元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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45話:魔物の巣

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 「ここです」

 五人は巣に辿り着き、デカい洞穴とその周辺にある少しデカめの足跡を確認した。

 「けっこうデカいわね……」
 「おっさんそいつの動きは速いのか?」

 松野は不安気に聞く。

 「いや、スピード自体はそこまでなかったはず……ただ攻防ともに優れた魔物です」

 スピードがそこまでなら最悪逃げる事も出来る。それを聞いた松野は少しホッとしたのか安堵の表情を見せる。

 「そうか、それで中にいるのか?」
 「試してみましょう」

 桜が魔法で火球を入口付近に放つが、反応がないのでソーダが足跡に近づく。

 「反応がないわね……」
 「足跡も比較的新しい……今は巣にいないのでしょう」
 「食事にでも行ったか……今がチャンスかもしれませんね」
 「そうだね。今のうちに物を取り返せば下手に戦う必要もない」

 光彦は戦いを避けたいのだろう。だが正義はそれを聞いて残念そうな表情を見せる。ラシットの街の防衛戦以来強い敵とは戦っていないせいか強敵と戦ってみたいのだろう。

 「少し拍子抜けだが早いうちに物を取り返しましょうか」

 ソーダと正義と光彦の三人が巣の中に、松野と桜が外で待機という形になった。

 「中はそこまで広くないですね」
 「ギガント自体元々洞穴を自分で掘って、巣をつくる魔物ではないですからな。これは自然にあった物に住み着いた感じですね」

 ソーダは明かりを灯しながら盗られた物を探す。二人も金目の物がないかどうか目を凝らしながら地面を見渡す。

 「あれは……」

 洞穴の奥まで行くと薄暗い中で光る物が見え、ソーダはすぐさま駆け寄る。

 「間違いない……これは私の私物だ……」

 二人もそこまで行き、明かりを照らすと剣と袋のような物が置いてあった。剣と小さな袋と大きな袋……ソーダが盗られたのは武器と財布と希少な鉱石と言っていたのでそれに間違いない。

 「良かったですね」
 「ああ……これがないとヤバかったんだ……」

 だがソーダは袋の中を確認すると難色の声を上げる。

 「石が少し足りないな……」
 「探しましょうか」
 「頼む。なかったら諦めだがな……」
 「魔物が運んでますし、もしかしたら落としたかもしれませんからね」

 三人で手分けして地面を確認していると、光彦が光る石を見つけた。

 「これは……」
 「どうした光彦?」
 「いや何でもないよ。見間違えさ」

 光彦はその光る石を見て魔が差したのだろう。自分の懐にコッソリとしまう。

 「ソーダさん、その石は価値のある物なんですか?」
 「ああ、強力な武器を作るには必要不可欠な物でね……十個塊があったはずが八個しか袋にないんだ」

 光彦はそれを聞き、もう一つを捜索に精が出す。一つはお金に一つは武器にしようと考えたからだ。

 「あ、これですかね?」
 「おおぅ、これだよ。ありがとう」

 その直後に正義が石を見つけ、ソーダに手渡す。

 「良かったですね」
 「ありがとう正義君」
 
 その時光彦は内心惜しい気持ちで一杯になりながらも、正直に渡してしまおうかと心に迷いが生じる。後で正義にバレれば何かしら言われてしまうからだ。

 「あと一個ですね」
 「うむ、まぁ最悪なくても一個ぐらいならマイナスにはならない。君達にはお礼をしないといけないな~」
 
 ソーダは喜色の表情を見せる。正義はジンへの嫉妬という点を除けばこの四人の中では一番出来上がった人間だ。今となっては正義ありきのパーティであるのは光彦も重々承知の事だ。

 「正義君、あと一つだね。ついでに金目の物は折角だし頂戴しないかい?」

 飛び上がるほどの財宝がある訳ではないが、ちょこちょこお金が散らばっているの。当然これを持って行かない理由など光彦にはない。

 「オーケー、盗るような真似はあまりしたくないけど魔物が盗んだ物だしいいかな」
 「ですな。旅の資金にするといい。幸いここにあるのを盗った所で誰も文句はいいませんじ」

 ソーダもそれを促すように言った事で正義も心置きなく回収作業に入る。光彦もそれに続き、探すふりをしながら落ちている金を回収する。

 「しかしありませんな……」
 「ですね……魔物が盗っていった時に落としてしまったというのは十分にありえますからね」
 「荷物がほぼ残っていただけでも運がいい方なんじゃないですかね」
 「ですな」

 光彦は罪悪感を抱きながらも石を返そうとは考えなかった。自分達は勇者として魔王を倒す為の旅をしていて、強化には金が必要だったからだ。探す事十五分……結局石は見つからないまま引き上げる事になった。

 「これだけ探してないか……残念ですが諦めですね」
 「すみません、力になれず……」
 「いえいえ、ありがとう正義君。それに光彦君も」
 「い……いえ、当然の事をしたまでですよ」

 内心心苦しい光彦だった。だが協力した時点で報酬として貰ってもバチは当たらないだろうなんて自分を正当化していた。

 「それじゃあ戻ろうか」
 「そうだね、魔物が戻ってきたら面倒だからね」


 ◇


 洞穴を出ると松野と桜が退屈そうに待っていた。魔物が戻ってくる前に回収できた事に三人は改めてホッとする。

 「お疲れ~」
 「どうだった?」
 「ソーダさんの荷物もほぼ回収出来た。こっちも財宝とまではいかないけどちょいちょい落ちてたお金を拾えたよ」
 「そこそこの額になったし期待通りかな」

 しめて金貨六十枚分ぐらいを回収。それを見せると二人も喜色の表情を見せる。

 「いいね~」
 「二人ともナイス!こっちも二人で見張ってたけど魔物は戻ってこなかったわ」
 「それは良かった。それじゃあ早いとこ離れようか」
 「ですな。いつ戻って来るかもわかりません」

 ソーダがそれを言った瞬間だった。

 「何だ?」

 うめき声と足音が聞こえたのだ。

 「まさか……」

 足音がだんだん早くなる。五人の姿を視認したのだろう。全身が岩のような殻で覆われたその魔物は巣へと帰還したのだ。

 「こいつがギガント……」
 「間近で見るとデカい……」

 魔物の目は血走っていた。恐らく五人が巣に侵入したのを察したのだろう。当然自分が集めていた物を盗られたと思い、怒りに燃えていた。

 「あの前足の攻撃に注意してください」

 ソーダが指を指す。前足は円柱状になっておりその先端から伸びる三本の爪が鋭く光る。

 「あれに捕まると危ないです……スピードがそこまでありませんが、力は凄くあります」
 「戦うの?逃げた方が……」
 
 光彦は少し弱気な事を言うが、正義がそれを一蹴する。

 「逃げたらしつこく追って来るのは目に見えている。ここは倒してなんぼさ」
 「遭遇した以上はしょうがないか……おっさん戦えるか?」
 「ええ、借りはかえさないとですからね」

 ソーダも剣を構える。魔王を倒すならこの程度の敵で逃げていては話にならない。正義はそんな想いを胸に剣を構えて前に出る。

 「俺達なら倒せるさ。桜と光彦は後ろで松野は前に。ソーダさんは真ん中に」

 ギガントは四人に襲い掛かった。
 
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