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1章
5話:疑問
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基本一人でのトレーニングを行いつつ夜は図書館の本を読み漁り完全記憶という俺の異能を生かして知識を吸収、単独での行動をしていた。
許可も出ていたし文句を言うやつもいなかったからな。
だが一週間を過ぎた頃からクラスメイトとの模擬戦闘が始まった。
クラスメイトと模擬戦闘などした所で意味ないのでスルーしようとしたがそれを待ってましたと言わんばかりに菱田達は俺を捕まえ無理やり模擬戦を挑んできた。
面倒なのでまとめてなんて言ったらマジギレだった。
どうなっても知らねぇぞなんて言ってたがそっくりそのまま返してやる。
そして今三対一という状況での模擬戦をしているが向かってくる三人の攻撃は遅く軟弱で欠伸がでるほどだ。
クラスメイトの大半は見てみぬふりしながらも俺が殺られるのを楽しみにしているに違いない。
「どうした神山!そんなんじゃ魔王は倒せねぇぞ!」
地球にいた頃も負けなかっただろうが今じゃ余裕……あんまり弱い者いじめをするようなことはしたくないんだよな……どうやって終わらせるか……
鬱陶しい……見せしめに痛めつけてやろうか。
「おらいくぞ!痛みを教えてやるぜ!」
とりあえず受け止めてから溝に一発いれとくか。
菱田の拳をまず手で受け止め菱田の耳元で囁く。
「力の差を教えてやるよ……」
右ストレートで鳩尾しようと腕を振る、がら空きのその溝に一発いれれば菱田は数メートルほど吹き飛び戦闘不能だ。
あばよ……これでてめぇにデカい口は開かせねぇ。
だが拳が菱田に当たるその瞬間、頭痛が走り攻撃を止める。
「うっ……」
何かの記憶のようなものが頭に浮かび上がる、俺ぐらいの年の男が俺に立ち向かってきた時のものだ。
「隼人君!」
「チッ……」
二人が援護攻撃をしてきたのでそれを避ける為に菱田から離れる。
「今のは……」
頭痛が治まる、何だったんだ。
「てめぇ何のつもりだ……」
菱田が何かを言いたげな表情でこちらを睨み付ける。
おそらく寸止めされたように感じたはずだ、こっちとしてあのまま吹き飛ばしたかったぐらいだ。
「何をやっているの!」
ここで月島と杉原が止めに入る。
どうやらこの模擬戦はこれで終いだな、少し惜しいがしょうがないな……
「これはどういうことかしら?」
杉原が強い口調で菱田達三人に言う。
「大丈夫周平君?」
月島は俺の元に寄りハンカチで俺の頬を拭く。
「ああ、なんとかな」
「怪我はない?」
「大丈夫だよ」
今はこの体だ、この程度じゃ傷をつくはずもない。
しかし高校に入ってからこの二人にはよく迷惑をかけていたがこっちの世界きてもそれは引き続き継続だな。
「ちょっと神山にトレーニングをだな……」
菱田はバツが悪そうに言う。
「そ、そうトーニングですよ~」
「神山を鍛えようと思ってな、ははっ」
取り巻きの二人もバツが悪そうな顔で言う。
あん時変な頭痛さえなければ今頃伸びていたはずだったんだが……
「こんなのはトレーニングとは言わないわ!」
杉原は三人に対して怒る。
「そうよ、こんなのただのいじめだわ!これから周平君は私たちと訓練するから」
月島も杉原同様三人に怒る、まぁステータス的には逆だが傍から見たら三対一だから俺に対するいじめになるな。
しかし二人は本当に優しいな。
でもトレーニングは一人で……
「そうだね、これはただのいじめだ」
二人に感動していると男の声が聞こえてくる。
