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35話:ハチミツの森
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「ここがはちみつの森……」
リオの故郷であるナットウはこの森を抜けた先にある。甘い匂いでもするのかと思いきやそんな事はない。外見は普通な感じだ。
「ここを抜ければナットウよ」
道中何事もなくここまで来た。最近は盗賊に襲われるような事もなくなったがまたいつ襲われるかわからないから気を抜いてはいけないな。
「そういえばこの森の由来は?」
「ここの森の守護獣がはちみつって言葉を発する事から名づけられたらしいわよ」
「なるほど」
どんな守護獣だよ!ってツッコみを入れたいところだが、この世界にははちみつという物がないみたいだからな。これで黄色い熊さんが守護獣ってのはなしにしてくれな。
「襲ってきたりする?」
「自分から攻撃しない限りはそういった事はないわ。ジンほどじゃないけど結構強いしね」
そんないい感じの相手なら是非四人と戦わせたかったがリオがNG出してるから、その提案はしないでおく。
「早速入りましょう。ふかふかのベッドが私を待っているわ!」
「そうだね。私もベッドが恋しいかも」
シーラの言葉にミーナが反応する。所詮デラックステントと言っても宿のベッドには勝てないからな。
「この森はどれぐらいで抜けれるの?」
「あら、セーブルはここ来た事ないのね」
リオは意外そうな顔を見せるとセーブルは少し暗い表情を見せる。
「ほら……私体の火傷痕のせいで外出出来ない期間が結構あったから」
「あっ……ごめんね」
リオが申し訳なさそうな顔で謝る。
「ううん、今はこうして外出れるから大丈夫だよ。ただ引きこもりの時代を思い出しただけだし」
「それなら良かった。この森は一日もしないで超えられるから大丈夫よ」
◇
森の中を入り進んでいく。道が整備されているので馬車でも問題なくいけそうだ。
「なんか気味が悪いような……」
ミーナは少し不安気に言う。するとシーラもそれに続き不安をあらわにする。
「そうね……私も少し不安ね」
「リオ本当に大丈夫なの?」
「そのはずよ」
何が不安かというと森の中で全く魔物と遭遇しないのだ。森を通れば少なからず魔物と出会う事が多々あるがそれがない。ここまで静かなままだと、不気味で不安になるのだろう。確かに適度に魔物と遭遇してくれた方がこっちとしても安心する。
「まぁ直近に気配はないし問題はないはずだよ」
胞子を出す毒キノコ的なやつや毒の実が成る木なんかは注意しないとだが、リオの話ではそんなモノななかったはずだと言っている、果たしてどうか……
「うん?」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと離れたとこに動く気配を感じていてね」
その例の守護獣って奴かもしれないな。一応警戒しておくか。
◇
気配が近くなるにつれてちょっとした好奇心が期待を膨らませる。
「そういえばリオはここの守護獣見た事あるのかい?」
「ええ、供え物した事あるから」
「ナットウ市民だもんね」
するとミーナが声をあげる。
「ジンさん……あれ!」
ミーナが指を指した方向には何やら大きく動く影が……あいつが守護獣に違いないな。
「ちょっと見て来るね」
「あ、ちょっと……」
リオの制止を無視し、一人先導し大きな影を見に行く。すると黄色い毛並の大きな魔獣がそこにいた。
「こ、こいつか」
三メートルは超えているであろうその身体……熊っぽい感じだな。こっちに気付いたのか振り向く。
「なっ……」
振り向き拝んだその顔はとてもいかつく、おでこの部分に十文字状の傷のようなものがついている。
「ハチミツ!」
クマがおっさんボイスで叫ぶとこちらに襲い掛かってきた。
「なっ……」
咄嗟にシールドを貼り防ぐ。
リオから聞いてたのと話が違うんだが……
「そっちがやる気なら……」
戦闘態勢に入り構える。魔法を発動しようとしたその時だ。
「駄目!」
リオが後ろから止めにはいる。
「気をつけて!こいつ襲ってきたよ」
するとリオ以外の三人は身構えるがリオだけは変わらない。
「これはジンが悪いわ……」
「どういう事だい?」
リオがそのまま守護獣の所に行くと頭を下げた。
「お着換え中失礼しました……どうか怒りを鎮めてください」
