元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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28話:スッポン遺跡

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 次の日になり早速遺跡の攻略だ。みんな張り切っておりシーラなんか目をギラギラ光らせて燃えている。

 「それじゃあ行こうか」
 「ええ、気合入れていきましょう!」
 「ハハッ、でもシーラもだけど昨日決めた取り決めは絶対守ってね」

 一応自分より先に行って勝手な行動をしないようにという事を言っておいた。毒矢が急に飛んできたりとか、地面が急になくなったり、鉄球や剣山が落ちてきたりなんかも有り得なくはない話だからな。

 「当然!ジン隊長について行くわ!」
 「よろしくです隊長さん!」
 「オッケー。リオとセーブルもよろしくね」
 「ええ」
 「後ろは私とリオが守るわ」

 早速奥に向かった。予めセーブルが行ったことある部屋を一通り確認して回る。

 「ここら辺は罠はない感じだね」
 「ええ、まぁ捜索初期段階においては罠で何人かが犠牲になったらしいけど、一度調査した部屋の罠はもう解除してあるはずよ」

 調査が終了した部屋はエリンギ王国の刻印が刻まれた石を設置しているのですぐにわかる。壁に掘られている文字は当然訳が分からずお手上げな感じだ。

 「この先は行き止まりなはずです」

 確かにその部屋に行くと先はなく、行き止まりのように見える。だがマッピングフィールドで把握した結果ここが別の部屋に繋がっているのは間違いない。

 「この部屋が別の部屋に繋がっているらしい。もうこの部屋の罠は解除してあるみたいだし、みんなで調べよう」

 各自バラバラに散って周囲十数メートルの正方形の部屋を調査する。

 「しかしこりゃなんて書いてあるんだか……」

 古代人の堀った文字なんか当然読めるわけもなく、奥の小さな祭壇に掘られている絵を覗く。見ると何人かの人が何かを崇めているような絵だ。

 「これはクリスタル?」

 ザ・マッピングで確認したところ、この祭壇の先なはずだが……

 「どうしましたジンさん?」
 「いや、この先が続いているはずだから、この祭壇に何か仕掛けはあるんじゃないかって思ってさ」
 「成程……確かにこの桶が気になりますよね?」

 何かを入れろって事かな?

 「セーブルちょっといいかい?」
 「何ジン?」
 「この桶の中に炎を灯してみてくれない?」

  たぶんこの桶に魔力でも注ぎ込むのかもしれない。それでもってクリスタルの絵だし、加護を持つセーブルなら……

 「いくわよ!」

 セーブルが魔法を発動し炎を灯すが特に変化は見られない。

 「これは違うね……」
 「そうね……」
 
 あのクリスタルの絵は、四種類あるクリスタルの内のどれかだと仮定でき、この文明はどクリスタルの加護を受けていたと見ていいだろう。そしてセーブルが炎を灯しても駄目だったという事は炎以外である可能性も高い。

 「違うか……次は誰にやってもらおうか……」
 
 地下に広がる遺跡だし、土なんて考えは安直だろうか……だがどの道試すし何でもいい。

 「シーラ次は君がこの桶に土魔法で一杯にして貰えないかい?」
 「任せて!」

 シーラは魔法で土を具現化し、桶を一杯にすると大きな音が鳴る。

 「な、何これ?」

 グゴゴゴッ……

 大きな音と共に祭壇が横にズレ、下へと続く道が現れた。どうやら安直な考えでよかったらしい。

 「す、凄い……」
 「本当に隠し扉があったのね……

 さてここからが本格的な探検スタートだな。この先は罠もまだ未撤去だろうし気を引き締めていかないとだ。

 「俺が先に行くから付いてきてね」
 「わかったわ!」

 下に降り、階段を進んでいくとまた部屋のような空間が見えて来る。

 「足元や上なんかも気をつけてね」
 「了解」

 降りてまた別の空間が見えて来る。さっきとは違い壁が白く光っている。どうやらこの壁がライト代わりになっているようだ。

 「これは凄いですね!」
 「光る壁なんて見た事ないわ……」
 「スッポン王国の高度な文明の力かしら……」

 それもあるが恐らくこいつらは土のクリスタルの加護を受けていた。炎のクリスタルを守護する今のエリンギなんか比べ物にならない以上にだ。

 「恐らく土のクリスタルの加護かな」
 「どういう事?」
 「この王国は土のクリスタルの恩恵をフルに受けていたんだ。この光る岩も土属性の魔法の応用だと思うよ」

 このクラスになるとかなり高度で今のこの世界の人々では到底使う事出来なレベルだ。

 「まさに古代文明か……ジンはこれ作れる?」
 「似たような物は作れるかもだけど、全く同じ物となると見ただけでは無理かな。解析すれば作れるかもだけどすぐにって訳にはいかないね」
 「ジンさんにそこまで言わせる代物だとは……」

 過去にこの世界にここまで高度な物を作る存在がいるとは……スッポン王国か。

 「でもスッポン王国って確かかなり前に滅びたみたいだしこんな高度文明でも滅ぶ時がくるのね~」

 リオが言う。この王国が滅びた理由を予測するとすれば、単純に風水炎で同じような加護を受けた民族と戦ったのか、内部崩壊か、それとも土のクリスタルに見放されたか……実に興味深いな。

 「そういえば土のクリスタルは何処に?」
 「土のクリスタルはミステアにあるはずよ」
 「風もね。アテノアには水のクリスタルがあるわ」

 セーブルとリオが言う。前は確かにこの大陸に土のクリスタルがあったはずだし、より謎は深まる一方だな。

 広間を超えると細い一本道に入る。少し嫌な予感がするが進まなくては何も始まらないからな。

 「あっ……」

 何かに躓いたシーラを支える。

 「大丈夫かい?」
 「あ、ありがと……」

 顔と顔との距離が近くなるとつい凝視してしまう。

 「そ、そんなに見てどうしたの!?」
 「い、いや何でもないよ」

 シーラが顔を赤くしながら言うのでついこちらも照れてしまう。

 「シーラに見惚れてたんですか?」

 ミーナが言うと三人がジト目でこちらを見て来る。

 「いやみんな可愛いなってハハッ~」
 「うわっ……話逸らしたわね……」
 「正直に言うべきね……」
 「ジンさんたまに男らしくないとこありますからね~」

 みんなからブーイングだしこれはミスったな。ミーナに関してはこの間のシャワーの話だな……あれは……何も言えない……

 「アハハッ、みんないいから!」

 シーラが場を収めようとすると後ろから大きな音が聞こえる。

 「うん?」
 「み、みんな走るんだ!」

 後ろを振り向いたその瞬間、大きな岩が転がってきたのだ。

 「あ、あれ不味いわね……」

 みんなが一斉に走り出す。

 「あの先に見える広間まで逃げるんだ!」

 入ってすぐ横に逃げ込めば岩は当たらないはずだ。みんな必死になって走る。

 「もうすぐよ!」

 岩が当たる寸前にみんな広間に駆け込み何とか岩を避ける事が出来た。

 「はぁはぁ……ふざけんじゃないわよ……」
 「寿命が縮みました……」
 「全く……これだから遺跡の罠は……」
 「歴代の先人達は恐ろしい事を……調査を怠った調査部隊の方々にはキツくいっておきましょうかしら」

 みんなその場で倒れ込む。だがまだ休めるわけでもなさそうだ。

 「みんな立って!」

 目の前には白いゴーレムがこちらを見て目を光らせていた。
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