聞きたくないない声と共に続いて後ろから嶋田と木幡がやってきた。
どうやら四人で訓練をしていたようだ。
「少し反省するべきだな、俺達は同じクラスメイトだ。みんなで元の世界に戻るために亀裂を生むわけにはいかないだろ?」
この二人に睨まれ菱田達三人は逃げるように離れた。
助けようとしてくれたのは嬉しいし感謝はしているが月島と杉原はともかくこの2人の世話にはあまりなりたくない。
「大丈夫、周平君」
「ああ、もう大丈夫だ。ありがとう月島」
月島の俺を本気で心配するこの姿こそがこのクラスで俺を妬みいじめに発展した理由なのだろう。
まぁ原因となった事件は別にあるわけだが……
◇
成り行きで俺は四人に混ぜてもらい一緒に訓練することになった。
正直男二人はよく思わないだろうが二人が俺に言ったことだし空気読めはなしでお願いな。
俺だって本当は個人がいいんだ。
さっそく五人で訓練を始めると杉原が俺の話題を出し始めた。
「しかし周平君も災難だね~こっち来てもあんなのに絡まれてさ~」
ほんとそれな……無視してくれた方がまだ楽だわ。
「本当だよ~一人じゃ勝てないからって三人で来るし面倒な奴らだよ」
また来るようならボコボコにして二度とデカい口を叩けなくするだけだがね。
「神山の普段の言動が気に入らないんだろうな~」
木幡が言う。
確かにここに来る前も来てからも自由気ままに生活してるけどお前は黙ってろ。
笑いながら言っているがそもそも木幡は俺に対していい感情はない……さてどうなることやら。
「周平君は地球でもここでも万能超人だし妬んでるだけだと思うよ、周平君は自由だけど人に迷惑とかかけてなかったし」
月島のナイスフォローが入るが嶋田がそのフォローを潰す。
「いや神山の普段の言動も人によっては不快に思った奴もいる……クラスでの協調性のなさは少なからず迷惑になった奴もいるはずだ」
そこまでは知らんわ、というか俺を外しといてその言い草はどの口が言うのだろうか……
だがこいつは悪人ではない正義マンだししょうがないか。
まぁ月島に気があるみたいで俺のことは邪魔なんだろうというのは前から感じているがな。
月島と杉原の目があるので極力邪魔にならないかつ四人から離れないように訓練を始めた。
結局動きのキレやくせなどを指摘したりと嶋田や木幡ともそれなりに馴染んだのであった。
以後は二人に捕まる形で四人と一緒に訓練をする羽目になったがおかげか他のクラスメイトのだるい絡みはなくなり菱田達も絡んでくることもなかった。
◇
二週間の月日が流れこちらの世界にきて三週間目の話だ。
一緒に訓練をしていた四人はタピット騎士団長代理に連れられて迷宮攻略を始めのだ。
四人と+菱田は成長が特に早かったので迷宮攻略にいち早く参加させられたのだ。
ちなみに俺はその間は一人図書館に逃げて本を読み漁った。
本によると迷宮とは神が作った試練で四つの迷宮を攻略するとその最下層にはたくさんの財宝があるとされている。
いずれはソロ攻略だな……
他にも読んでいて俺がもっとも気になったのは勇者召喚だ。
勇者召喚を行ったダーレー教だが俺はこの宗教が胡散臭いものだと感じていた。
ファラリス連邦とファーガス王国が国教と定め人間族の大半が進行しているダーレー教だが、妖精族や魔族が信仰している宗教は別にあるしそれで世界のとらえ方が違う。
魔族の信仰しているバイアリー教は、迷宮は神殺しが作ったなどと書いてある。
それらを知り俺はそもそも元の世界に本当に戻れるのかという疑問を常に抱いている。
魔王を倒したら神が元の世界に戻してくれるのか?
仮に魔王を倒してもほかの魔族が生きていてまた魔王が誕生したら?
魔族の殲滅が条件だとしたらたぶん年数的に戻れないだろう。
図書館では閲覧禁止の棚にまでこっそり手をだし読んだ結果改めてこの国は胡散臭いという結論がでた。
早いとここを離れて世界を旅したい……そんなことを考えていた毎日だったがとある日の夜外に出て城の中庭で考え事をしている時のことだった。
「やっほー」
俺の元に来たのは月島だ。
月島雪は右目の下にある泣き黒子がチャームポイントだ、黒髪のセミロングでスタイルがよく顔も整っている上、頭もいいクラスの学級委員長だ。
地球にいた時は1日に何人もの男がアタックをしては玉砕にあっていた、そんな月島と仲良くなったのも1年生の時のある出来事があってこそだ。
「おう、こんな時間にどうした?」
「周平君がでていくのを確認したから後をつけたのであります」
こんな美人にストーカーされるなんて悪くないな。
「ははっ、そうか。何か用でもあったか?」
「最近どうかなって?また菱田君たちにやられたりとこしてない?」
全く月島は心配性だな。
「心配性だなお前も、最近は大丈夫だよ。というかあん時も普通に三人倒せたしな」
「フフッ、三人に囲まれてたのに傷一つない周平君に対しダメージを追っていた三人を見てそんな感じはしてたけど邪魔しちゃったね~」
「いやいや、月島の心使いの方が嬉しいよ、あんなのいつでも倒せるからな」
ここ最近は月島や杉原に加えて嶋田もガードしてくれているだけあってちょっかいはなくなったのだ、ボコボコにする機会がなくなったのは残念だがその分面倒が減ったと思えばいいだろう。
「でもほんと周平君は凄いよね。私たちの癖とか動き見て指摘できちゃうんだから。凄い洞察力だよ」
「ははっ、そんなことはないよ。俺なんて大したことないし」
訓練では四人の動きを見て弱い点や癖などを指摘していた、結果月島や杉原の手助けになっただろう。
「周平君はどこにいっても凄いよ~私が保証する」
「ありがとな」
序盤でこれだけ実力差があると自分にもそういう自覚がでてきてしまう……慢心はいけないがこの能力をくれた神様に感謝だな。
それから2人でたわいもない話をした。
去年の昔話やお互いの過去、今後の話なんかをした。
他のクラスメイト……特に嶋田は今の俺の位置にいたいだろうなと優越感に浸る。
「陣は元気にしてるかな?」
思い出話をしているうちに陣の名前がでてきた。
あいつもこの世界に来ているんだし早く合流したい。
「陣君もきっと元気にしているよ、同じ世界に来ているんだしまた会えるよ。だからこれからも一緒に頑張ろうね」
月島にそんなこと言われて頑張らない奴はいないはずだ。
俺も頑張らねばな。
「ああ、そうだな。しかしほんと月が綺麗だ……」
「うん、綺麗な満月だね」
この世界にきて初めての満月だ。
満月の光に照らされて月島より美しく見えた。
でも俺はこんな時でもあいつのことを思い出してしまう……あいつが今ここにいたらもっと俺を惹き付けるに違いない。
もし神様がこの能力を持って何か試練を課しているのだとしたら俺はそれをクリアすべきなのだろう。
なんにせよ絶対に死ぬわけにはいかない……意地でも生き抜いてやるさ。
「明日からのクラス全員での迷宮入りだね」
明日はクラス全員での迷宮攻略……腕がなるな。
「俺もたまにはクラスに貢献するか……」
「ふふっ、そうだね。周平君には期待しかないから明日危なくなったら助けてね」
月島にそんなこと言われたら気合が入っちゃうな、月島や杉原は何があっても守らないとだな。
目を輝かせ俺に期待の眼差しを向ける女の子の気持ちに応えないとか陣にぶん殴られちゃうな。
まぁいずれは月島や杉原にはこの能力を話して一緒にここを出る方向に持っていきたい。
「ああ、でも月島も頼りにしてるよ。あいつが失踪してから色々助けられたからな……」
俺の片割れであったあいつ……お前がいればなと何度思ってきたことやら。
あの失踪から少しづつ俺の時は動き始めていたが依然忘れることはできなかった。
「それは言わない約束よ。それに助けられたのは私もだから」
まぁ確かに月島の助けになることをしてきた自負はあるな。
あの時俺達は互いに依存し助け会ったのだから。
「ああ、そうだったな。ごめんごめん」
二人で話していると杉原が俺達の元に来た。
「ああ!いないと思ったらこんなところにいたのね雪、しかも周平君と二人きりなんて」
杉原は少しムッとした表情だ。
杉原美里は月島に続く美女で、二年生でナンバー二の美女だ。
茶髪に髪を後ろで結わいているスポーティーな女の子で大きな胸が特徴で去年は陣を含む四人でよくつるんでいた。
「おう、杉原」
「ふふっ、こんばんは周平君、私も呼んでほしかったな~」
杉原は少し嫌味っぽく言う。
「ごめんね美里ちゃん、たまたま外にでる周平君見かけたからつい」
「ああ、別にいいのよ、ただ周平君は私と密会なんかしてくれないからね~」
杉原は笑いながら俺をジト目で見る。
「ははっ、じゃあ今度一緒に夜のデートでもするかい?」
俺は半分冗談も交えて杉原を誘う。
「本当!じゃ今度楽しみにしてるね~」
半分冗談を交えた約束をすると月島は少し焦ったのかあたふたする。
「美里ちゃんそれは抜けがけだよ~」
「先に抜け駆けしたのは雪だもんね~」
これに陣がいたら去年の楽しい日常だったな。
「そろそろ寝るか、また後日話そうぜ」
ここで三人で話を始めたら寝る時間が無くなっちまう。
「ああ、そうね。というか私夜更かししている雪を連れもどしに来たんだった」
「それじゃあ戻ろうか」
三人は部屋へと戻っていった。
◇
満月の夜三人が外で仲良く話をして部屋へ帰って行く姿は果たして何人が見ていたのであろうか。
少なくとも五人はそれを見ていた。
嫉妬が増幅し醜い争いへと発展していくのをこの時の周平はわからずにいた。
周平と雪の間には恋愛感情とは違う絆があることもクラスメイトは知らないのだ。
許可も出ていたし文句を言うやつもいなかったからな。
だが一週間を過ぎた頃からクラスメイトとの模擬戦闘が始まった。
クラスメイトと模擬戦闘などした所で意味ないのでスルーしようとしたがそれを待ってましたと言わんばかりに菱田達は俺を捕まえ無理やり模擬戦を挑んできた。
面倒なのでまとめてなんて言ったらマジギレだった。
どうなっても知らねぇぞなんて言ってたがそっくりそのまま返してやる。
そして今三対一という状況での模擬戦をしているが向かってくる三人の攻撃は遅く軟弱で欠伸がでるほどだ。
クラスメイトの大半は見てみぬふりしながらも俺が殺られるのを楽しみにしているに違いない。
「どうした神山!そんなんじゃ魔王は倒せねぇぞ!」
地球にいた頃も負けなかっただろうが今じゃ余裕……あんまり弱い者いじめをするようなことはしたくないんだよな……どうやって終わらせるか……
鬱陶しい……見せしめに痛めつけてやろうか。
「おらいくぞ!痛みを教えてやるぜ!」
とりあえず受け止めてから溝に一発いれとくか。
菱田の拳をまず手で受け止め菱田の耳元で囁く。
「力の差を教えてやるよ……」
右ストレートで鳩尾しようと腕を振る、がら空きのその溝に一発いれれば菱田は数メートルほど吹き飛び戦闘不能だ。
あばよ……これでてめぇにデカい口は開かせねぇ。
だが拳が菱田に当たるその瞬間、頭痛が走り攻撃を止める。
「うっ……」
何かの記憶のようなものが頭に浮かび上がる、俺ぐらいの年の男が俺に立ち向かってきた時のものだ。
「隼人君!」
「チッ……」
二人が援護攻撃をしてきたのでそれを避ける為に菱田から離れる。
「今のは……」
頭痛が治まる、何だったんだ。
「てめぇ何のつもりだ……」
菱田が何かを言いたげな表情でこちらを睨み付ける。
おそらく寸止めされたように感じたはずだ、こっちとしてあのまま吹き飛ばしたかったぐらいだ。
「何をやっているの!」
ここで月島と杉原が止めに入る。
どうやらこの模擬戦はこれで終いだな、少し惜しいがしょうがないな……
「これはどういうことかしら?」
杉原が強い口調で菱田達三人に言う。
「大丈夫周平君?」
月島は俺の元に寄りハンカチで俺の頬を拭く。
「ああ、なんとかな」
「怪我はない?」
「大丈夫だよ」
今はこの体だ、この程度じゃ傷をつくはずもない。
しかし高校に入ってからこの二人にはよく迷惑をかけていたがこっちの世界きてもそれは引き続き継続だな。
「ちょっと神山にトレーニングをだな……」
菱田はバツが悪そうに言う。
「そ、そうトーニングですよ~」
「神山を鍛えようと思ってな、ははっ」
取り巻きの二人もバツが悪そうな顔で言う。
あん時変な頭痛さえなければ今頃伸びていたはずだったんだが……
「こんなのはトレーニングとは言わないわ!」
杉原は三人に対して怒る。
「そうよ、こんなのただのいじめだわ!これから周平君は私たちと訓練するから」
月島も杉原同様三人に怒る、まぁステータス的には逆だが傍から見たら三対一だから俺に対するいじめになるな。
しかし二人は本当に優しいな。
でもトレーニングは一人で……
「そうだね、これはただのいじめだ」
二人に感動していると男の声が聞こえてくる。
聞きたくないない声と共に続いて後ろから嶋田と木幡がやってきた。
どうやら四人で訓練をしていたようだ。
「少し反省するべきだな、俺達は同じクラスメイトだ。みんなで元の世界に戻るために亀裂を生むわけにはいかないだろ?」
この二人に睨まれ菱田達三人は逃げるように離れた。
助けようとしてくれたのは嬉しいし感謝はしているが月島と杉原はともかくこの2人の世話にはあまりなりたくない。
「大丈夫、周平君」
「ああ、もう大丈夫だ。ありがとう月島」
月島の俺を本気で心配するこの姿こそがこのクラスで俺を妬みいじめに発展した理由なのだろう。
まぁ原因となった事件は別にあるわけだが……
◇
成り行きで俺は四人に混ぜてもらい一緒に訓練することになった。
正直男二人はよく思わないだろうが二人が俺に言ったことだし空気読めはなしでお願いな。
俺だって本当は個人がいいんだ。
さっそく五人で訓練を始めると杉原が俺の話題を出し始めた。
「しかし周平君も災難だね~こっち来てもあんなのに絡まれてさ~」
ほんとそれな……無視してくれた方がまだ楽だわ。
「本当だよ~一人じゃ勝てないからって三人で来るし面倒な奴らだよ」
また来るようならボコボコにして二度とデカい口を叩けなくするだけだがね。
「神山の普段の言動が気に入らないんだろうな~」
木幡が言う。
確かにここに来る前も来てからも自由気ままに生活してるけどお前は黙ってろ。
笑いながら言っているがそもそも木幡は俺に対していい感情はない……さてどうなることやら。
「周平君は地球でもここでも万能超人だし妬んでるだけだと思うよ、周平君は自由だけど人に迷惑とかかけてなかったし」
月島のナイスフォローが入るが嶋田がそのフォローを潰す。
「いや神山の普段の言動も人によっては不快に思った奴もいる……クラスでの協調性のなさは少なからず迷惑になった奴もいるはずだ」
そこまでは知らんわ、というか俺を外しといてその言い草はどの口が言うのだろうか……
だがこいつは悪人ではない正義マンだししょうがないか。
まぁ月島に気があるみたいで俺のことは邪魔なんだろうというのは前から感じているがな。
月島と杉原の目があるので極力邪魔にならないかつ四人から離れないように訓練を始めた。
結局動きのキレやくせなどを指摘したりと嶋田や木幡ともそれなりに馴染んだのであった。
以後は二人に捕まる形で四人と一緒に訓練をする羽目になったがおかげか他のクラスメイトのだるい絡みはなくなり菱田達も絡んでくることもなかった。
◇
二週間の月日が流れこちらの世界にきて三週間目の話だ。
一緒に訓練をしていた四人はタピット騎士団長代理に連れられて迷宮攻略を始めのだ。
四人と+菱田は成長が特に早かったので迷宮攻略にいち早く参加させられたのだ。
ちなみに俺はその間は一人図書館に逃げて本を読み漁った。
本によると迷宮とは神が作った試練で四つの迷宮を攻略するとその最下層にはたくさんの財宝があるとされている。
いずれはソロ攻略だな……
他にも読んでいて俺がもっとも気になったのは勇者召喚だ。
勇者召喚を行ったダーレー教だが俺はこの宗教が胡散臭いものだと感じていた。
ファラリス連邦とファーガス王国が国教と定め人間族の大半が進行しているダーレー教だが、妖精族や魔族が信仰している宗教は別にあるしそれで世界のとらえ方が違う。
魔族の信仰しているバイアリー教は、迷宮は神殺しが作ったなどと書いてある。
それらを知り俺はそもそも元の世界に本当に戻れるのかという疑問を常に抱いている。
魔王を倒したら神が元の世界に戻してくれるのか?
仮に魔王を倒してもほかの魔族が生きていてまた魔王が誕生したら?
魔族の殲滅が条件だとしたらたぶん年数的に戻れないだろう。
図書館では閲覧禁止の棚にまでこっそり手をだし読んだ結果改めてこの国は胡散臭いという結論がでた。
早いとここを離れて世界を旅したい……そんなことを考えていた毎日だったがとある日の夜外に出て城の中庭で考え事をしている時のことだった。
「やっほー」
俺の元に来たのは月島だ。
月島雪は右目の下にある泣き黒子がチャームポイントだ、黒髪のセミロングでスタイルがよく顔も整っている上、頭もいいクラスの学級委員長だ。
地球にいた時は1日に何人もの男がアタックをしては玉砕にあっていた、そんな月島と仲良くなったのも1年生の時のある出来事があってこそだ。
「おう、こんな時間にどうした?」
「周平君がでていくのを確認したから後をつけたのであります」
こんな美人にストーカーされるなんて悪くないな。
「ははっ、そうか。何か用でもあったか?」
「最近どうかなって?また菱田君たちにやられたりとこしてない?」
全く月島は心配性だな。
「心配性だなお前も、最近は大丈夫だよ。というかあん時も普通に三人倒せたしな」
「フフッ、三人に囲まれてたのに傷一つない周平君に対しダメージを追っていた三人を見てそんな感じはしてたけど邪魔しちゃったね~」
「いやいや、月島の心使いの方が嬉しいよ、あんなのいつでも倒せるからな」
ここ最近は月島や杉原に加えて嶋田もガードしてくれているだけあってちょっかいはなくなったのだ、ボコボコにする機会がなくなったのは残念だがその分面倒が減ったと思えばいいだろう。
「でもほんと周平君は凄いよね。私たちの癖とか動き見て指摘できちゃうんだから。凄い洞察力だよ」
「ははっ、そんなことはないよ。俺なんて大したことないし」
訓練では四人の動きを見て弱い点や癖などを指摘していた、結果月島や杉原の手助けになっただろう。
「周平君はどこにいっても凄いよ~私が保証する」
「ありがとな」
序盤でこれだけ実力差があると自分にもそういう自覚がでてきてしまう……慢心はいけないがこの能力をくれた神様に感謝だな。
それから2人でたわいもない話をした。
去年の昔話やお互いの過去、今後の話なんかをした。
他のクラスメイト……特に嶋田は今の俺の位置にいたいだろうなと優越感に浸る。
「陣は元気にしてるかな?」
思い出話をしているうちに陣の名前がでてきた。
あいつもこの世界に来ているんだし早く合流したい。
