好きになって貰う努力、やめました。

たなか

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目撃してしまったキスシーン

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「…んっ!……は…ぁ。………………ノエル…様ぁ…。」
「ミリア。なんて可愛いんだ。」


「………っ!!!!!!」
暖かな春の日差しが気持ち良い昼下がり。
学校の中庭でキスシーンを目撃してしまった私。


今も中庭で熱烈なキスを交わしている男女は、私がよく知る人物。特に男の人の方は。


女の方はミリア・ティツァニア。
男爵令嬢で、将来優望な見目よろしいご子息を、次々と魅了しているという噂の可憐なご令嬢。



男の方はヴァンノエル・エリモール。
この国の第二王子で、私の




そう、私は浮気されたのでしょう。


ズキッ


胸が痛い。
婚約者だったから、少しでも好かれていると思い上がっていた。
好かれる努力をしていたから、憎くは思っていないと。
でも、それは大きな勘違い。



(そんなに私の事がお嫌いですか?私は貴方様をお慕いしておりました。)

零れる涙にも気付かないふりをして、胸の痛みにも気付かないふりをして、淑女の恥も外聞もなく、駆け出した。

1人になりたかった。
幸い、誰も居なかった。


誰か来てしまうかもしれない…!
速く…速く1人になれる場所に行かなくては…!!!!!


何処か……!何処か………!!!
もう誰にも見つからないような場所…!!!









「こっちだ。」

腕をグイッと引っ張られて、不思議な部屋のような所に入れられた。
男の人の声だったから、私は襲われてしまうのかな…?


まあ、いいや。
もうどうでも良くなってきた。



男の人に感謝を述べようと思って、顔を上げる。
見た事がない顔だ。

「この度は、助けて頂き、ありがとうございました。生憎、今は持ち合わせがありませんので、お詫びの品を持参の上、後日謝罪をさせて頂きます。」


頭を下げる。

言い終えてしまうと、頭が冷静になってきて、さっきの事を思い出してしまう。
また、涙が溢れてくる。


「……ふ………。グスッ。…………っ………。……ぁ……。」
声が出ないように必死に抑えるが、どうしても体が震えてしまうし、嗚咽が漏れてしまう。

なんて惨めなのだろう。
これが負け犬か。
自分の惨めさにも泣けてくる。
こうしている間にも、涙はどんどん溢れて、床に落ちる。

「申、し訳ございませ…ん。ゆ、床が、よ、汚れてしまいま、した。」
声が震えてしまうし、詰まってしまう。
「申し訳、ござ、いません。申し、訳ござい…!?」

不意に頭を撫でられた。

何!?


「良い。泣きたいのであろう?ここには誰も来ない。好きなだけ泣くが良い。」

丁度良い低い落ち着いた声が優しくて。


「…………………っ……………。…………………グスッ。………ぅ………うわぁぁぁん!!!」
ついに声を上げて大声で泣いてしまった。

こんな時でも冷静な部分の私が、恥を感じている。
だけど、そんな事を気にする余裕もない。
今はただただ、悲しいのだ。





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