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DAY3 生きる選択
4、懇願と決断
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駆け寄ってきた勢いのまま、膝をつく。
伸ばした手が、和真の腹部に触れそうになって、途中で止まる。
血に濡れている。
触れたら、壊れてしまいそうで。
「和真!!」
澪は叫んだが、そのあとは声が掠れる。
「こんなの……こんなの、やだ……」
喉が震え、言葉が、うまく形にならない。
涙がぽろりと落ちて、和真の服に滲む。
キリュウは、ゆっくりと近づいてくる。
銃口を下げ、冷静な声で言った。
「安心しろ。急所は外した」
キリュウの声が割り込む。
「彼は選ばなければならない。
人工的に作ったヴィランは壊れる。
だがお前は違う。
αとβ、どちらの世界にも拒絶されない」
キリュウは、ちらりとカズマの方を見る。
だがその視線に、敵意はない。
「不思議か?
なぜ彼――カズマは狙われないのか」
和真は息を詰め、答えを待つ。
「簡単な話だ。
彼は“完成しすぎている”」
その言葉に、カズマが眉をひそめる。
「……何だと」
キリュウは続ける。
「彼はβ世界の人間だ。
βの理に最適化され、βの因果の中でしか生きられない」
和真の胸に、嫌な感覚が広がる。
「勇敢で、優秀で、意志も強い。
だが――世界を越えられない」
キリュウは、今度は和真を真っ直ぐに見据える。
「対してお前は違う。
αで生まれ、βに“同一存在”が存在し、なおかつ拒絶反応を起こさない。
お前だけが、αとβのどちらでも“壊れずに存在できる”」
カズマの拳が、無意識に震える。
カズマ
「……だから母さんは……
“作られた側”だったって言うのか」
キリュウは一瞬だけ、目を伏せる。
「そうだ。
彼女は“適応させられた”。
だが和真は――最初から適応している」
そして、冷たく言い切る。
「我々にとってカズマは“兵士”だ。
失えば痛いが、代わりはいる」
和真の喉が鳴る。
「だがお前は違う。
お前は“鍵”であり、“橋”であり、二度と作れない“例外”だ。
だから狙われるのは、
常に――高城和真、お前だけだ」
その言葉は、
和真が抱えてきた疑問と恐怖を、
残酷なほど明確に言語化していた。
キリュウは、白いケースを投げる。
地面を転がり、和真の足元で止まった。
中には、注射キット。
「打て」
澪が、震える足で和真の前に立ちふさがる。
「やめて……!
そんなもの、打たせない……!」
澪は、顔を上げる。
けれど、恐怖を隠しきれない目で。
再び和真を見やり、頬を涙が伝う。
「お願い……和真……」
声が、小さい。
それでも、必死に絞り出す。
「私……あなたが世界を救う存在とか、鍵とか……
そんなの、どうでもいい……」
唇を噛みしめ、一度、息を吸う。
「苦しくても……眠れなくても……
未完成でもいい……」
声が、震える。
「壊れたままでも……ちゃんと、悩んで……考えて……」
溢れる涙が、止まらない。
「生きて……
それだけでいい……
帰ろう……一緒に……」
声が、裏返った。
喉の奥が、痛むほどの叫び。
「楽にならなくていいから……!」
強くならなくていいから……!」
和真の手を、両手で包む。
震えている。
それでも、離さない。
「和真!
私を見て!」
和真は彼女を見る。
澪は涙を流しながら、
「あなたが”あなた”でいる方がいい!」
それは、懇願だった。
命令でも、理屈でもない。
ただの、願い。
和真の瞳が、わずかに動く。
澪の声が、確かに届いている。
和真は、痛みに震える指で注射キットを見る。
そして――澪を見る。
夢で聞いた、自分の声が蘇る。
――考えろ。
――オマエが選べ。
痛みは消えない。
恐怖も、消えない。
それでも――その声だけが、和真を現実につなぎとめていた。
和真は震える指で、エデンベクター注射キットを拾い上げる。
その選択が、二つの世界の運命を決定づけることを、誰よりも彼自身が理解していた。
血に濡れた口元で、はっきりと言う。
「……いらない」
周囲が静まる。
注射キットを握りしめる。
「……オレは、知ってるんだ。
オレたちの世界で、接種した奴らが、『正しい』って顔で他人を切り捨てていくのを。
この世界で、進化したはずの人間が、誰かを守れなくなっていくのを」
隔離檻房エリアでカズマが見せた母親の姿を浮かべる。
『……い……き……て……』
キリュウは黙っている。
和真は震える声で言う。
「この注射は、オレを強くするんじゃない」
澪を見る。
「オレが、彼女を“選べなくなる”」
一瞬、空気が凍る。
注射キットを強く握り締める。
「それだけは……絶対に嫌だ」
「……愛か。
そんな脆いもののために?」
和真が、はっきりと頷いて続ける。
「“選ぶ”ってことだ。
誰を守るか、誰と生きるか。
それを――最後まで自分で決めるってことだ」
一瞬の間、和真は全力で注射キットを投げつけた。
「オレは――α世界の人間だ」
鋭い眼光でキリュウを睨みつける。
「オレは、オレだ!
誰にも変えられない!」
カランッ!
注射キットが空を切り、地面に落ちて割れた。
キリュウは初めて、言葉を失う。
和真は強い意志を秘めた。
痛みも、迷いも、全部ひっくるめて――生きるんだ
選ぶ!!
