元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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32話:クリスタルの欠片

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 シーラの土下座が終わり、準備が出来た所で最下層に向かう。さっきのは怖かった三人がいなくなりホッとしている所だ。

 「この先で最後ですか?」
 「ああ、そのはずだよ」

 魔法で確認したし、奥が異空間にでも繋がっていなければ最後なはずだ。奥に進み最後の部屋に入る。中はさっきの大きな広間とは違い小さい。

 「壁一体に古代文字が……なんて書いてあるのかしら?」
 「残念だけど俺にはわからないんだ……」

 流石に見た事のない古代語を理解することは難しい。いつか二十柱の王に聞いてみるとしよう。

 「祭壇に何かあるわね」

 祭壇まで行くと台座の上に光る欠片が置いてある。

 「これはクリスタルの欠片?」
 「そのようだね。これは土のクリスタルの欠片だ」

 これは思わぬ収穫だな。クリスタルの欠片は主と認めた者に加護を与える事が出来る。セーブルのようにクリスタル本体に認められて加護を受ければ関係ないが、欠片は才能と資質の塊のような人じゃなくても加護を受ける事が出来るからな。

 「シーラ、これは君が受け取ろうか」
 「えっ、私!?」

 この中で土の精霊の加護を受けているのはシーラだ。誰が持つに相応しいかと考えればシーラになる。

 「この中で土専門はシーラだ。シーラしかいないよ」
 「まぁそう言うとそうなんだけどさ……」

 少し遠慮がちな感じだ。さっきの事を気にしているのだろうか。

 「使えない物貰っても宝のもち腐れよ。あなたが受け取りなさい」
 「そうね、私とリオも持ってるしそれは持っておいて損はないわ」

 リオとセーブルが言う。

 「シーラ良かったじゃない。これで私以外欠片持ちか……」

 ミーナは残念そうな表情を見せる。まぁいずれがミーナの為の水のクリスタルの欠片も手に入れてやらないとだな。

 「ハハッ、ミーナの分は俺が責任を持って探すから。少し我慢しててね」
 「はい、今度一緒に探してくれると嬉しいです」
 「勿論だよ」

 実際にクリスタルの加護を習得する方法だがセーブルのような有無を言わせない才能のある者以外でも受ける事は出来る。その方法の一つとして欠片を探し、力を得る事。それで練度を高めていけばいざクリスタルと対面した時に加護を得ることが出来るかもしれないわけだ。

 「それじゃあ私貰うね」

 シーラはそう言って欠片を手に取ると。欠片は光だした。どうやら欠片の加護は無事受ける事が出来るようだ。これならニーナも水のクリスタルの欠片を得た時に加護を得ることができるだろう。

 「ひ、光った!」
 「ちゃんと加護を受ける事が出来たようだね」
 「そうみたいね」

 シーラはホッとしたような表情だ。欠片の加護に関しては、ある程度自身の属性というのを使いこなせているのが条件であまり厳しくはないが、あまりに才能のない者は弾かれる。

 「しかしお宝はこれだけか……」

 シーラは落胆する。金銀財宝を誰よりも期待していたからな。

 「ハハッ、これはかなり十分なお宝だよ」
 「そうよ、シーラだけなんだしそんな事言ったら駄目よ」

 リオがシーラを諫める。

 「ごめんごめん、いや財宝をチラッと期待してたもんだからつい……」
 「もう……でもジンさんがゴーレムから回収した魔石は結構な価値がありそうですね」
 「おっ、気付いていたんだねミーナ」
 「はい、ジンさんがわざわざ全部回収してましたし」

 いくらになるかはわからんが、魔剣なんかの武器作成において使う事ができれば結構な額になるだろう。

 「まぁ売るかはわからないけどね。ただこれで一つ分かった事があるかな」
 「何の話です?」
 「このスッポン王国は何らかの理由でこの地を捨てたという事さ」
 
 何を理由に捨てたかはわからないが、セーブルの話では過去のエリンギ王国の調査団の派遣では、一度も金品なんかの回収が出来なくて、人骨も発見できなかったという話だ。この地下迷路を全て回ってお宝がこれだけというのは人々はここから去ったと考えるのが妥当だとう。となれば今土のクリスタルがあるミステアに行けば何かわかるかもしれないな。

 「ここは滅ばされたわけじゃないって事?」
 「いや、そこまでは分からないけど、少なくとも人々は生き延びたはずさ」
 
 俺が一番気になったのはこの地下迷路に入ってからよく見かけた壁画だ。俺達が入る前に調査の行き届いていた部屋の壁画に描かれた人々と、ゴーレムのいた部屋以降の部屋に描かれた壁画に微妙な違いがあったのだ。

 「それじゃあ他の場所で繁栄したかもしれないのね。この遺跡の仕掛けといい、かなり凄い技術だわ……同じ人間とは思えないわね……」

 セーブルの言う様にあのアースドラゴンのいたあの壁の仕掛けは凄い。俺でもすぐにわからなかったしあの技術はそう出来る物ではない。その理由だが俺は仮設を立ててみた。この遺跡を作ったのは恐らく人間ではないという事だ。この地下の壁画に描かれている人々には後ろに尻尾のようなものが描かれている。獣人族かと思いきや獣人族は獣人族でしっかり描かれているのだから恐らくそれでもない。

 「かもね……まぁ古代人ってだけ謎が多いよ」

 土のクリスタルの加護をより最大限に引き出す力をもった古代種族……それがスッポン王国を繁栄させたのだろう。そんな種族がまだ現存しているなら是非会いたいものだ。

 「さてそろそろ戻ろうか?」
 「そうね、地下にいるから今外が暗いのか明るいのかもわからないけど潜ってから結構な時間が経っているわよね?」
 「たぶん夕方かな。おおよその時間は数えているから」

 罠があったり、一部屋ずつしっかり調査して進んだからな。休憩も多く挟んだし無理もない。

 「もうそんな時間なのね……でもまぁ体の疲労具合考えれば当然か……」
 「テントに戻って休みたいし帰りましょう!」


 ◇


 その頃勇者達はリレイル王国のとある街ティラミスに来ていた。勇者を出迎えてくれると予め聞いていたので四人は疲れを癒そうと領主であるパンナコッタ伯爵の家の前に来ていた。

 「はぁ~やっと着いたな」
 「そうね、最近は慣れないことも多くて苦戦続きだったからね」

 松野と桜は苦々し気に語る。ジンが抜けた事による負担増大に気が付いてはいるが、人数が減ったことによるものだという認識程度しかない。

 「まぁまぁでもやっと慣れてきたんじゃないかって思うよ」

 光彦がフォローをいれる。確かにジンが抜けた直後に比べればトラブルも減ってきており、慣れてきたという実感があった。

 「光彦の言う通りだ。あいつが抜けた直後がバタバタするのは俺の予想の範囲内だし、問題はないさ。ただ今まで以上に気を付けて行動していけばいいだけの話さ」

 正義が自信たっぷりの表情で言う。ジンが抜けて以来すっかりみな正義に頼りっぱなしで、正義も正義で三人に頼られる事に生き甲斐と喜びを感じていた。

 「そうそう正義の言うとおりっしょ。もう第五位階もマスターしてきたし、六位階に入れればもっと強くなれるさ」

 だが第六位階魔法はこの世界では簡単に習得する事はできない。ジンは小出しで教えていこうとかつては考えていたがもうそのジンはいない。勇者達は領主やギルドに掛け合って魔法を習得と考えているが簡単に教えてくれるほど甘くはないのだ。

 「勇者様御一行ですな」

 門から執事と見られる老人が出てきて四人を屋敷へと迎え入れた。 
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