもらわないと!」

 何故か凄い意気込んでるな。まぁ俺自身も四人の事をまだ知らないからおあいこ状態だよな。でもリオは比較的昔話とかしてくる方か。そういう話がないのはシーラとミーナだったな。

 「是非是非、俺ももっとリオの事知りたい」

 するとリオは少し顔を赤くしてこくりと頷く。こういうリオは珍しいな。いつもあの中だと一番お姉さんでいつも余裕な感じだからな。

 「リオはクリスタルの加護の話は知っているよね?」
 「ええ」

 俺は今ふと自己中心的な考えが頭によぎってしまった。追放されたその時から密かに考えていたそれ。まだ早いしそれを強要するような真似はしたくはないので頭からかき消す。

 「それを受ける気はあるかい?」
 「ええもちろん。でも小さい頃風のクリスタルの加護を受けようとして駄目だったわ」
 「今なら問題ないはずさ。今度加護を受け取りにいこう」

 それぞれ違う属性を持つ四人……四人が俺から教えを受け、クリスタルの加護を貰えばあんな勇者達なんざ余裕で超える。それで魔王討伐なんて考えるのは流石に良くないだろう。

 「可能なら是非受け取りに行きたいわ!」
 「オーケー、それまでリオには色々教えるから」
 「わかったわ……じゃあ代わりに私もあなたに教えてあげようかしら?」

 また顔を真っ赤にする。酒でも入っているのか、今日のリオはいつもと違う。

 「何をだい?」
 「私の身体とか……知りたくない?」
 「えっ……」

 いやそれは凄く興味深い話ではあるけど……でも三人の事もあるから……

 「興味ない?」

 少し残念そうな顔を見せる。

 「い、いやとても興味深いし知りたいよ」
 「本当!さては他の三人の事浮かんだでしょ?」
 「君はエスパーかな」
 「フフッ、私同様三人の事も大事にしてるのが見てればわかるから」

 そりゃそうか。リオは四人の中だと一番洞察力が高く、しっかり見ているからな。

 「ハハッ、だからリオだけってわけにはいかなくてさ。でもリオも同じぐらい大事だから」
 「フフッ、それはわかってるわ。でもその順番は同時って訳にはいかないし、そこは私が一番でもいいんじゃなくて?」

 今日のリオは凄く可愛い。いやいつも可愛いんだけど今日は増して女っぽい。

 「ハハッ、そうだね……」

 いかん、リオのペースに呑まれてしまう。このままでは……

 うん?

 「リオ一旦ストップ……」
 「えっ?」

 どうやら獲物が行動を始めたようだ。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...