オレは――人間で生きる!!
伸ばした手が、和真の腹部に触れそうになって、途中で止まる。
血に濡れている。
触れたら、壊れてしまいそうで。
「和真!!」
澪は叫んだが、そのあとは声が掠れる。
「こんなの……こんなの、やだ……」
喉が震え、言葉が、うまく形にならない。
涙がぽろりと落ちて、和真の服に滲む。
キリュウは、ゆっくりと近づいてくる。
銃口を下げ、冷静な声で言った。
「安心しろ。急所は外した」
キリュウの声が割り込む。
「彼は選ばなければならない。
人工的に作ったヴィランは壊れる。
だがお前は違う。
αとβ、どちらの世界にも拒絶されない」
キリュウは、ちらりとカズマの方を見る。
だがその視線に、敵意はない。
「不思議か?
なぜ彼――カズマは狙われないのか」
和真は息を詰め、答えを待つ。
「簡単な話だ。
彼は“完成しすぎている”」
その言葉に、カズマが眉をひそめる。
「……何だと」
キリュウは続ける。
「彼はβ世界の人間だ。
βの理に最適化され、βの因果の中でしか生きられない」
和真の胸に、嫌な感覚が広がる。
「勇敢で、優秀で、意志も強い。
だが――世界を越えられない」
キリュウは、今度は和真を真っ直ぐに見据える。
「対してお前は違う。
αで生まれ、βに“同一存在”が存在し、なおかつ拒絶反応を起こさない。
お前だけが、αとβのどちらでも“壊れずに存在できる”」
カズマの拳が、無意識に震える。
カズマ
「……だから母さんは……
“作られた側”だったって言うのか」
キリュウは一瞬だけ、目を伏せる。
「そうだ。
彼女は“適応させられた”。
だが和真は――最初から適応している」
そして、冷たく言い切る。
「我々にとってカズマは“兵士”だ。
失えば痛いが、代わりはいる」
和真の喉が鳴る。
「だがお前は違う。
お前は“鍵”であり、“橋”であり、二度と作れない“例外”だ。
だから狙われるのは、
常に――高城和真、お前だけだ」
その言葉は、
和真が抱えてきた疑問と恐怖を、
残酷なほど明確に言語化していた。
キリュウは、白いケースを投げる。
地面を転がり、和真の足元で止まった。
中には、注射キット。
「打て」
澪が、震える足で和真の前に立ちふさがる。
「やめて……!
そんなもの、打たせない……!」
澪は、顔を上げる。
けれど、恐怖を隠しきれない目で。
再び和真を見やり、頬を涙が伝う。
「お願い……和真……」
声が、小さい。
それでも、必死に絞り出す。
「私……あなたが世界を救う存在とか、鍵とか……
そんなの、どうでもいい……」
唇を噛みしめ、一度、息を吸う。
「苦しくても……眠れなくても……
未完成でもいい……」
声が、震える。
「壊れたままでも……ちゃんと、悩んで……考えて……」
溢れる涙が、止まらない。
「生きて……
それだけでいい……
帰ろう……一緒に……」
声が、裏返った。
喉の奥が、痛むほどの叫び。
「楽にならなくていいから……!」
強くならなくていいから……!」
和真の手を、両手で包む。
震えている。
それでも、離さない。
「和真!
私を見て!」
和真は彼女を見る。
澪は涙を流しながら、
「あなたが”あなた”でいる方がいい!」
それは、懇願だった。
命令でも、理屈でもない。
ただの、願い。
和真の瞳が、わずかに動く。
澪の声が、確かに届いている。
和真は、痛みに震える指で注射キットを見る。
そして――澪を見る。
夢で聞いた、自分の声が蘇る。
――考えろ。
――オマエが選べ。
痛みは消えない。
恐怖も、消えない。
それでも――その声だけが、和真を現実につなぎとめていた。
和真は震える指で、エデンベクター注射キットを拾い上げる。
その選択が、二つの世界の運命を決定づけることを、誰よりも彼自身が理解していた。
血に濡れた口元で、はっきりと言う。
「……いらない」
周囲が静まる。
注射キットを握りしめる。
「……オレは、知ってるんだ。
オレたちの世界で、接種した奴らが、『正しい』って顔で他人を切り捨てていくのを。
この世界で、進化したはずの人間が、誰かを守れなくなっていくのを」
隔離檻房エリアでカズマが見せた母親の姿を浮かべる。
『……い……き……て……』
キリュウは黙っている。
和真は震える声で言う。
「この注射は、オレを強くするんじゃない」
澪を見る。
「オレが、彼女を“選べなくなる”」
一瞬、空気が凍る。
注射キットを強く握り締める。
「それだけは……絶対に嫌だ」
「……愛か。
そんな脆いもののために?」
和真が、はっきりと頷いて続ける。
「“選ぶ”ってことだ。
誰を守るか、誰と生きるか。
それを――最後まで自分で決めるってことだ」
一瞬の間、和真は全力で注射キットを投げつけた。
「オレは――α世界の人間だ」
鋭い眼光でキリュウを睨みつける。
「オレは、オレだ!
誰にも変えられない!」
カランッ!
注射キットが空を切り、地面に落ちて割れた。
キリュウは初めて、言葉を失う。
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選ぶ!!
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