【本編完結/R18】獣騎士様!私を食べてくださいっ!

天羽

文字の大きさ
14 / 20

14話 どうなっても

しおりを挟む



「ははっ……レイラは馬鹿だなぁ」

「ーーぅぐっ!」

私の言葉で明らかに目付きの変わったランセルは、その大きな手を私の喉へとあて、ゆっくりと指をかけていく。
繋がれた手足で藻掻くも、身体能力が人間の数倍上である獣人のランセルの前では、女で小柄な私などかなう筈もなかった。

「ねぇ今の自分の状況本当に分かってる?レイラが選べる道は2つしかないんだよ。僕と一緒になって僕だけに愛されるか、怖い怖い貴族のジジイに家畜同然の扱いをされるか……どっちの方が幸せかなんて明白じゃないか…さぁ、さぁ早く応えろよ!!」

「ぅーーぐっ!!」

私の首にかかったランセルの両手が、次第に力を強めていく。

「ぃ…や……ど、ち……も……」

私は繋がれた両手でランセルの腕を思い切り叩く。
だが、私の力ではどうにも出来ない。
じわじわと瞳に涙が溜まり、顬の方へと流れて行く。

(グラン……グランっーー)

無意識に呼ぶその名は、いつも私を助けてくれる大好きで、大切な人だ。
だが、今ここにはいない。
そして、いくら待っても、心の内で呼んだとしても、ここに来る筈のない人物だ。

「ああそうか、わかったもういいや」

「ひぅ、っ!!ゴホッゴホッ!!」

低く声を唸らせてランセルは自身の両手を私の首元からゆっくりと離した。
閉じられていた喉に一気に酸素が入り込み、咳き込んだ次の瞬間、私の上へとランセルが跨がった。
お腹が圧迫される苦しさと、先程よりも身動きが取れなくなったその状況に、より一層の恐怖を覚え涙と身体の震えが止まらない。

「そんなに僕が嫌なら、もういいさ。だけどさぁ、僕のこの気持ちはどうしてくれるんだよ!!だから、レイラのは僕が貰ってもいいよね?」

「え?ーーな、なにすっ!いや……嫌っ!!!」

首にかけていた両手を、ランセルは胸元へ移動させ、私の服をビリビリと引きちぎった。

「へぇ、白か……綺麗なレイラにはピッタリだね」

ランセルの三日月の瞳が私の胸元の下着へ集中し寒気がする。
顕になった肌。腕やお腹にランセルの気持ち悪い手が触れ、鳥肌が立つ。

「ぐっ……いや、やめて!!」

縄で繋がれた手を動かそうとすると、それはランセルの片手によって頭の上で縫いとめられた。
とうとう少しの身動きも取れなくなり、涙が溢れて止まらない。

(気持ち悪い気持ち悪い……グラン)

「無駄だよ、グランだって今頃婚約者と楽しくやってるさ、僕たちのようにね。でも、父さんには怒られちゃうかなぁ、貴族のジジイ共は処女の女を泣かせながら一気に突き破るのが好きだとか何とか言っていたしーーまぁ、いいか」

「うぅ……いや、ランセルっ、やだやだ……」

ランセルは私のお腹へと舌を這わせる。
獣人である彼の少し長い舌は徐々に上へと上がり、唯一守っていた胸の下着すら次の瞬間ビリビリに破いた。

「あぁ、綺麗だ……綺麗だよレイラ」

ゴクリと唾を飲み込み声を漏らすランセルの瞳は、もう友達だった頃の瞳ではなかった。
何度も悪に手を染めた……犯罪者のそれと同じだった。

女性らしく膨らんだ胸を強く揉みしだき、そこから見えるピンクの頂を、ランセルは口へと含む。

「痛っ!ぐっーー」

大好きなグランに食べて欲しいといつも願っていた。
そしてグラン以外となんて考えた事など1度だってなかった。
それを今……グランじゃない人に無理やりやられている。
初めてはグランが良かった。
グランじゃないと嫌だった。
でも、それは私の願いで、グランからしたら迷惑でしかなかった。
大人なグランは婚約者が居て、子供な私を女性として見てはくれなくて……。
あの時……お似合いの2人をみて、酷く悲しくて、苦しくてーーでも、同時に悟った。
私の望む事を、グランはこれから先もしてはくれないんだと……。


ーーだから、もう…いいや。

ーーグランに触れてもらえないならもう、誰にされたって一緒だ。

ーー面と向かってグランに真実を告げられ、捨てられるよりも何倍もいい。

ーー私は疎まれる赤い瞳だから、しょうがない。
でも、私は恵まれてたよね?だって幸せだったもん。

ーーだから、これ以上望んじゃ駄目だよ。

ーーこれ以上求めたら……駄目だ。



「ん?あはは!やっと僕を受け入れてくれる気になったんだね!!嬉しいよ……これで君はずっと僕の物だ。愛してるよ……さぁ、僕のを受け入れて」

力を抜いた私の身体にランセルの硬く立ち上がったものが押し付けられる。
気持ち悪い……そんな気持ちは胸の奥深くに沈め、考えるのを放棄した。

荒く熱い息を吐くランセルの手は、私のスカートを捲り、太腿へと手を添わせる。
ゆっくりと上へ侵入し、足の付け根から下着の中へと手が入って来るのが感じられる。


(グラン……グラン……)


虚ろになった瞳を閉じ、ポツリと涙の粒がこぼれ落ちた。


(グラン、大好き……ずっと、どうなっても……)