「ハチミツ~」
リオが頭を下げると上機嫌になったらしく、敵意がなくなった。
「どういう事ですか?さっきまで敵意むき出しっぽかったのに……」
ミーナの言う通りだ。リオ以外は全員?マークが頭によぎっている状態だろう。
「さてジンも謝って」
「えっ、俺?」
「そうよ、ほら」
リオに無理やり頭を下げさせられる。
何故俺がいきなり襲われてきた相手にこんな事を……何かの間違いではないのか。
「リオ訳がわからないよ。事情を説明してよ~」
「ああ、そうだったわね。見ての通りこれは守護獣、蜜熊(ハチミツベアー)。温厚で襲って来る事は滅多にないんだけど、今回は特別ね」
「どういう事だい?」
「蜜熊は上に赤い服を好んで着る習性があるんだけど、それがないと人前に出ることはないの。凄く恥ずかしがり屋だから」
赤い服……どこのぷーさんの真似事だっての!全然似ても似つかないし。というかその顔とガタイで恥ずかしがり屋とか……大体獣のくせに服着るとかどういう事だよ。ペットの犬じゃないんだから……
存在自体がふざけてる。本家はもっと可愛くて温厚で愛嬌あるんだがな。
「どうしたのジン?随分顔が引きつってるけど……」
「な、何でもないよシーラ。ちょっと頭を下げたのが腑に落ちないだけだから」
この四人に本家のハチミツ舐めるあの熊を見せてあげたいが、それが出来ないのでこの想いをぶちまける事が出来ないのが非常に悔しい……
「それじゃあ俺達はもう行こうか」
ここにこれ以上いるのは耐えられんな。
「待って!」
「まだ何かあるのかい?」
「この蜜熊服がなくてここから動けないみたいなの……ジン何とかならない?」
こいつの服なんざ知りませんよ。ない方が熊らしくていい気がする。こんだけいい身体してるんだし、むしろこの方が絶対いい。
「いや、何とかならなくはないと思うけど……」
「蜜熊の服がないと、他の魔物が騒ぎ出してしまうわ。蜜熊のハチミツって叫ぶ声が他の魔物が嫌がって力を弱めるの。それで森は平和を保ってるからこのままだと……」
確かにあの声は多少の不快感があったな。人間には感じないが、魔獣に効果絶大の超音波のような効果があるのかもしれないな。
「なるほどね……」
なんかムカつくけどそれを聞いたら助けない訳にもいかないか……
「了解」
リオの頼みなので仕方なく助ける事にした。
リオの故郷であるナットウはこの森を抜けた先にある。甘い匂いでもするのかと思いきやそんな事はない。外見は普通な感じだ。
「ここを抜ければナットウよ」
道中何事もなくここまで来た。最近は盗賊に襲われるような事もなくなったがまたいつ襲われるかわからないから気を抜いてはいけないな。
「そういえばこの森の由来は?」
「ここの森の守護獣がはちみつって言葉を発する事から名づけられたらしいわよ」
「なるほど」
どんな守護獣だよ!ってツッコみを入れたいところだが、この世界にははちみつという物がないみたいだからな。これで黄色い熊さんが守護獣ってのはなしにしてくれな。
「襲ってきたりする?」
「自分から攻撃しない限りはそういった事はないわ。ジンほどじゃないけど結構強いしね」
そんないい感じの相手なら是非四人と戦わせたかったがリオがNG出してるから、その提案はしないでおく。
「早速入りましょう。ふかふかのベッドが私を待っているわ!」
「そうだね。私もベッドが恋しいかも」
シーラの言葉にミーナが反応する。所詮デラックステントと言っても宿のベッドには勝てないからな。
「この森はどれぐらいで抜けれるの?」
「あら、セーブルはここ来た事ないのね」
リオは意外そうな顔を見せるとセーブルは少し暗い表情を見せる。
「ほら……私体の火傷痕のせいで外出出来ない期間が結構あったから」
「あっ……ごめんね」
リオが申し訳なさそうな顔で謝る。
「ううん、今はこうして外出れるから大丈夫だよ。ただ引きこもりの時代を思い出しただけだし」
「それなら良かった。この森は一日もしないで超えられるから大丈夫よ」
◇
森の中を入り進んでいく。道が整備されているので馬車でも問題なくいけそうだ。
「なんか気味が悪いような……」
ミーナは少し不安気に言う。するとシーラもそれに続き不安をあらわにする。
「そうね……私も少し不安ね」
「リオ本当に大丈夫なの?」
「そのはずよ」
