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27話:王都を出て

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 騒動を終え、ミステア大陸へと向かった。エリンギ王国の首都シイタケを抜けミステアへと続くペパーミント橋を渡ればつく。妖精の王に会うまでの道のりさらにもっと先だがな。
 「途中でリオの故郷のナットウを通るかな?」
 
 折角だし行けるならリオの故郷も通っておきたい。

 「ミステアに向かうなら経路としては絶対入れた方がいいわね」
 「どういう事?」
 「ミステアへ向かう途中にナットウを通らないで行く場合はモンキーバナナの谷を通らないとだからそれはかなり効率が悪いわ」

 何だそのふざけた名前の谷は……マジで地名を付けた奴をここに連れてきて正座させて説教したいぐらいだ。

 「なるほど。ならリオの実家に寄れるし丁度良かったね」
 
 前に実家を案内するなんて言ってくれたからな。

 「ちょっとジン~リオの実家なんて寄って何をするのかしら?」

 シーラがジト目でこちらを見る。それに続いてミーナやセーブルも同じような顔でこちらを見る。

 「いや、ほら前にナットウに来たら実家を案内するって言ってくれてたからさ」

 すると今度は三人がリオを睨みつける。

 「どういう事かしら?」

 セーブルが軽く威圧するかのように言うとリオは慌てて誤魔化す。

 「ほ、ほら、うちの実家ってそこそこ広いし、街も含めて案内するよって意味よ~」
 「ふぅん~じゃあ私達もジンと一緒にしっかりリオのご両親に挨拶するわ」
 「ですね~セーブルさん言う通りです!」
 「そういう抜け駆けみたいな事は駄目よ!」

 三人して何もそこまでムキにならなくても……別にリオのご両親い挨拶する事ぐらい何でもない話なわけだし。

 「まぁまぁ~それでそれまでの経路に危険な地域は通るかい?」
 「多分大丈夫なはずよ。特に変な場所は通らないと思うし」

 なら暫くはゆっくりできるな。王都では来て早々色々あり、最終的には騒がれてまともに観光出来なかったからな。ほとぼりが冷めたら改めて王都を観光したいところだ。

 「ならまったり行けるね~」
 「ねぇセーブルそういえばエリンギって魔族の襲撃はない感じなの?」
 「魔族の襲撃は聞かないわね。リレイルはあるのかしら?」
 「結構離れた街でもアテノアからわざわざ来て襲撃が来るんですよね……」

 ミーナの言う通り、リレイル王国は率先してアテノアまで遠征する。魔族達も人に化けたり夜移動とかして街を襲撃するのだ。二人と会ったラシットの街でも襲撃があったからな。エリンギに来ないのは場所的に少し遠いし、ミステアの国々との交流のある国だからかもしれないな。

