23 / 26
番外編
本編第十章 黒く冷たい声
しおりを挟む
記憶喪失の男性は神子より龍鬼と言う名を貰い暫く経った頃。記憶を辿る旅を続けていたのだが気が付くと道に迷い込んでいた。
「ここはどこなのでしょう……っ!?」
困った顔で周囲を見ていた時に冷たく黒い気配に頭を押さえその場に佇む。
「……今の、は?」
よく分からないが心臓が激しく脈打つ胸を押さえ呟く。
「……この香りは」
その時ふわりと優しく甘い香りを感じてそちらへと彼の足は向かう。
「こんなところに集落があったなんて」
結界がはられているはずの集落に気が付くと彼は入り込んでいて、香りの下を探す。
するとそこには神子の姿があり暖かく優しい気持ちになりながらそっと微笑み近寄った。
「神子様」
「あ、龍鬼さん」
そっと声をかけると彼女もこちらに気付き太陽のような笑顔で答える。
「神子様もこの辺りに着ていらしたんですね。またお会いできて嬉しいです」
「私もまた龍鬼さんに会いたいって思ってましたので、こうしてお会いできて嬉しいです」
さっきまで感じていた冷たいものが一気に溶けてなくなっていく感覚に安堵しながら神子へと話す。彼女は本当に嬉しそうな顔で答えた。
「神子様もそう思っていてくださっていて嬉しいです。旅は順調ですか?」
「はい。今のところ怖いくらい順調でだからこそこれから先に不安を抱いてます」
神子も自分に会えた事が嬉しいと感じていたことに良かったと思い笑顔になる。しかし次に彼女が語った言葉に神子と呼ばれている彼女も一人の女の子なんだと知り心配する。
「……神子様の旅は世界を救うためのもの。だからこそみんなが神子様の事を慕い、崇めるんです。ですが、神子様と話していて神子様もやはりどこにでもいる普通の女の子なんだなって思いました。ですから邪神を倒すために旅をしていて恐れを抱かないはずもないですし、不安にならないはずもない。でも大丈夫ですよ。神子様ならきっと……」
「えっ……」
彼女ならきっと邪神を倒せるそう思い見詰めていると神子が困ったようにたじろぐ。
【……ろせ……殺せ】
「っぅ!?」
「龍鬼さん? どこか苦しいのですか」
突如黒く冷たい気配を感じたかと思うと頭の中に低い男の声が響く。いきなり苦しみだした龍鬼の様子に神子は驚き心配して尋ねる。
【殺せ……殺すのだ……その女を殺せ!!】
「……くっ……な、何でもないです。時々こうして何かわからぬ思いに体が支配されそうになる時があるんです。もう、大丈夫です」
頭の中に響く声の言葉に支配されそうになる自分を理性で留めて深い呼吸を繰り返し落ち着かせると、心配そうな顔の彼女へと笑顔で答える。
「頭が痛いのですか?」
「心配には及びません。もう落ち着きましたので。もしかしたらこれが自分の記憶喪失と何か関係があるのかもとも思いますが、それが違っていることを願いたいのです」
頭を抱えたままの状態に心配する彼女の姿に姿勢を戻すとそう答えた。
(記憶が戻ったらおれは神子様を……)
「違っていることを願いたいってどうしてまたそんなふうに思うのですか」
ひょっとしたら自分は記憶が戻ったらとても凶悪な存在になるのではないか。そして彼女を殺してしまうのではないかと不安になりながら見ていると神子が不思議そうな顔で尋ねる。
「……神子様。おれは神子様が好きです。だからこそ、この思いを消したくはない。記憶が戻ったらもしかしたらおれは今のおれとは全く違う性格の人になっているかもしれない。そう思うと恐ろしいんです」
「龍鬼さん……龍鬼さんは私の事を気にかけて下さるとても優しい人です。ですからどうか記憶が戻って私の事を忘れてしまったとしても、私は悲しんだりなんかしません。龍鬼さんの記憶が戻ることが一番いい事だと思うので」
彼女を殺せという声が自分の記憶と関係しているのだとしても神子の事を好きな気持ちに嘘をつきたくなくてそう話すと、彼女が優しく微笑み語った。
「神子様……おれはそろそろ行きます。ここはおれがいてはいけない場所のようですから」
「また、会えますか?」
神子の前にそしてこの場所に自分はいてはいけないような気がしてそう言って立ち去ろうとすると慌てた様子で彼女が声をかける。
「運命が巡り会わせて下さればまた……お会いできるでしょう」
その言葉が嬉しいはずなのに今は素直に喜べなくて曖昧な言葉で答えるとその場を立ち去った。
「おれは……記憶が戻ったら、神子様を殺してしまうのだろうか?」
集落の外へと出て深い森の中へとやって来ると龍鬼はそう呟く。
「っ!」
再び頭が痛くなり額を抑えてしばらくうごめく黒い想いと格闘する。
「……この声の主の所へと向かえばおれは、何者なのか思い出せるのか」
確信はないがなぜかそう思った彼は自分を呼ぶ黒く冷たい声の主がいる場所へと向けて足を進めた。
そしてその後記憶を取り戻した龍鬼は覚悟を持って神子の前へと立ちふさがることとなる。
「ここはどこなのでしょう……っ!?」
困った顔で周囲を見ていた時に冷たく黒い気配に頭を押さえその場に佇む。
「……今の、は?」
よく分からないが心臓が激しく脈打つ胸を押さえ呟く。
「……この香りは」
その時ふわりと優しく甘い香りを感じてそちらへと彼の足は向かう。
