元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

文字の大きさ
42 / 47

42話:戦いの果てに

しおりを挟む
 「あれは?」

 さっきよりも禍々しいオーラを放つ。どうやらあれが真の姿という事なのだろうか。

 「ワレノシンノチカラオモイシレ……ワレハシハイシャ……タトエカミデアロウトマケルワケニハイカナイノダ……」
 
 少し図体が大きくなったところで変わらない。ならばその姿に敬意を表し全身全霊の力を持って叩き潰すとしようか。

 「シネ……ドラゴンバースト……」

 消滅させたはずの翼は復活し、空から強烈なブレス攻撃が飛んでくる。

 「インフィニティシールド!」

 攻撃は防ぎきれたものの周りは完全に死の大地と言った感じだ。

 「ツドエ、アンコク……ダイチヲカリツクセ……」

 リンドヴルムの不気味な声と共に空が暗雲に変わる。周辺の天気を変える能力を持っている様だ。

 「コクライ!」

 空を覆う暗雲がある周囲に向かって黒い雷が飛んでくる。

 「チッ……」

 こいつ周囲を全て破壊しよって魂胆か?んな迷惑な事したら下手すれば周辺住民がヤバイ。

 「沈黙の空!」

 天候を曇り状態に変え、それを維持させる第十位階魔法だ。これを使えば周辺に雷を落とされる事はなくなる。

 「リオ飛ぶよ!」
 「ええ!」

 お姫様抱っこしたまま翼を広げ空高く飛び上がる。

 空での対決といこうか。

 「マサシクゴウマンキワマリナイスガタヨ……ダレノキョカヲエテソラニ……」

 全くいつまで自分が上にいる気でいるのか……どっちが地を這いつくばるに相応しいか教えてやるよ。

 「テラグラヴィティ!」

 重力で相手を制圧する第九位階魔法だ。

 「グオッ……」
 「お前が王なら俺は神だね。ゼロイクリプス!」

 対象を黒い膜で包み込み対象の能力を無力化する第九位階魔法だ。ちなみに弱者にやればそのまま消滅する。

 「チ、チカラガ……」
 
 徐々に力を失う絶望を味わうがいい。

 「イノセントブレイク!」

 これは光の鎚で攻撃する第八位階魔法だが、攻撃された部分の機能を一時的に低下させる魔法。黒い膜に包まれているリンドヴルムの頭めがけて攻撃する。

 「グッ……」

 これで目の機能は落としたな。次は翼……再びその翼を破壊しようか。

 「エターナルブレード英知の剣!」

 これは大きな剣を落とす第十位階魔法だが、その剣には魔法耐性と高い攻撃力がある。両翼を串刺しにするように斜めに落とす。

 「ウッ……」

 もうこれで虫の息だろう。

 「気は済んだか?」
 「ソレハコチラノセリフダ……オマエハヤサシクトテモザンコクダナ……」

 リンドヴルムのその言葉に驚く。

 「残酷だと?」
 「オマエハスグニデモワレヲタオスコトガデキタ……ダガソレヲシナイノハ、オマエガワタシニタイシテナサケガアルカラダ……ソノナサケガチュウトハンパニワレヲクルシメ、ソシテソンゲンヲズタボロニコワス……ソレガキサマノヤリカタダトイウノガワカッタ」

 中途半端な情けか……確かに俺は最初はこいつを逃がす選択肢を与えていたな。例えそれが絶対に向こうが受け入れないとわかっていてもそれを与えてしまう事……それが情けか。それとこいつのいうやり方……確かにこれは少し反省しないといけないかもな。

 「何が言いたい?」
 「ワレハキサマニクッシナイ……オマエハアイテノセイシンヲチカラデオリ、クップクサセシタガワセル」
 
 当然だ。出来れば殺しなんざやりたくない。一度力を見せつけボキボキに精神を折って絶対こいつを敵に回してはいけないという恐怖を植え付け手を差し伸べる。大半が俺を従い逆らわなくなるし、過去がそれを証明しているのだ。だから俺は大半の奴には一度は手を差し伸べるしこいつも例外ではない。勿論優先順位はあるし基本的に二度目はない。

 「悪いか?お前も死の恐怖があるなら助けてやるぞ。俺は慈悲深いんだ」

 ここでも俺は瀕死のリンドヴルム相手ににこやかに笑いそれを問いかける。ここまでズタボロにしといてと思うかもしれないが、そうしたからこそもしかしたら手を差し伸べられるんじゃないかという可能性が少しばかり頭にあるからだ。

