前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

文字の大きさ
79 / 109
3章

78話:第千層

しおりを挟む
 最短ルートを通り、わずか四日で九九九層まで攻略し、千層のボスの前までたどり着いた。

 「ここでラストだな……」

 早いとこ回収するもんを回収してここから脱出だ。

 「二人共ペースが速すぎですよ~」

 ちなみザルカヴァは途中から九兵衛さんにお姫様抱っこをされる形で道中を進んでいた。というのも俺と立花の速度だとザルカヴァでは持たないからだ。まぁおかげでザルカヴァはずっと心臓バクバクでウハウハだったのは言うまでもない。

 「まぁ俺達もけっこう疲れたよ」
 「二人に合わすのは無理です……」

 実と九十九もこんな感じでヘトヘトだ。今回は九兵衛さんの巨人王の能力とこの迷宮がマッチしているお陰で特に移動に苦はなかったが他の迷宮であればもっと手間取ったはずだ。

 「すまんな、だがもうここでラストだ」
 「そうね、二人でささっと倒すから横で見ていて」

 扉を開き中に入り俺と立花は闘技場の真ん中に残る。

 「来るぞ」
 「ええ」

 緑色の光が人型の形を作り襲い掛かる。

 オンラク
種族:神族?
レベル450
攻撃:400000
防御:400000
魔法攻撃:400000
魔法防御:400000
素早さ:400000
魔力:400000
固有スキル:神の光、■◆●の節制
称号:エクリプス創生神の使い、4大守護神

 クレセントとステータスは同等のようだな。なら最初から本気で行かせて貰うまでだ。

 「立花!」
 「ええ!」

 それぞれ本気モードになる。

 こいつにかける時間なんてないからな。

 「大賢者の叡智を使うわ」
 「オーケー」

 立花の大賢者の叡智は一定の範囲内いる相手のすべてを筒抜けにする。ステータス画面で見えない弱点部位や、相手の攻撃や奥義といったもの全てを覗く事が出来る。

 「あいつの固有スキルの何とかの節制は、相手の魔力使用や攻撃を制限するらしく自身が弱まるほどそれが強くなるらしいわ」
 「つまり相手をある程度削った所で大技を決まればいい感じかな」
 「そうね、私が指揮と補助をするわ。周平は前に」
 「あい」

