元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎

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47話:忠告

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 ナットウでの一件を終えたとある日の夜。リオの家に泊まっていたジンはみなが寝静まった夜中に気配を感じ目が覚めた。

 「うん?」

 その知っている気配に反応しこっそりと外に出る。音を立てずこっそりとドアを開け外に出た。

 「どうしてここに?」

 目では確認できないが確かに気配は感じる。その気配は自分と同等か少し上であろう能力を持つ存在……同じ二十柱の先輩にあたる男。一瞬気を抜きかけたその時暗闇からいきなり手が現れ自分の首元に飛んでくる。その一撃は常人が当たれば首ごと吹っ飛ぶであろう強力な攻撃だ。

 「っ……」

 身体を動かしその攻撃を避け後ろに後退する。その殺気と攻撃を久しぶりに感じ思わず冷汗を流す。

 「腕は鈍ってないようじゃな」
 「挨拶の割には随分と早い攻撃で」
 「お主ならあれぐらい避けれると思ったからのう。まぁ予想通り避けた訳じゃが」

 相変わらず凄い殺気だ。二十柱の中でも最古参の一人にして自分も含め二十柱の大半が師事しているその男は鬼神ランスロット・ガルティモアー……俺が全力を出しても勝てないであろう数少ないうちの一人だ。

 「何か御用ですかランスロット卿?」
 「うむ、お主の為にわざわざ地球から勇者を派遣したんじゃがそれが無意味になったようで見に来たのだ」

 それを言われつい顔を顰めてしまう。だが俺は別に地球で勇者なぞ連れて来なくても良かった。むしろ勇者召喚というのは前の世界での事からあまりよく思っていないのだが、ランスロット卿の勧めで地球から召喚させる事を承諾した。

 「あなたの勧めでしたね」
 「承諾して放置とは随分と無責任では?」

 思わず舌打ちをしてしまう。だがあいつらに不要に思われてしまったのは俺の立ちまわりミス。だが俺が先導しては意味がない。あの四人の選出には意味がある事であいつらに魔王を倒させる事にも一定の意味があったのだ。

 「仕方がない。彼等は俺を不必要と言った。己の実力も見れない愚か者であるという事まで計算にいれていなかったのは俺のミスです。ですが流石にそこまで言われて俺が彼等に懇願してまで同行するなんてのは有り得ない!」
 「確かに……じゃが彼等はどうする?」
 「全員が痛い目を見て己の愚かさを自覚し俺に頭を下げるような事があれば考えましょう。だがプライドの高い正義がそれをするとは思えませんがね」

 正義が俺の事を煙たがっていたのはよく知る所だ。恐らく俺を追い出そうとしたのも正義の立案だというのもわかった。だが桜は正義よりも俺を慕っていたし、松野はともかく光彦も馬鹿ではなかったはず。どっちにつけば得かぐらいわかっていたと思うだけに、桜が俺より正義の方についたのが計算外だった。別に桜に恋愛感情があったわけではないがただその計算が狂ったのがショックだった。

 「なるほど、しっかり把握しているという訳か」
 「当然、彼等に第六位階魔法を教える前に俺を見限ってくれて本当に良かった。もし教えた直後にそれをやられたら後悔した事間違いないですからね」
 「まぁワシなら教えてしまった直後にそれをやられたら記憶を消すがのう」
 「人間はおもちゃじゃありませんよ」

 この爺さんを含め二十柱というのは身内に優しく敵に厳しくというのがモットーで、俺もその思想を受け継いでいる。だが裏切り行為に対しての報復はそれぞれ強弱があり、この爺さんは裏切り者をおもちゃにする傾向にある。

 「お主がそれを言うか?地球でどうしようもなくなった四人に救いをとか言って選出した四人を捨てたではないか?」
 「捨てられたの間違いですよ先生。俺は捨てていませんし、もし彼等が頭を下げてここまで来たら助けますよ。一度は許してあげるのが俺のモットーです」
 「フッ、言う様になったのう。まぁ今四人も女子を囲っていて関係も良好。最初から女子四人を召喚し自分はリードするというのが正解だったのかもしれんのう」
 「ですね。でもそれはあの四人で失敗して実感した事ですので」
 「じゃの。それで今の四人でどうする?一応世界を平和にして戻るなんて言ってたが何か方法でも考えているのか?」

