【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第十章 Pedal to the Metal

祭禍―⑧―

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 ロックの炎に包まれた翼剣は、“ケンティガン”の右腕を纏う“銀色の籠手”の形の“命導巧ウェイル・ベオ”:“ライジング・フォース”に遮られる。

 苦悶に呻く“ケンティガン”が右腕で、翼剣を薙ぎ払った。

 “ケンティガン”により下から上に打ち上げられたと、ロックは気付く。

 拳圧に腹を抉られた痛みと共に、“祭壇”のアーチ型天井がロックの視界一面に広がった。

 そんな彼の視界を“ケンティガン”が覆う。

 ロックは翼剣の“籠状護拳バスケットヒルト”を“ケンティガン”の動きと同時に、構えた。

 ロックの両腕から全身に掛けて、衝撃が駆け巡る。

 “ケンティガン”の両腕の槌に叩きつけられ、紅い外套コートのロックの身体が機械床に滑空。

 激痛に悶えながら、ロックは翼剣:“ブラック・クイーン”から半自動装填セミオートマチック式拳銃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“イニュエンド”を取り出す。

 銃を地上に向けて三発、放った。

 空中から、落ちるロックに急襲を仕掛ける“ケンティガン”を白煙が覆った。

 “疑似物理現象”の“道作る蹄ニャッフ・ジェナブ・ラハーチ”による炭酸ガスが、ロックの撃った機械床から噴出。

 その煙が衝撃で滑空するロックの背中に当たり、床への直撃軌道を逸らす。

 ロックに追撃を仕掛けた“ケンティガン”も煙に視界を覆われ、誰もいない大地を右の銀椀で叩きつけた。

 ロックは背中から一回転をするように、機械床に着地する。

 起き上がると、“イニュエンド”を翼剣型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ブラック・クイーン”の鍔に入れる。

 ロックの眼の前には、猛攻を仕掛ける“ケンティガン”が肉迫していた。

 逆手に構えた翼剣を突き出し。応戦しようとする。

 僅差で、右の籠手ガントレット型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ライジング・フォース”の銀の一擲が、ロックの左顎に迫った。

 ロックへの攻撃が届く寸前、“ケンティガン”の全身を電撃が駆け巡る。

 ロックは悶える“ケンティガン”の間合いから離れると、蒼白い刃の一閃が割り込んだ。

 挟撃が、禿頭の巨人のロックへの歩みを止める。

 “ケンティガン”の足を止めた電撃は、ブルースのショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”;“ヘヴンズ・ドライヴ”による“雷袖一触キュアンガル・タラナッフ” によるナノ強化銃弾を媒介に発したものだ。

 ロックの逃げる時間を作ったのは、サキの片刃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“フェイス”による指向性熱力エネルギーが空を熱したことで出来た衝撃波。

 サキがロックの前で、“ケンティガン”に立ちはだかると、

「寝てろ!!」

 ブルースのショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”が翠色に煌めき、“双月雷刃コライン・ジャラナック”の斬撃が、銀椀の“七聖人”に食らいつく。

 右肩から叩きつける一撃を受けた“ケンティガン”が呻いた。

 ブルースの“命導巧ウェイル・ベオ”の熱力エネルギーの放出で、“ケンティガン”顔右半分を焼く。

 ブルースが右手のショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”を逆手に、大きく空いた“ケンティガン”の胴の左脚から斬り上げた。

