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2章

43話:思わぬ発見

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 「それじゃあまた……」
 「うん、じゃあね」
 「今度お茶でもしよ!」
 「ええ」

 伝えるべき話のみを伝え、互いに笑みを交わし立花はレストランを後にした。去ると同時に石化が解けると、嶋田や木幡は慌てるように立ち上がった。

 「あいつはどこだ!?」
 「わからないわ……最後はそのまま店を去ったわ……」
 「私達も何も出来なくて……」

 勿論話をしたことは内緒だ。立花に色々言われたせいか、嶋田は憔悴しきっている。それだけ彼女の言葉は重かったのだ。言われたのが他のクラスメイトとかであれば言い返し、自分を偽りうまく解釈したのだろう……しかしあのすべてを見透かすようなあの眼の前ではそれはできなかった。


 ◇


 四人の前から姿を消した立花は、今度は城への侵入をしようとしていた。

 「フフッン~」

 鼻歌を混じらせながら店を出た。二人は話した感じ、私と会わない感じはなかった。あれなら認めてあげてもいいだろう。

 「フフッ……でも雪はいったいどういう人生を歩んできたのかしらね……」

 周平があれだけ信頼していたのだ。それにはそれ相応の理由があるはず……ぜひ知りたいものだわ。

 「さて次は城への潜入ね」

 城潜入のために、認識阻害の異能に加えて創生魔法のブライアムの影というのを使用し、姿と気配を消し何喰わぬ顔で城内を探索する。これは姿と気配を消す魔法だが、普通の魔法では気付かれたりしてしまう為にこちらを使用している。城に気になった気配があったのだ。

 さてクラスメイトの顔やお偉方の顔をチェック。

 王座では王や上官と思われる貴族が話をしていた。どうやら悪い話のようだ。

 「地下牢の守りは万全か?」
 「問題ありませんぞ、あれは眠ったままです」
 「そうか……あれが目を覚めれば勇者達の士気にかかわるかもしれぬ。我々を嗅ぎまわっているやつらもいるし油断はするな」
 「もちろんわかっております。勇者には魔族の殲滅のために動いてもらわなければなりませんからな」

 人間の野望の為に魔族を倒す為に召喚された勇者……元の世界に戻る為に奮闘する勇者達……全く実に不快だわ。

 「ふふっ、たくさんの犠牲のもと得た魔力で召喚だからのう。それに見合ったものを見せてもらわねばならんからのう」
 「もう二人も消えましたからな。かつての勇者召喚と比べ、たくさんの勇者を召喚できる反面、そういったことの起こる確率も上がりますゆえ致し方ないかと」
 「うむ、まだ主力メンバーは残っておる。これ以上は減らんように頼むぞ」

 まったく吐き気がするほど不愉快なこと……今ここで殺してやりたいとこだわ……

 しかしこの男にはまだ死んでもらっては困る。この男は利用価値があるだろうし、もっとひどい形で落ちてもらわなければならないからだ。

 こいつら謀略が私に筒抜けなのなんて死んでもわからないのでしょうね。

 「とりあえず今は嶋田浩二を含むあの四人を中心に育成するようタピットに言っておけ。迷宮の三〇〇層攻略が終わったら魔大陸への侵攻の準備だ!」

 とりあえずここ来た時は定期的に来て調査ね。今はバニラの育成プログラムがまだ終わってないからあれだけど、勇者達がいるまでは見ておく必要がある。

 気になった地下牢へと足を運んだ。地下に続く道は鍵がかかっていたが、衛兵に催眠術をかけ衛兵に鍵を開けさせる。そこには軽犯罪をおかした者等が収容されていた。

 ここじゃない……もっと奥ね……

 もっと奥に向かうと魔力のこめた鍵がいくつもかかった扉を見つけた。

 これは複雑ね……ぶち破るのは簡単だけどさすがにばれるか……

 少し考え解除方法を模索する。

 魔法を無力化する第十位階魔法のハマジクを発動させるとして……それを悟らせないよう別の魔法をかけるか…とりあえず王の書でこの解除方法を解析するか……

 王の書でこの鍵の解除方法を解析し、その後創生魔法レキシントンの壁を発動する。これは一定空間の外部からの魔力の流れや、動きの情報を一切遮断する魔法で、その状態でハマジクを使用し魔力効果のついた鍵を解除する。創生魔法があれば都合のいい事も出来てしまう。何しろ発動後の魔力反応が引っ掛からない。