何が不安かというと森の中で全く魔物と遭遇しないのだ。森を通れば少なからず魔物と出会う事が多々あるがそれがない。ここまで静かなままだと、不気味で不安になるのだろう。確かに適度に魔物と遭遇してくれた方がこっちとしても安心する。
「まぁ直近に気配はないし問題はないはずだよ」
胞子を出す毒キノコ的なやつや毒の実が成る木なんかは注意しないとだが、リオの話ではそんなモノななかったはずだと言っている、果たしてどうか……
「うん?」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと離れたとこに動く気配を感じていてね」
その例の守護獣って奴かもしれないな。一応警戒しておくか。
◇
気配が近くなるにつれてちょっとした好奇心が期待を膨らませる。
「そういえばリオはここの守護獣見た事あるのかい?」
「ええ、供え物した事あるから」
「ナットウ市民だもんね」
するとミーナが声をあげる。
「ジンさん……あれ!」
ミーナが指を指した方向には何やら大きく動く影が……あいつが守護獣に違いないな。
「ちょっと見て来るね」
「あ、ちょっと……」
リオの制止を無視し、一人先導し大きな影を見に行く。すると黄色い毛並の大きな魔獣がそこにいた。
「こ、こいつか」
三メートルは超えているであろうその身体……熊っぽい感じだな。こっちに気付いたのか振り向く。
「なっ……」
振り向き拝んだその顔はとてもいかつく、おでこの部分に十文字状の傷のようなものがついている。
「ハチミツ!」
クマがおっさんボイスで叫ぶとこちらに襲い掛かってきた。
「なっ……」
咄嗟にシールドを貼り防ぐ。
リオから聞いてたのと話が違うんだが……
「そっちがやる気なら……」
戦闘態勢に入り構える。魔法を発動しようとしたその時だ。
「駄目!」
リオが後ろから止めにはいる。
「気をつけて!こいつ襲ってきたよ」
するとリオ以外の三人は身構えるがリオだけは変わらない。
「これはジンが悪いわ……」
「どういう事だい?」
リオがそのまま守護獣の所に行くと頭を下げた。
「お着換え中失礼しました……どうか怒りを鎮めてください」
「ハチミツ~」
リオが頭を下げると上機嫌になったらしく、敵意がなくなった。
「どういう事ですか?さっきまで敵意むき出しっぽかったのに……」
ミーナの言う通りだ。リオ以外は全員?マークが頭によぎっている状態だろう。
「さてジンも謝って」
「えっ、俺?」
「そうよ、ほら」
リオに無理やり頭を下げさせられる。
何故俺がいきなり襲われてきた相手にこんな事を……何かの間違いではないのか。
「リオ訳がわからないよ。事情を説明してよ~」
「ああ、そうだったわね。見ての通りこれは守護獣、蜜熊(ハチミツベアー)。温厚で襲って来る事は滅多にないんだけど、今回は特別ね」
「どういう事だい?」
「蜜熊は上に赤い服を好んで着る習性があるんだけど、それがないと人前に出ることはないの。凄く恥ずかしがり屋だから」
赤い服……どこのぷーさんの真似事だっての!全然似ても似つかないし。というかその顔とガタイで恥ずかしがり屋とか……大体獣のくせに服着るとかどういう事だよ。ペットの犬じゃないんだから……
存在自体がふざけてる。本家はもっと可愛くて温厚で愛嬌あるんだがな。
「どうしたのジン?随分顔が引きつってるけど……」
「な、何でもないよシーラ。ちょっと頭を下げたのが腑に落ちないだけだから」
この四人に本家のハチミツ舐めるあの熊を見せてあげたいが、それが出来ないのでこの想いをぶちまける事が出来ないのが非常に悔しい……
「それじゃあ俺達はもう行こうか」
ここにこれ以上いるのは耐えられんな。
「待って!」
「まだ何かあるのかい?」
「この蜜熊服がなくてここから動けないみたいなの……ジン何とかならない?」
こいつの服なんざ知りませんよ。ない方が熊らしくていい気がする。こんだけいい身体してるんだし、むしろこの方が絶対いい。
「いや、何とかならなくはないと思うけど……」
「蜜熊の服がないと、他の魔物が騒ぎ出してしまうわ。蜜熊のハチミツって叫ぶ声が他の魔物が嫌がって力を弱めるの。それで森は平和を保ってるからこのままだと……」
確かにあの声は多少の不快感があったな。人間には感じないが、魔獣に効果絶大の超音波のような効果があるのかもしれないな。
「なるほどね……」
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