「こんなところに集落があったなんて」
結界がはられているはずの集落に気が付くと彼は入り込んでいて、香りの下を探す。
するとそこには神子の姿があり暖かく優しい気持ちになりながらそっと微笑み近寄った。
「神子様」
「あ、龍鬼さん」
そっと声をかけると彼女もこちらに気付き太陽のような笑顔で答える。
「神子様もこの辺りに着ていらしたんですね。またお会いできて嬉しいです」
「私もまた龍鬼さんに会いたいって思ってましたので、こうしてお会いできて嬉しいです」
さっきまで感じていた冷たいものが一気に溶けてなくなっていく感覚に安堵しながら神子へと話す。彼女は本当に嬉しそうな顔で答えた。
「神子様もそう思っていてくださっていて嬉しいです。旅は順調ですか?」
「はい。今のところ怖いくらい順調でだからこそこれから先に不安を抱いてます」
神子も自分に会えた事が嬉しいと感じていたことに良かったと思い笑顔になる。しかし次に彼女が語った言葉に神子と呼ばれている彼女も一人の女の子なんだと知り心配する。
「……神子様の旅は世界を救うためのもの。だからこそみんなが神子様の事を慕い、崇めるんです。ですが、神子様と話していて神子様もやはりどこにでもいる普通の女の子なんだなって思いました。ですから邪神を倒すために旅をしていて恐れを抱かないはずもないですし、不安にならないはずもない。でも大丈夫ですよ。神子様ならきっと……」
「えっ……」
彼女ならきっと邪神を倒せるそう思い見詰めていると神子が困ったようにたじろぐ。
【……ろせ……殺せ】
「っぅ!?」
「龍鬼さん? どこか苦しいのですか」
突如黒く冷たい気配を感じたかと思うと頭の中に低い男の声が響く。いきなり苦しみだした龍鬼の様子に神子は驚き心配して尋ねる。
【殺せ……殺すのだ……その女を殺せ!!】
「……くっ……な、何でもないです。時々こうして何かわからぬ思いに体が支配されそうになる時があるんです。もう、大丈夫です」
頭の中に響く声の言葉に支配されそうになる自分を理性で留めて深い呼吸を繰り返し落ち着かせると、心配そうな顔の彼女へと笑顔で答える。
「頭が痛いのですか?」
「心配には及びません。もう落ち着きましたので。もしかしたらこれが自分の記憶喪失と何か関係があるのかもとも思いますが、それが違っていることを願いたいのです」
頭を抱えたままの状態に心配する彼女の姿に姿勢を戻すとそう答えた。
(記憶が戻ったらおれは神子様を……)
「違っていることを願いたいってどうしてまたそんなふうに思うのですか」
ひょっとしたら自分は記憶が戻ったらとても凶悪な存在になるのではないか。そして彼女を殺してしまうのではないかと不安になりながら見ていると神子が不思議そうな顔で尋ねる。
「……神子様。おれは神子様が好きです。だからこそ、この思いを消したくはない。記憶が戻ったらもしかしたらおれは今のおれとは全く違う性格の人になっているかもしれない。そう思うと恐ろしいんです」
「龍鬼さん……龍鬼さんは私の事を気にかけて下さるとても優しい人です。ですからどうか記憶が戻って私の事を忘れてしまったとしても、私は悲しんだりなんかしません。龍鬼さんの記憶が戻ることが一番いい事だと思うので」
彼女を殺せという声が自分の記憶と関係しているのだとしても神子の事を好きな気持ちに嘘をつきたくなくてそう話すと、彼女が優しく微笑み語った。
「神子様……おれはそろそろ行きます。ここはおれがいてはいけない場所のようですから」
「また、会えますか?」
神子の前にそしてこの場所に自分はいてはいけないような気がしてそう言って立ち去ろうとすると慌てた様子で彼女が声をかける。
「運命が巡り会わせて下さればまた……お会いできるでしょう」
その言葉が嬉しいはずなのに今は素直に喜べなくて曖昧な言葉で答えるとその場を立ち去った。
「おれは……記憶が戻ったら、神子様を殺してしまうのだろうか?」
集落の外へと出て深い森の中へとやって来ると龍鬼はそう呟く。
「っ!」
再び頭が痛くなり額を抑えてしばらくうごめく黒い想いと格闘する。
「……この声の主の所へと向かえばおれは、何者なのか思い出せるのか」
確信はないがなぜかそう思った彼は自分を呼ぶ黒く冷たい声の主がいる場所へと向けて足を進めた。
そしてその後記憶を取り戻した龍鬼は覚悟を持って神子の前へと立ちふさがることとなる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!
飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。
貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。
だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。
なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。
その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる