クイーンズ・メモリー!   ☆大魔王は勇者がお気に入り☆

桜華 剛爛

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第一章:第三節

1:月日は流れて、只今会議中?

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 月日は流れ、季節は春へと移り変わり大魔王領エルネシアは、以前にもまして平和な日々が続いていた。
 しかし、ここはホントに以前まで魔境と恐れられた場所かと疑われるような場所である。

 そうひとむかし前までは死の魔境と呼ばれ、到底人が住めるような場所ではなく土地も荒れ果てていた。それに、凶暴な魔物や魔獣も多く出没していて、そこらじゅうに何者かの死体や悲鳴が聞こえていた程であった。

 それが今現在は、その様な面影は見えず魔族だけでなく色んな種族の人々が行き来している状態である。
 その人々とは人族を始めとして、獣人族と妖精族等の多種多様の種族である。

 その様な者達を見たら、ここが死の魔境であった等は誰も思わないし、考えもしないと思う。

 そうここを死の魔境からこの様な賑やかで領土に、わずか数年で変えたのは、他でもない大魔王エリザベート・フォン・エルネシアである。

 それに以前発生していた飢饉の状態で、餓死者を出していた領地は、魔王達と大魔王であるエリザの懸命な支援により、元の状態以上の賑やかさと、飢饉以前よりも作物が育ち取れはじめていた。
 それでも今はまだ、以前のように領民は多くないが、それでも元のように増え始めていたのである。

 いまここ大魔王領エルネシア内にある城の庭で、誰かを探している少女の元気な声が響きわたっていた。
「レイ姉様!早く、早く、アーくんを、早く見つけないと、また・・・」
「もう、セリーそんなに慌てなくても、城の中にいるわよ。それについ先日、城を抜け出してマリア姉様に、こっ酷く怒られてたばかりだから、アーくんもそこまで馬鹿な事をしないと思うわよ」
「そんなのどうでもいいの、今日こそ手伝って貰うの。魔法の練習をしないといけないの。アーくんだけなの、まともな魔法を使えるの」
「えっ、そーだけど・・・でも、セシリー姉様が、まだ私達には早いって言っていたわよ。それにあの魔法だって普通は出来ないから、アーくんが使ったのはおかしいって姉様達がコソコソ話してたもの」
 2人の少女セリカとレイカは何故か城の中庭で、自分達と同じ様にこの城で育てられている少年アレスを必死に捜していた。それはただ単に魔法を教わるが目的だったが、最近一緒に居てくれないアレスが恋しくての事だったのである。

 それでその肝心のアレスはと言うと、いつもなら親衛隊のマリーのところで、剣術訓練をしているか、先程レイカが言った様に城を抜け出し城下町に遊びに行っているかであるが、今日は違う場所に潜り込んでいた。

 その場所は、現在、重要な会議が行なわれてる、その場所であった。

 そこでの会議とは、以前飢饉を起し最悪な状況にした、元領主にして魔王候補の男アルデと、何故その様な常態に陥ったかの最終確認であった。

 それで今現在そのアデルであるが、実は処分は保留状態になっており、アレスが徹底的に痛めつけたと言う事で、切断した腕と共に治療を行ない、その後約半年間牢獄に閉じ込められていた。もちろんその部下達もである。
 しかしそれも刑期が終え、今は大魔王城外にある危険なダンジョンの探索と攻略を行なう、重労働の騎士団に入隊させている状態である。しかもその刑期を大人しく受けているので、事実驚きの状態であるのだ。

 それで何故あんなにも酷い(領主として飢饉を発生させ放置していた)行ないをやっているのに、処罰が軽すぎると議論を元大魔王とその幹部であった老人達が、意見を述べそのアデルに新たなる処罰を与える事を願う会議を行なっていたのである。
 ただ、おかしいのは元大魔王と元幹部であった老人達は、アデルが行なった行為を平気で行なっていたはずなのに、それを棚に上げて心変わりしている事の方が、この会議に出席している物達には、不思議であったのである。

 それにそこには何故か、この会議している話をどこからか仕入れ、アレスもこっそり忍び込み話を聞いていたのである。
 ただしこっそりと言っても、もちろんその座っている場所は、エリザの膝の上であったのだ。しかも何気に堂々と今の話も聞いていたのである。

 それで大魔王エリザはもちろんの事、現魔王達4人と同席していた参謀であるセシリーは、アレスが居る事は解っていたが、大人しく話を聞いていたので、何とも思っていなかった。
 だが、先程この会議を持ちかけてきた元大魔王と、その元幹部の老人達が、その光景を不思議に思いつつも、誰も指摘しようとは思ってもいなかった。と言うより言えないでいたのだ、何せエリザが凄い威圧をその元大魔王達に向けていたのだからである。

「でっ、その者をどうしたいのだ?ワザワザ1回決めた処罰を覆して」
 エリザが冷たい視線を送り、会議に集まっていた者達を威嚇していた。

「はっ、はい、ですからあの者達は直ちに死罪にして処分いたしましょうと言っているのです」
 その言葉を受けて、エリザは黙ったまま怒り、大魔王特有の波動と覇気を漏らしていた。

「ひぃぃ、ですからエリザ様今回の件に関しての処罰は、我々魔族にとっては生易しい処分なのでは無いかと思いまして、そっ、それにあなたは、大魔王としての・・・」
「そうだぞエリザ殿。我は隠居したとはいえ権限はある。それに今回の失態はお主にもあるのでは無いか。ふっふっふっ」ニヤリ。
 元大魔王は、元幹部達が言う言葉を援護するように、割り込んできて今回の責任は現大魔王のエリザにもあると、怪しい笑みを浮かべて語り掛けてきた。

 会議に出ていた現魔王達は、その元大魔王と元幹部の老人達が言っている事が、若干おかしな方に傾き出したが、その光景を黙って事の成り行きを見守っていた。

「それはおかしいのでは、無いでしょうか?元大魔王様は一線を退いたのではなく、現大魔王であるエリザ様に、恐れをなして引っ込んだのでは無いでしょうか? それに・・・!?」
「セシリー良いのです。そこまでにしなさい」

「はっ、申し訳ありません、エリザ様。でしゃばった真似をして」
 セシリーがある事を喋ろうとしたとたん、エリザがそれに手を横に掲げ、セシリーの言葉を遮り止めてきた。その行為を確認したセシリーは、エリザの瞳を見て納得したのか、直ぐに引き下がりエリザに謝罪をした。

 何故その様な行動に出たかと言うと、実は飢饉を起した状況を調べていくと、ある人物達の行動が浮き彫りにされていたのである。
 その者達とは現在この会議に出席いている、元大魔王とその元幹部の老人達であった。

 それは今回に飢饉が発生したのには色々な事情があり、その飢饉が起こるように誘導した人物達が、アルデにすべての罪を押し付けて、今回の事を無かった事にしようと企んでいたのである。しかもその責任を、現大魔王であるエリザにも取らせ、あわよくば元大魔王が今の実権を握ろうと企んでいたのである。
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