好きじゃない女の子にかわいいっていうのは、ブスって言うのより罪が重いと思う。

稲木 糸

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昨日

俺 1

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あれ?

彼女は俺のことが好きなんじゃないのか?

居酒屋カウンターの端。

空になったジョッキ。

「この間、かわいいって言われてドキッとしちゃったんだよね」

「そうなんだ」

何も言えなかった。

脈アリだと思ってた。

勇気がなくてズルズルと友達のままでいたのがいけなかったんだ。

終わった。

人の気持ちなんて分かるわけないよな。

俺はさっきハイボールを飲み干してしまったことを後悔した。

アルコールで誤魔化すために、おかわりを頼む。

「何かいる?」

「同じのを」

飲み干そうとジョッキに手をかけた、彼女を制す。

今日は甘いの飲まないのか?

苦いの嫌いな癖に。

もしかして、彼女にかわいいと言ったやつが、そういう酒が好きなのか?

「うーん やっぱり ノンアルにしとこうよ、今日もう酔ってるでしょ」

「そんなことない」

「あと、烏龍茶とたこわさください」

平然を装う。

余裕なんてこれっぽっちもない。

「苦いのダメな上に、弱いのにビールなんて飲むから、変に酔うんだよ。いつも通りカシオレにすればいいのに」

そいつより俺は彼女のことをよく知ってるはずだ。

あー。俺、余裕無さすぎだ。

そんなに時間は経ってないはずなのに、中々注文したものが来ないように感じる。

ビールを見るのもイライラするので彼女のビールを飲み干した。

「私のビール…」

「半分飲むのやっとって感じだった癖に」

悲しそうな彼女の顔も気に食わなかった。

「お待たせしましたー」

ハイボール、烏龍茶、たこわさがカウンターの上に置かれた。

「ありがとうございます」

「ありがとうございます…」

俺は烏龍茶の方を彼女の前に置いて、ハイボールを口に含む。

「ありがとう」

「うん。たこわさ好きでしょ?」

「うん。ありがとう」

やっぱり俺は余裕が無い。


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