 「ちょろいわね」

 奥に進むとそこには厳重な檻が何層にも張り巡らされた場所だった。

 「これはハマジクの檻……どうしてこんなところに……」

 ハマジクの檻の鍵を無理やりこじ開け中に入る。

 これはだるいわね……

 ハマジクの檻は純粋に同じハマジクが付与された鍵で開ける以外は、無理やり破壊するしかない。ただ開けるにしても、ハマジクを付与するのではなく、その檻の特性を見極めた上でそれに合うように付与する必要がある。それができるのは世界でも皆無であるため、ハマジクの檻は神の遺物とされる伝説級の魔具なのだ。もっとも創生魔法の前では関係ない。

 少し時間がかかったものの解除に成功した。

 「さて何があるのかしら?」

 さらに奥へ進むとそこには男がいた。見た所眠っているみたいだが、近づくとバリアのようなものが発動する、というかこの男は……

 「神物理障壁と神魔障壁か……まったく暢気なものね実。てっきりあんとき死んだものだと思っていたけど……転生せず生きていたのね」

 天竜院実てんりゅういんみのる……初代勇者にして歴代勇者最強の男。災厄の英雄デス・ディザスターと呼ばれた居合の達人で、周平の最初の弟子でもある。

 まさかここにいるとは……だけどこれは少し厄介ね……

 「ハァァァァ!」

 バリアに向かって魔力を込め、徐々にバリアを破壊していく。次第にそのバリアは、弱くなり破壊した。

 「ふはぁ~長いこと寝てたいた気分だ……うん……ここは?」

 バリアがなくなったことで完全に目が覚めたようだ。

 「お目覚めかしら実?」
 「り、立花さん!なんで……というかここはどこ?というか檻?」

 自体が呑み込めないのか、キョロキョロと周辺を見渡す。

 「あなたなんでここで寝ているのかわかってないのかしら?」
 「たしかあんとき心臓を突き刺されて……横で九十九ちゃんが泣いていて……」
 「落ち着きなさい実。ここはあなたが心臓を貫かれてから百年ちょいがたっているわ」
 「百年?つまり瀕死だった俺は百年ほど眠ってたのか……」

 状況を理解していない実に今の自分の状況を伝える。転生した自分は同じく転生した周平と二人で旅をしていることや、今生存が確認されているメンバーの話をした。

 「そうか……あの戦いはどうなったのか覚えてる?」
 「私が死んだ時点では戦いは終わってなかった。ただ勝利目前ではあったけどね。あの時点では騎士団もㇾダさん、九兵衛さん、ロードリオンしかまともに動けるメンバーはいなかったけどたぶん勝利で終わったんだと思うわ。だからそれを九兵衛さんに会って確かめる所よ」

 あの時偽神と相打ちをして私は死んだ。偽神が表にでてきていない現状、あの戦争は私たちの勝利はほぼ間違いない。だがまだ推測でしか語れない部分が多くまだまだ聞きたいことはたくさんあるのだ。

 「そうなんだ、周平さんと一緒に旅してる立花さんについていくのは気が引けるけどとりあえずついて行っていい?」
 「ええ、かまわないわ。あなたがいても私たちはイチャイチャするし何の問題もないもの」

 それを聞き実は苦笑いをする。そんな実の笑い顔を久しぶりに見て懐かしく感じる。一三人で神殺しの戦争をした時から百年ちょっと……私は百年待ったわけではないけど実際に百年待ち続けているメンバーもいるはず。

 早くみんなと再会したいわね。他のみんなは元気にしてるかしら?

 「さてここからでましょうか」
 「ああそうだね、そういえばここはどこ?」
 「ファーガス城の地下牢よ」

 それを聞いた実は温厚な表情から一転、怒りをあらわにする。

 「ファーガス城……なぜ俺がファーガス城で眠っている?なぜこの国はまだのうのうと存在しているの?あの時ここも潰すはずだったよね?」

 殺気を牢屋全体に張り巡らせる。

 「それは私もわからないわ。忘れていたけどあなたはこの王国にたいしてはそうだったわね……」

 初代勇者としてファーガス王国に召喚され、数々の功績をあげたものの裏切られ、自身も死にかけた。私たちが彼を仲間にいれたのはその時だ。実の絶望と狂気に満ちた目を元に戻すのには周平も苦労していたのを覚えている。

 「立花さん……ここをでようか……ここにいると壊しちゃいそうだ……」

 伝説級の武器で愛刀だった。虎徹零式を具現化する。

 「そうね、ここはまだ利用価値がある……だから今は私と行きましょう」

 牢屋を脱出後、鍵をふたたびかけ魔力の鍵の扉も元のままに復元する。

 「さぁ行きましょうか」

 檻を出たところでファーガス内に設置した、転移魔法陣のある場所まで移動した。
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