「グ……ラン……」









「ーーーレイラァっっ!!!!!!!!」


乾燥した唇で小さく呟いたと同時に、厳重に閉められていたドアが勢いよく吹き飛んだ。
大きな音と、自身を呼ぶその低い声に、鎖されようとしていた私の意識は次第に戻っていき、瞼を開く。


「グラ……な、で……」


「っ!!ーークソッ、ランセルお前!!レイラに何してんだ!!!!!!!」

息を切らしたグランは勢いのままに素早く近付き、素肌を顕にした私に乗り上がるランセルを強い力で引き剥がした。

「え?な、なんでグラン・ジークスがーーーぶぐっっ!!!!」

ランセルに喋る時間すら与えることはなく、眉を顰め低く唸るグランは、自身の大きく逞しい拳でランセルの顔を殴り付けた。
その強い衝撃で、先程まで私を支配していたランセルは簡単に床へと突っ伏した。だが、それだけではグランの怒りは治まらない。
ベッドの下に散らばる無惨に破かれた服や、暴れてぐちゃぐちゃになったシーツ、そして上半身が顕になった私の手足を拘束する太い縄を見たグランは、先程よりも唸り声を大きくし、これまでにない程怒りを増してく。


「レイラっ!!怪我は無いか!?いや……すまない。遅くなって。俺がそばに居てやれず怖い思いさせて、すまなかった」

「ぐ、らん……」

グランは着ていた軍服の上着を脱ぎ、それを私へと羽織らせた。
手足を拘束されていた縄は携帯している小型ナイフで一瞬の内に解かれ、その後素早く首元まである上着のボタンを留めてくれた。

何故グランがここに居るのか、頭の整理が追い付かない私はただグランのする事をどこか他人事の様に眺めていた。
だけど、グランの羽織は冷たくなった身体を温め、少しの重みとその香りはグランに包まれている様だった。

ぶかぶかの羽織をただ眺めていると、不意に大きな身体に抱きしめられる。
先程よりも温かく大好きな香りのするその人を感じて、怖さや気持ち悪さで強ばった身体がみるみるうちに落ち着きを取り戻していく。
まるで、そこが自分の本当の居場所であるかのように……。
赤の瞳からは涙が幾度となくこぼれ落ち、私はグランの胸に身体を預けた。


「はぁ、レイラ…レイラ。本当に良かった、お前が俺の前から居なくなるんじゃないかと思うと…生きた心地がしなかった」

「グラ…ぐすっ、グラン……こわ、かったぁ……」

「ああ、もう大丈夫だ。俺が居る、俺がお前を守るからなーー」

グランの大きな手が私の背中を優しく擦る。
その手は私の知っている大好きな手で、心の底から安心できた。

「それにしても、あの時買っておいて正解だったな……お前を助ける事が出来たのも、全部これのお陰だ」

「あ、私の……」

グランはポケットに手を突っ込み、私の目の前にあの時貰った大切なブレスレットを見せる。

「広場ん所に落ちてたんだ。何か嫌な予感がしてお前の微かな匂いを辿ってきたんだ」

「え、で…でも、婚約者さんは……」

「あ?婚約者ってなんだよ?あぁ、まさかあの噂ーー」

グランが眉を寄せる。
私に黙ったまま、突然離れるつもりだったのだろうか……そう思うと胸がツキリと痛んだ。

「ご、ごめんなさい……私は、知らなくていい…よね」

「いやそうじゃなくて、婚約者なーーーー」


「あーあー!!なんでかなぁ~、なんで邪魔するのかな!!!グラン・ジークス。騎士は騎士らしく従順にあの護衛対象でも守っていればいいのに」

ランセルは口から血の塊を床へと飛ばし、ゆるりと立ち上がった。

「仕事より何より、俺の中で1番大切なものを優先しただけだ。それよりもランセル……まさかお前が今回の事案に深く関わっているなんてな。元から感情も読めず何の臭いもしないだとは思っていたが、ここまで真っ黒だったとは」


グランは私の頭を優しい手つきで撫でると、鋭い視線でランセルを睨みつけ立ち上がった。

「ははっ、王国随一を誇る獣騎士団団長様も所詮はその程度。僕の用意したフェイクにまんまと引っかかってくれて、あとほんの少しだったのに…全く、いつもいつも最後で邪魔するんだからさぁ。ほんとお前、邪魔なんだよ」

ランセルの目付きが変わった。
瞳だけで人を殺せそうなほどに鋭く恐ろしい視線に、私は身震いする。
だが、グランは違った。
逞しい身体で私を隠すように前に出ると冷静にランセルを観察している。

「もう隠しててもしょうがないから言うけど、……ルアドル国のお姫様だっけ?アレを狙っていたというのは、レイラからグラン・ジークス…お前を引き離すための嘘。全部僕の思い通りに事が運んで驚いたよ!お姫様の周りに盗賊を仕掛けたのも僕。そしてお姫様が狙われていると知ったルアドル国王が、友好関係にあるこの国に姫様を滞在させて、優秀なグラン・ジークスを護衛に付けたのだって全部僕が想像した通りだった。まぁそんなお姫様だって、レイラを僕のものにしてから攫って売り払おうと思ってたけど」

「ーーなぜ、そこまでして真っ先にレイラを狙った?お前だって、レイラに出会う前から国王の愛娘が赤い瞳だと知っていた筈だ。ルアドルの姫を狙った方が金だって手に入る。なのになぜレイラなんだ。お前はレイラが好きなんじゃねぇのか」


グランが冷静に問うと、その言葉にランセルは深く溜息を吐いた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜

く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた 静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。 壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。 「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」 番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。 狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の 少年リノを弟として家に連れ帰る。 天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。 夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...