 さてまずはぶん殴って手ごたえを見るか。

 「おらぁぁ」

 早速相手の間合いに入り顔面に拳を入れると相手は吹き飛んだ。

 「おせぇよ」

 魔神モードで休むことなく肉弾戦に持ち込み一方的に殴り込む。

 「周平気をつけて、節制が発動しているわ」

 殴ろうとする手が一瞬止まる事で攻撃も止まり、反撃を喰らい後ろに吹き飛ぶ。

 「なるほど、連続攻撃は有効ではないみたいだな」
 「周平相手の体力は10%ほどカットしているわ。バフをかけるから攻撃力の高い攻撃を上手くあてて」
 「了解」

 立花は第七位階魔法のバオールをかけ全ての強化スキルを付与する。

 「いでよ絶門!」

 こちらも間合いに入る。どうやら俺のスピードも少し落ちているようで、これは油断できないな。

 「だがまだお前じゃ捉えきれてないようだ、覇剣!」

 無駄な攻撃よりも同箇所を攻撃して相手のスピードを落とすか……

 「神空閃!」

 攻撃すればするほど速度が落ちていくので、連続攻撃よりも大技で決める。この技やさっきの覚醒した実が見せた剣技が剣士としては最高峰の技だ。

 「ふぅ~」

 無事攻撃を当て、ここらで一度後ろに下がる。

 あれをやるか……

 「立花、居合をするから少し魔法で止めといてくれ」
 「わかったわ」

 一度下がり居合の構えをとる。

 「ベンドアの鎖!」

 オンラクの体を黒金の鎖で拘束する。立花が拘束してくれる間に攻撃の準備を終え、攻撃に入る。

 「神滅覇閃……」

 俺の放った斬撃はヒムヤーの右腕を吹き飛ばすと立花はすかさずその腕を鎖で拘束した。

 「斬られた腕をそのまま拘束してしまえば再生もできない……なるほど」
 「それにうまく連携する立花さんも凄い」
 「あの二人だから当然だよ~」

 ザルカヴァと実は感心したのか目が離せないようだ。

 「周平煉獄を!」
 「おう!」

 フィールドを煉獄へと誘う。

 「体力は残り七割ほどだしいいタイミングね」
 「極解!」

 ヒムヤーの左腕を吹き飛ばすと、動きが急速に鈍くなる。つまりそれだけ攻撃が聞いているという事だろう。

 「獄炎撃!」

 直撃するがどうやら威力まで弱体化しているようだ。

 「時間がたつに連れて動きや攻撃まで下がる仕様のようね……」
 「厄介な……」

 動きはまだ止まっているし直接殴り込むか……

 「煉獄拳!」

 渾身の一撃を当てた所でオンラクが緑色に光り始める。

 「周平逃げて!」 

 回避しようとするが俺の腕はオンラクの体から離れられない。俺はヒムヤーの光の放出をもろに喰らい吹き飛ばされる。

 「クソが……」

 傷ついた体を再生させようとするが、すぐに再生せず動きも相当ノロマになっているようだ。鎖からほどかれたヒムヤーが俺に向かい攻撃をしかけようとする。

 チッ……避けれんか……

 「させないわ!」

 立花は無数の魔弾を放ち攻撃を防いだ。

 「すまんな、立花」
 「大丈夫よ、あれの神の光の能力は大幅な節制のようね。クレセントは高い攻撃力に対しヒムヤー大幅なデバフ……やはり一筋縄ではいかないわね」
 「相手の体力は?」
 「残り三割を切っているわ」

 よしならば……

 「今度は俺が支援に回る、といっても一度しかまともな支援はできないがな」
 「フフッ、わかったわ」

 立花は俺の考えを読んだのか、それ以上聞くことなく前にでた。

 「いくわ、エレノアの光!」

 立花は連続魔で削るようだな。

 「破槍アイシングラス!」

 破壊の槍はヒムヤーへと直撃するがヒムヤーは耐え、両腕がないなか体から光の砲弾を放出する。

 「あれを喰らったら面倒ね、ダイオメドの盾」

 立花はさらに一度下がり魔法を発動する。ここで創生魔法を発動する時とは違う、大きな魔力を感じる。どうやらあれを使うらしい。

 「大いなる神罰エターナルジャッジメント!」

 第十位階をも超える神魔法……これなら速度はあまり関係ないし威力もかなり高い。さてそろそろ仕事をしないとな。

 光の裁きはオンラクに降りかかるがガードの態勢にはいっているようだな。

 「フフッ、これはおとりよ……周平!」
 「あいよ」

 攻撃が終了と同時に発動するのは魔神の戒律を発動する。これは逆らう者に容赦のない罰を与えるというもので、死を与えることもできるがオンラク相手では死を与えることはできない。だが不完全ながらも相手の能力を一時的に封じこめることができ、魔法は貫通した。

 「立花俺はまだ動きが鈍い、頼んだぞ!」 
 「ええ、とどめはいただくわ」

 立花はローズメイデンを手に接近する。

 「ハァァァァ!」

 立花の斬撃は容赦なく体を貫き、ヒムヤーの体は徐々に光を失っていく。

 「とどめね、ディバインバルカン!」

 ヒムヤーは完全に消滅した。まぁ不完全とはいえ、二十柱二人だし勝って当然か。立花は俺の元に駆け寄る。

 「フフッ、少し直接攻撃をしすぎね」
 「まぁな、後ろに立花がいたから好きにやらせてもらったよ」

 サシでやる時はもう少し考えてやらんとだな。ステータス差はけっこうあるが偽神の攻撃は侮ってはいけないということだな。

 「まぁ予定通り短時間での決着はついたし、その為の直接攻撃だったんだろうけど気をつけて……」

 立花は心配そうな顔で俺を見る。あまり心配をかけてはいかんな。

 「ああ、俺は常に勝つために考え戦っている、サシならやつの攻撃をもろ喰らうような真似はしないさ」

 サシでやっていたら確かに少し苦戦したかもしれないな……あの程度の奴にここまで苦戦をしてはいけないな。
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...