 世界を平和にか……この世界に来て色々知った今では魔王を倒すよりももっといい方法を思いついている。最早魔王討伐等してもしなくてもどっちでもいい。

 「ええ、あの四人と共にそれを実現して見せましょう」
 「四人に魔王でも倒させる気か?」
 「まさか、四人がそれを望むならともかく強要する気はないですよ」

 鍵はクリスタル。後はリンドヴルムクラスの厄災は自ら葬るだけ。あのクラスだとこの世界の人々では倒すには荷が重い。何体いるか知らないがリンドヴルムは我等と言っていたし一体二体ではないだろう。封印されているのもいるだろうしそれも探さないといけないな。

 「なるほど……お主のやり方に口を出すつもりはない。好きにやるがいい」
 「感謝します。というか今回は何用で?」
 「本題からそれてしまっていたな。周平に頼んでいたのをどうする?一応勇者達に第七位階の伝授というのを頼んでいたはず」
 「あ、そうでしたね」

 当初はアテノアのコクトウ山脈にて同じ二十柱であり親友の周平から勇者達に第七位階魔法の伝授というイベントを用意していた。だがそれも今となってはという感じだ。

 「迷うとこですね。もし彼等がそこに辿り着いた時の事を考えるといないと不自然です。ですが俺がいない状態で周平を待たすのも少し気が引けます」
 「ならお前達もそこに行けばよかろう。周平の方にはワシからも言っておく」
 「わかりました」

 わざわざこれだけの為に来るのは向こうでよほど暇しているのだろうか。散歩ついでに顔を見に来たのだろう。

 「うむ、それで他に何かあるか?」
 「あ、一つ聞きたい事がありましたね」
 
 リンドヴルムが言っていたクリするを作ったというこの世界の神についてだ。千年以上生きているこの爺さんなら知っているかもしれない。

 「この世界にクリスタルを作ったとかいう神がいるらしいんですけど何かご存知ですか?」
 「神?我等を前にして随分と傲慢な存在がいるのじゃな」
 「いや現在いるかは知りませんが昔はいたみたいで心当たりがあればなと」
 「いや知らんな。ただ少なくとも我等クラスの存在ではない事は確かだ。もしそんなのがいれば我等が王がわからない訳がないからな」
 「確かに」

 やはり知らないか。ホッとする反面残念だが、知らないというのは俺達にとっての脅威ではないという事。王は宇宙全体である一定以上の力については全て把握している。知らないというのはそれ以下もしくは現在がいないという事だ。

 「じゃがこの世界のクリスタルの力は、そこら辺の人一人が持つには荷が重すぎるには間違いない。それを作った存在というのもただの人ではないのは明白」
 「ですね。そこら辺は調査してまだ存在しているようならコンタクトをとります」
 「うむ、それとパンドラには気をつけるのじゃ」
 「はい」

 パンドラ……ここにはいないといいが警戒しないといけない案件の一つだ。まだこっちでは見ていないしいない確率の方が高いがそれを過信してはいけない。あれは下手をすれば世界を滅ぼす。
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感想 69

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みんなの感想(69件)

ゆき
2020.06.14 ゆき

加護のある属性しか使えないってあるけど、二人がいずれ全部揃えたいって言ってるのは、後から増やせるのですか?

解除
DEATH★13
2020.05.18 DEATH★13

久しぶりに感想送らせて頂きます。

この作品の時系列的に前の話、ジンの召喚勇者時代の話で作中にも出た周平が主人公の話が、現在「なろう」の方で連載投稿中なのを確認させていただいております。
そちらの方が一段落、区切りにでもなったときに是非ともこちらの作品も更新をお願いしたいと思います。
作者様の方でも優先順位、時系列的にもそちらの方を完結させてというのもあるかも知れませんが、こちらの作品も好きで更新を心待ちにしている読者が一人でもいるというのもご理解いただければと思います。

場合によっては、この作品も「なろう」でもあげていただいてもいいと思います。

今は社会的にも大変な時期ですが、体調的にも御自愛していただき、執筆頑張ってください。

この作品の更新も楽しみにしております。
失礼します。

解除
紅林
2019.02.23 紅林

あのー
最近更新されていないようですが、大丈夫でしょうか?

解除

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