 「ゴウマンナヤツメ……ワタシハオマエニコロサレルコトデイシヲマモロウ……サァヤルガヨイ!」

 まぁ当然こう言って来るのも予想通りだ。リオも退屈するかもだしそろそろ片をつけるとするか。

 「了解、じゃあこれで終いだな。お前は俺が折れなかった真の強者である事を認めるよ」
 「ソノゴウマンハイズレヒゲキヲマネキ、セカイヲホロボス……シハイシャナラモットヒジョウデアルベキダ」

 前に同じ二十柱の親友にも同じことを言われたな……でも俺は思う……いらない人間なんていないし、どうしようもない犯罪者がいたら極論、人格と記憶を破壊して違う人間を構成すれば十分役に立つんじゃないかってね。勿論どこの世界の住民もそれは受け入れがたい話だし、そんなのが成立するのは二十柱及びその周辺だけだ。そもそも俺は大事な四人を優先して守らなくちゃいけない。こいつの言葉は警告として素直に頂くとしよう。

 「その忠告ありがたく受け取っておくよ。ありがとうリンドヴルム」

 そのまま上空に無数の魔法陣を発生させそこから魔弾を発生させる。

 「殲滅喝采千魔陣砲」

 これはネーミングセンスゼロの俺が構成した自作の魔法だ。ただ魔法陣を無数に出現させその魔法陣から魔弾を放つだけ。魔力が馬鹿高くて構築能力があれば誰でも習得可能だ。

 「グッ……ワガ……ノゾ……ミはタッ……セイ……サレ……タ……」

 意味深な事を言って消滅した。我が望みね……あいつ何かしていたのか?まぁそんな事考えてもわからないか……

 「リオ終わったよ」
 「見てたからわかるわ」

 リオは微笑みながら言う。少し見せすぎてしまったな……早すぎたと少し後悔しているところだ。

 「化け物でごめんね」
 「フフッ、宇宙の支配者なんだから当然でしょ~」

 つい言った一言だがリオは笑いながら茶化す。他の三人も俺を恐れずにこういう顔をしてくれるだろうか……

 「気持ち悪くなかった?」
 「傲慢で慈悲深いあなたに常識を教えてあげるべきかと今考えているわ」

 リオはそう言うと俺の唇にキスをする。突然のその行動に一瞬思考が止まる。

 「えっ……」
 「私の為にここまでしてくれたあなたに凄く感謝してる。いつも守ってくれて助けてうれたあなたに私は永遠の愛を誓いたいわ」
 「リオ……」

 突然の愛の告白……胸が高鳴るこの気持ち……それを聞いた俺は一つの勇気を貰った気がした。真の姿を見せた後だからこそ意味がある。

 「ハハッ、嬉しいな。断る理由がないな~」
 「フフッ、嬉しいわ……ただし!三人にもそれを言わせる事。それまでこの誓いは仮って事にしておくわ」
 
 それを聞いてなお安心した。俺も当然リオ以外の三人の事も大事だし同じぐらい好きだからだ。まだ会ってそんな月日はないけど俺が信じた四人だけに、四人とそうならなければ完全ではないと思うからだ。

 「ええっ~それはまだ先になりそうな……」

 まだこの姿と力を三人に見せる勇気はない。今回は状況が状況だったし色々加味して大丈夫って確信が何となくあったから見せたに過ぎない。それにリオにだってまだ俺しか使えないあの能力は見せていないし話してない。

 「気合いれなさい~みんなジンの事好きなんだから」
 「三人はまだこれ見てないからさ~それに本当は宇宙の支配者の一人で勇者に魔王を倒さす為に教育してたなんて、元凶というか真の黒幕みたいな感じだしあんまり言いたくないよ~」
 「別にそれは言ってもへぇ~ぐらいにしかならないと思うけどね」

 直接言うのは何か恥ずかしいんですよリオさん……今回は戦闘しながらだったからあれだったけど、俺は宇宙の支配者の一人だなんて本当でも恥ずかしい。

 「とにかく、リオとは気持ちを確かめ合ったし三人との事協力よろしくね」
 「はいはい、変に意識しそうなジンの為にも少しは協力してあげるわ」

 リオはしょうがないわねといった感じだ。でも今回の出来事で俺はリオとの間に新たな絆を築きあげる事が出来たんだ。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...