「陣君もきっと元気にしているよ、同じ世界に来ているんだしまた会えるよ。だからこれからも一緒に頑張ろうね」
月島にそんなこと言われて頑張らない奴はいないはずだ。
俺も頑張らねばな。
「ああ、そうだな。しかしほんと月が綺麗だ……」
「うん、綺麗な満月だね」
この世界にきて初めての満月だ。
満月の光に照らされて月島より美しく見えた。
でも俺はこんな時でもあいつのことを思い出してしまう……あいつが今ここにいたらもっと俺を惹き付けるに違いない。
もし神様がこの能力を持って何か試練を課しているのだとしたら俺はそれをクリアすべきなのだろう。
なんにせよ絶対に死ぬわけにはいかない……意地でも生き抜いてやるさ。
「明日からのクラス全員での迷宮入りだね」
明日はクラス全員での迷宮攻略……腕がなるな。
「俺もたまにはクラスに貢献するか……」
「ふふっ、そうだね。周平君には期待しかないから明日危なくなったら助けてね」
月島にそんなこと言われたら気合が入っちゃうな、月島や杉原は何があっても守らないとだな。
目を輝かせ俺に期待の眼差しを向ける女の子の気持ちに応えないとか陣にぶん殴られちゃうな。
まぁいずれは月島や杉原にはこの能力を話して一緒にここを出る方向に持っていきたい。
「ああ、でも月島も頼りにしてるよ。あいつが失踪してから色々助けられたからな……」
俺の片割れであったあいつ……お前がいればなと何度思ってきたことやら。
あの失踪から少しづつ俺の時は動き始めていたが依然忘れることはできなかった。
「それは言わない約束よ。それに助けられたのは私もだから」
まぁ確かに月島の助けになることをしてきた自負はあるな。
あの時俺達は互いに依存し助け会ったのだから。
「ああ、そうだったな。ごめんごめん」
二人で話していると杉原が俺達の元に来た。
「ああ!いないと思ったらこんなところにいたのね雪、しかも周平君と二人きりなんて」
杉原は少しムッとした表情だ。
杉原美里は月島に続く美女で、二年生でナンバー二の美女だ。
茶髪に髪を後ろで結わいているスポーティーな女の子で大きな胸が特徴で去年は陣を含む四人でよくつるんでいた。
「おう、杉原」
「ふふっ、こんばんは周平君、私も呼んでほしかったな~」
杉原は少し嫌味っぽく言う。
「ごめんね美里ちゃん、たまたま外にでる周平君見かけたからつい」
「ああ、別にいいのよ、ただ周平君は私と密会なんかしてくれないからね~」
杉原は笑いながら俺をジト目で見る。
「ははっ、じゃあ今度一緒に夜のデートでもするかい?」
俺は半分冗談も交えて杉原を誘う。
「本当!じゃ今度楽しみにしてるね~」
半分冗談を交えた約束をすると月島は少し焦ったのかあたふたする。
「美里ちゃんそれは抜けがけだよ~」
「先に抜け駆けしたのは雪だもんね~」
これに陣がいたら去年の楽しい日常だったな。
「そろそろ寝るか、また後日話そうぜ」
ここで三人で話を始めたら寝る時間が無くなっちまう。
「ああ、そうね。というか私夜更かししている雪を連れもどしに来たんだった」
「それじゃあ戻ろうか」
三人は部屋へと戻っていった。
◇
満月の夜三人が外で仲良く話をして部屋へ帰って行く姿は果たして何人が見ていたのであろうか。
少なくとも五人はそれを見ていた。
嫉妬が増幅し醜い争いへと発展していくのをこの時の周平はわからずにいた。
周平と雪の間には恋愛感情とは違う絆があることもクラスメイトは知らないのだ。
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「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
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