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14. 憤慨
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翌日、桜井が教室のドアを開けると、先に来ていた生徒が、何かを言いたげにこちらを見ていた。
何か用かと思ったが、すぐに目を逸らされる。
桜井は不思議に思ったが、気にすることなく、席に座った。
しばらくして、だんだんクラスメイトが教室にやってくる。皆やってくる度、桜井の方をちらっと見て、目を逸らす。
はじめは気にしなかったが、あまりにも皆がこちらを見るので、だんだん気になり始めた。
その時、大きな音とともに、教室のドアが勢いよく開いた。
「何!?」と、クラスメイトが驚いて一斉に振り向く。そこに立っていたのは、険しい表情をした山岸だった。
山岸はあたりを見回し、桜井を見つけると、桜井の方にずかずかと近づいた。
「山岸さん……?」
次の瞬間、桜井の机を思いっきり蹴飛ばした。
突然の出来事に、体がびくっと跳ねる。驚いて山岸を見ると、山岸はまるで鬼のような表情で、桜井を睨んだ。
「あんた、どういうことよ」
「山岸さん、どうしたの?」
「よく、そんな平気な顔していられるよね」
桜井は訳が分からず戸惑っていると、山岸はポケットからスマホを取り出し、桜井に画面を見せた。
「これ、どういうこと」
そこに映し出されていたのは、昨日、公園で広瀬と一緒にいたところを撮った動画だった。
『……僕のこと、好き?』
大音量であの時の音声が流れる。桜井は唖然とした。─隠し撮り、されていたのか。
「なんで……」
「友達が撮った。……本当に最低だよ、あんたたち。広瀬の浮気相手が、まさかあんただったとはね」
「それは違っ……」
「違わないでしょ!」
山岸は怒鳴り、持っていたスマホを桜井の机にたたきつけるように置く。
そして、桜井の胸倉を掴み、ぐいっと強く引っ張った。桜井の息が一瞬詰まった。
「あんた、聖奈から相談受けてたのに、裏ではそういうことしてたワケ!?本っ当に信じられない……!」
「それは違うよ!」
「じゃあこの動画は何なのよ! 説明しなさいよ!」
「そ、それは……」
確かに、自分は告白した。そして、広瀬は受け入れた。こんなこと、説明できない。桜井は言いよどんだ。
言葉が出ない桜井に、山岸は「やっぱり、そうだったんだ」と零し、桜井を見下した。
「あんたは、聖奈の気持ちをもてあそんだ。あたしは、あんたを一生許さない。あんたなんか、消えていなくなればいい」
そう吐き捨てて、山岸はその場を去った。
「あの動画、マジなのかよ」
「その日、広瀬の彼女の通夜だったらしいぜ」
「最低すぎんだろ」
「人の心なさすぎるわ」
「しかも男同士とか、まじでキモすぎ」
クラスメイト達が一斉にざわつき始めた。桜井を、まるで不愉快だと言わんばかりに、口々に非難しはじめる。
クラスメイトからの冷たい視線にいたたまれなくなり、桜井は、逃げるように教室を飛び出した。
分かっていた。これは自業自得だ。自分のしでかしたことは、誰も擁護しようがない。そんなこと、とっくに分かっていたはずだ。
桜井はトイレの個室に駆け込み、鍵をかけた。
山岸が怒るのは、ごもっともだ。大切な友人の葬式で悲しいはずなのに、その友人を傷つけるようなことを、自分はしてしまったのだから。超えてはいけない一線を越えて、高山を貶す真似をしてしまったのだから。
桜井の目から、涙があふれる。
──だが、自分に泣く資格はない。
泣いたところで許されない。誰も、高山も、自分の過ちを許さない。
桜井は歯を食いしばった。ぎりっと鈍い音がして、奥歯が痛んでも、強く強く、歯を噛み締めた。
何か用かと思ったが、すぐに目を逸らされる。
桜井は不思議に思ったが、気にすることなく、席に座った。
しばらくして、だんだんクラスメイトが教室にやってくる。皆やってくる度、桜井の方をちらっと見て、目を逸らす。
はじめは気にしなかったが、あまりにも皆がこちらを見るので、だんだん気になり始めた。
その時、大きな音とともに、教室のドアが勢いよく開いた。
「何!?」と、クラスメイトが驚いて一斉に振り向く。そこに立っていたのは、険しい表情をした山岸だった。
山岸はあたりを見回し、桜井を見つけると、桜井の方にずかずかと近づいた。
「山岸さん……?」
次の瞬間、桜井の机を思いっきり蹴飛ばした。
突然の出来事に、体がびくっと跳ねる。驚いて山岸を見ると、山岸はまるで鬼のような表情で、桜井を睨んだ。
「あんた、どういうことよ」
「山岸さん、どうしたの?」
「よく、そんな平気な顔していられるよね」
桜井は訳が分からず戸惑っていると、山岸はポケットからスマホを取り出し、桜井に画面を見せた。
「これ、どういうこと」
そこに映し出されていたのは、昨日、公園で広瀬と一緒にいたところを撮った動画だった。
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「なんで……」
「友達が撮った。……本当に最低だよ、あんたたち。広瀬の浮気相手が、まさかあんただったとはね」
「それは違っ……」
「違わないでしょ!」
山岸は怒鳴り、持っていたスマホを桜井の机にたたきつけるように置く。
そして、桜井の胸倉を掴み、ぐいっと強く引っ張った。桜井の息が一瞬詰まった。
「あんた、聖奈から相談受けてたのに、裏ではそういうことしてたワケ!?本っ当に信じられない……!」
「それは違うよ!」
「じゃあこの動画は何なのよ! 説明しなさいよ!」
「そ、それは……」
確かに、自分は告白した。そして、広瀬は受け入れた。こんなこと、説明できない。桜井は言いよどんだ。
言葉が出ない桜井に、山岸は「やっぱり、そうだったんだ」と零し、桜井を見下した。
「あんたは、聖奈の気持ちをもてあそんだ。あたしは、あんたを一生許さない。あんたなんか、消えていなくなればいい」
そう吐き捨てて、山岸はその場を去った。
「あの動画、マジなのかよ」
「その日、広瀬の彼女の通夜だったらしいぜ」
「最低すぎんだろ」
「人の心なさすぎるわ」
「しかも男同士とか、まじでキモすぎ」
クラスメイト達が一斉にざわつき始めた。桜井を、まるで不愉快だと言わんばかりに、口々に非難しはじめる。
クラスメイトからの冷たい視線にいたたまれなくなり、桜井は、逃げるように教室を飛び出した。
分かっていた。これは自業自得だ。自分のしでかしたことは、誰も擁護しようがない。そんなこと、とっくに分かっていたはずだ。
桜井はトイレの個室に駆け込み、鍵をかけた。
山岸が怒るのは、ごもっともだ。大切な友人の葬式で悲しいはずなのに、その友人を傷つけるようなことを、自分はしてしまったのだから。超えてはいけない一線を越えて、高山を貶す真似をしてしまったのだから。
桜井の目から、涙があふれる。
──だが、自分に泣く資格はない。
泣いたところで許されない。誰も、高山も、自分の過ちを許さない。
桜井は歯を食いしばった。ぎりっと鈍い音がして、奥歯が痛んでも、強く強く、歯を噛み締めた。
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