元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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21話:尋問

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 魔法によってこのバーの空間内を盗聴しているが、この感じからして席はここから見えない奥の方だろうか。

 「むぅ……」

 リオは何やら不機嫌そうな顔をこちらに見せる。ここに来たのはこっちが本来の目的だし、そんな顔しても困るんだが……

 「いいとこでごめんね。この話はまた今度にしようか」
 「いいとこだったのに……」

 あのままいってたら返答に困ったし本当ナイスタイミングだよ。

 「それで報酬の方は?」
 「前金で金貨十枚、成功したら五百枚だ」

 ほう……結構な額がついてるね~五百枚なんて言ったら、普通に暮らせば二十五年ぐらいは持つな。でも俺の首を狙うには少なすぎだとは思うがな。

 「ターゲットはどこに?」
 「この街のとある宿にいる。他にも頼んでいるから、早い者勝ちだ」
 「なるほど……早速狙う必要があるようだ……」

 まさかメインの一人はここにいるとは夢にも思うまい。出てくるときに認識阻害の魔法を発動してここに来たから俺達が外出した事自体わかっていないだろう。

 「ねぇジンどうなの?」
 「どうやら泊ってる宿はしっかりバレているようだね」
 「あの三人は大丈夫かしら?」
 「部屋から一歩も出ないようにって言ってあるからそれは大丈夫なはずだ」

 あの部屋にいる限りは結界に守られているし、燃やされたりしなければ一夜は確実に耐えてくれるはずだ。

 「だといいけどね……それでやはり暗殺の依頼を?」
 「ああ……金貨五百枚だってさ」
 「ご、五百枚って……」

 それを聞いたリオが目を点にしている。大貴族からすればはした金なのかもしれないが、それでもかなりの額だ。

 「ジンほど高いお金で狙われたのは他にいないかもね~」
 「かもね、高位ランクの魔物でも金貨五百枚出るクエストはそうはないからね」
 「そうね、でもジン相手には安すぎね~」

 だな、それは間違いない。

 「おっ……立ち上がったな」

 奥の方の気配が動いている。恐らく依頼者だろう。

 「どうするの?」

 どうするってもう決まっているさ。

 「モアイの光!」

 バー全体にいる全ての生命体を石化させる。

 「さていくよ」

 奥の方の席に向かい、石化された状態のフードを被った男を見つける。立ち上がったままだしこいつで間違いない。

 「よいしょっと……」

 収納魔法を使い石像になった男を回収する。本来生身の生物は回収できないが、石像になった場合は回収可能になる。このまま入れておけば百年以上収納しておく事も可能である。

 「それ回収できるんだ」
 「まぁ今は石像だからね~」

 店内の石化を解き、店を後にした。


 ◇


 そこから少し離れた裏路地に向かい石像を出して、石化を解く。

 「うん?さっきまで店に……グフォッ!」

 そのまま男の腹を殴るとその場で崩れ落ちる。

 「き、貴様は……」
 「ワイルドローズ!」

 これは棘のついたバラのつるで体を締め付け、拘束する第七位階魔法だ。声を上げても大丈夫なようにサウンドアウトも発動しておく。
 
 「さて顔を拝もうか」

 拘束した男のフードを取ると顔があらわになる。わりかし若い感じだ。

 「俺に対して金貨五百枚は安すぎじゃないか?」
 「聞いていたのか……」

 男は驚愕したような表情を見せる。

 「それで誰の命令で俺達を狙ってるんだ?」
 「それは言えな……グァッ……」

 つるの締め付けを強くする。すると棘が体の皮膚に突き刺さりより痛みを増す。

 「誰かな?」
 「き、貴様……」

 リオも見てるしここはあえて営業スマイルだ。

 「それは言えな……グァァァァァ!」
 「いくら叫んでも声は聞こえないから大丈夫だ」
 
 男は激痛に悶えながらこちらを苦悶の表情で見る。

 「よく飼いならされた飼い犬だね。それで誰だい?」
 「そ、それは……」
 「あ、ちなみに君の頭を無理やり覗けばわかるんだけど、それだと君が廃人になるんだ。だからこうして拷問をして君の口から聞き出そうとしてるわけだけど話す気になった?」