 「リレイルは本格的の遠征してるのに対してエリンギは特にそういう動きはないからね」
 
 大国であるリレイルだが、魔族との戦いがなくなれば他の地域も攻めてくるのではないかという懸念はある。


 ◇


 夕方頃になり野営をする事になったが遺跡のある場所まで辿り着いた。

 「ここは?」
 「スッポン遺跡よ。昔滅んだスッポン王国の王都だったと言われている場所なの」

 スッポンね……コラーゲンたっぷりって……それとは違うか。もうツッコんだら負けだな。

 「エリンギが侵略したのかい?」
 「いえ、初代の頃の時点でとっくに滅んでいたとお父様はいっていたわ。謎多き国なのよね」
 「なるほど」

 せっかくだし外より遺跡の中で野営するかな。馬車は収納空間にしまって馬は遺跡の中入ってテントの近くで休ませればいいからな。

 「この遺跡の中はテント貼れるぐらい広いかな?」
 「大丈夫なはずよ。外より中の方が安全でしょうし中で泊りましょう」

 遺跡の中の地下に繋がっている場所があったのでそこに入る。

 「さて馬はここで休ませて、テントはここでいいね」
 「ええ、これなら外よりいいわね」

 地下の入り口に入ってすぐの場所が大きな広間のようになっていたのでそこでテントを貼った。周辺に人の気配はないしここで泊っても問題ないだろう。

 「でも凄い不思議な感じだね」
 「そりゃまぁ謎の文明の遺跡だからね」
 「セーブルは過去に全部ここを探索したのかい?」
 「まぁ大体はね~けっこう昔だけど護衛と一緒に見て回ったわ」
 「過去の発掘で何かお宝とかはゲットしちゃってるわね……」

 シーラが残念そうな表情を見せる。確かにこういう遺跡だしお宝とか期待してしまうよな。

 「ハハッ、かなり昔から発掘作業をしてますからね」

 セーブルは苦笑いだ。だがまだ未発見の場所もあるかもしれない。例えば仕掛けがなきゃ開かない扉とかがあってもおかしくはない。

 「じゃあそれを確かめようか?」
 「えっ?」
 「でもジンさんここは百年以上前から発掘作業してる遺跡ですよ?」
 「そうそう。私も来た事あるけど、今更宝があるとも思えないわ」
 「それじゃあ今それを確認するね。ザ・マッピング」

 周辺の空間配置を把握する第九位階魔法、ザ・マッピングを使えばそれを確かめる事が出来る。少しぐらいの期待を込めて魔法を発動する。

 「うん?」

 周辺数十メートルで範囲を広げると凄い事がわかった。ここの遺跡は下へ下へと複雑な迷路のような構成がされているのがわかる。マンションでいえば地下十階以上の深さがあり、部屋の数もかなり多い。

 「ねぇセーブルこの地下遺跡は何部屋ぐらいあったんだい?」
 「そうね……十部屋ちょっとだったかしら。思ったほど地下深くまでは広がってなかったはずです」

 セーブルのこの発言で一つ確信した。どうやらまだまだ未発掘の場所があるという事だろう。

 「ならお宝はまだまだ眠っているかもしれないね」
 「えっ?」
 「この遺跡凄い地下深くまで広がってるよ。迷路のようで部屋の数も三十はあるはず」

 下の方には大きな力も感じるし何かあるのは間違いない。今好奇心と探求心でドキドキとワクワクが止まらない。

 「嘘!」
 「ま、まってジン?それはつまりまだここに眠るお宝があるかもって事?」

 シーラが目を光らせて言う。

 「ああ、おそらくね」
 「でも……調査ではそんな報告は?」
 「古代文明の仕掛けに気付かなかったって事じゃないかい?」

 もしかしたらもっと高度な文明だったのかもしれないな。だがそれだけに危険も付き物だ。

 「なるほど……それじゃあ早速探しに行きましょう!」
 「待って!」

 そこでリオがストップをかける。

 「ちょっとリオ?まさか水を差すつもり?」
 「じゃあ聞くけどシーラ?遺跡の中はそれだけ危険だというのはあなたの認識であるのかしら?」
 
 リオに言われ黙る。確かに罠はたくさんあるだろう。勝手に行動されては危険も高くなるな。

 「でもお宝が~」
 「まぁまぁシーラ落ち着いて」
 「でもミーナ~」
 「リオさんはおそらくちゃんと一晩休んでジンさんと作戦を練って万全の状態じゃないとって事だと思うよ」
 「ミーナの言う通りよ。別にお宝は逃げないんだし、誰も見つけてないなら急ぐ事もないわ」

 シーラがこんな感じでは今すぐ行こうもんなら確実に危険な目に合うだろう。ちゃんと一晩休んで準備だな。

 「二人の言う通りだよ。今日はしっかり休んで準備をしようか」
 「はぁい~ジンがそう言うならそうするわ……」

 まぁ気持ちはわかるし、自分一人なら今頃奥まで行ってるからな。
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