「……ブルース!!」

 ブルースの右からの斬撃に、“ケンティガン”が咆哮と共に銀に覆われた右拳を放つ。

 斬撃を“ライジング・フォース”の拳が、食い止めた。

「なら、これはどうかな!!」

 ブルースが右のショーテル型命導巧ウェイル・ベオを急遽、下げた。

 力任せの拳を振りかぶった“ケンティガン”が前のめりとなる。

 ブルースが一歩下がると、苔色の外套コートが舞い上がった。

 顎から打ち上がり、後退る“ケンティガン”。

 ブルースが、自らの拳の勢いに余った“ケンティガン”の右脚で蹴り上げたのだ。

 苔色の風となり、両手を下げた“ケンティガン”に前傾姿勢で駆けるブルース。

 しかし、ブルースの背中に、打ち上げられて戻る反動を利用して振り下ろされた“ケンティガン”の両腕の鉄槌が振り下ろされた。

 ブルースの攻撃熱力エネルギーの倍返しの反動攻撃に、苔色の戦士の身体の前面が、機械床を盛大に叩きつけられる。

 衝撃で身体が浮かぶと、“ケンティガン”の右脚がブルースの背中を踏みつけんとした。

「クソ、ブルース……、逃げろ!!」

 ロックは“頂砕く一振りクルーン・セーイディフ”の分子配列で最高強度にした翼剣の一撃を“ケンティガン”に向け、跳躍。

 ブルースの腹を蹴飛ばした“ケンティガン”が、ロックによる地球上で一番硬い斬撃を“ライジング・フォース”で受け止める。

 ロックの眼の前で、体内電気を精一杯注入された籠手ガントレット型“命導巧ウェイル・ベオ”の紫電が弾けた。

 ロックの斬撃の熱力エネルギーを、受け止めるケンティガンに、

「“ヴァージニア”、“ライラ”!!」

 サキの一言が響いた。

 ロックの攻撃を右手で受ける“ケンティガン”の右半身に、鶏冠の兜ガレアの“守護者”――“ヴァージニア”の右手の弓から“フォトニック結晶”の鏃が放たれる。

「小癪な!!」

 ロックの斬撃を防ぐ右腕を左から、“ケンティガン”が薙ぎ払う。

 “ヴァージニア”の放った光の矢の軌道に、拳圧に飛ばされたロックの身体が侵入。

 熱力エネルギーと硬質な衝撃が――ロックの特殊加工されている紅い外套コートに遮られているものの――背中から全身を襲った。

 ――……これ!!

 “ヴァージニア”がロックの気持ちを汲んでいるのかは分からない。

 “ケンティガン”の目に映る“ヴァージニア”の顔には、よりもが主な様に見えた。

 ロックに視線を向けた“ケンティガン”の背後を短髪のサキの“守護者”:“ライラ”の右手を細剣に変形させた斬撃が捉える。

 ロックを吹き飛ばした右腕の勢いを止めず、裏拳で“ライラ”を迎え撃った。

 “ライラ”の右腕の剣を破壊すると、彼の裏拳の拳圧で“守護者”が消える。

 しかし、蒼白い光が“ケンティガン”に迫った。

 ロックはそれを合図に、痛みを堪えつつ、噴進ジェット火炎の刃――“迷える者の怒髪ブイル・アブァラ”――を“ケンティガン”に振りかぶる。

 “ライラ”の背後にいたのは、サキだった。

 彼女の“命導巧ウェイル・ベオ”:“フェイス”青白い斬撃が、“ケンティガン”の銀の甲冑に食い込む。

 一撃が微かに。“ケンティガン”の歩みを止めた。

 ロックは、炎の斬撃を“ケンティガン”の背後から叩き落す。

 “ケンティガン”の背後から、紫電が放たれた。

 彼の銀甲冑に蓄積された損傷ダメージによる熱力エネルギーが、ロックとサキの強襲を遮る。

 “ケンティガン”の気合が入ると、ロックの身体が熱力エネルギーの爆発による斥力に弾かれた。

 ロックは放物線を描きながら、地上に降り立つ。

 “ケンティガン”に迫るサキも、斥力の渦に巻き込まれ、後退。

 力に当てられたのか、サキが体勢を立て直せず、膝を突いた。

 黒真珠の双眸に、銀色の右腕を持つ“ケンティガン”が映る。

 サキの眼に、彼の右腕が放つ紫電が不気味に輝いていた。
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