 実際その方法が一番手っ取り早いが今回はそれが目的ではない。何しろ犯人は分かりきっている。要はこいつの口からそれを言わす事が重要なのだ。

 「どうする?これは俺なりの優しさでもあるんだ」
 「やさ……しさだと?」
 「そう、君は妻子はいるかい?」
 「ああ……」

 男は力なき声で言う。

 「もし君が廃人になれば君の妻や子供が苦労する事になるだろう。俺からすればそっちが可哀そうだから、こうして拷問に切り替えているんだ」

 少しずつ精神を折っていけばいい。この男には妻子がいるというのは運がいいな。

 「俺は……」
 「でもそうなら君の妻子を目の前で殺ろうか。聞き分けのないのには現実を見せてやるのがいいからね」
 「ま、待ってくれ!妻と息子だけは……」

 男は懇願するような目でこちらを見る。これはかかったな。

 「なら話してくれないか?俺も関係ない他人を巻き込むのはしたくない。でも君が一向に話さないならそういう手段もあるって話だけだから。腹いせに君の妻と子を殺して悲しむ君の頭を覗き君を廃人にするような事ももしかしたら癇癪起こしてやるかもしれないね」


 怒るのではなく冷静に淡々と絶望を与えていく。無理に本人を痛めつけるよりこの方がより落ちやすい。力づくで肉体を傷つけるよりも精神的に落とす。さもいつでも妻子を殺せるかのように発言して揺さぶっているが俺はこいつの妻子など見た事はない。だが俺の見せる魔法で俺の得体の知れなさを見せつけているから、その気になれば平気な顔してやりそうだと相手に認識させておく必要がある。

 「そんな……」
 「でもちゃんと話してくれれば俺はあなたの妻子に手を出したりしない。これは神に誓うし、まだ妻子を助ける手段は残されている」
 「しかし……」
 「あと三分で決めてくれないかい?悪いけどこっちも急いでいるんだ」
 
 早く決断させるよう揺さぶる。時間を与えて考える隙を与えないようにするのも鉄則だ。

 「俺は……グッ……」

 さらにつるをきつく縛りつける。

 「だんだんキツくしていくからね」
 
 さらに痛みを加え、よりプレッシャーを与える。そしてこれが止めだ。

 「それともしあなたが誰かに脅されているようなら俺はあなたも助けたいと思っている」
 「えっ……」
 「脅されてやっているようなら俺同様被害者だ。なら同じ被害者としてそれを助けるべきだと思うからね」

 すると男の表情に変化がみられる。

 「もし全てを話してくれるならあなたの事も全力で助ける!あなたが被害者ならこうしてあなたを縛り付けている事も詫びないといけないからね」
 「し、信じていいのか?

 この男が拷問途中に見せたあの表情は、話したくても話せないような時に見せるジレンマを感じた。もしやと思ったが間違いないようだ。

 「ああ、俺は強いしこの国の国王とも親交がある。あなたを助ける事もやって見せるさ」

 ここで希望を見せる営業スマイル。先輩方に教わったこの尋問術だが凄い。こういう時はこうするみたいなマニュアルがあったがそれ通りやるだけでこれだ。

 「実は俺ネイツ公爵に妻と息子を人質に取られていて……」
 「そうか……辛かっただろうによく話してくれたね。それに相違はないかい?」
 「ああ……あいつらセーブル王女の王位継承をさせまいとあんた達を狙うように言えって言ったんだ!」

 よしこの声は記録させて貰った。これだけでも勝てそうだけどまだだな。俺や俺の仲間を狙ったんだしそれ相応の報いを受けて貰わないとだ。恩も仇も等しく忘れず、屈辱は倍返し……それが俺の流儀だ。
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