セーラーキャプチャー

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ダンジョンの定義にモノ申したい‼

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 『セーラーキャプチャー』の『マネージャー』であるあたしは、今、ダンジョンに向かっていた…あたし達の拠点にしている小都市の第二王子の件は、街の偉い人達に丸投げして、調査依頼のあった件に従事する事にした。はっきり言って、現実逃避である。
 同行者は『スカウト』ちゃん、『盗賊』ちゃん、『マッパー』さんの三人…今回の探索は先行調査である。
 いや、いきなりダンジョンアタックなんてしませんよ?そんな危ない事する程、我々は無謀じゃありません‼ダンジョン内の状況をあらかじめ知っておくことは、基本中の基本なんですから‼いきなり飛び込んで、勢い任せに攻略したら、ボロボロになるんだから‼
「今回は廃墟ですか」
 …簡素な門…その門を支えに、並べられた板壁は、右に三メートル、左に一メートル程の所で途切れていて、壁のあったであろう溝が村の周囲を巡っている…ただ、
「賑やかな廃墟だな」
 人々が行き交い、露天商の売り文句と、飲食店・宿泊所の客引きと、警邏とならず者の怒号と…賑やかな喧騒が、門の内側で繰り広げられていた。
「え?アンデッド系のダンジョン?」
 声が裏返っている『盗賊』ちゃんに、
「いや、こいつら、間違いなく生きてるぞ」
 『スカウト』ちゃんが呆れ気味に呟く…
「確か、ここは廃墟のハズですよ?」
 『マッパー』さんが上着を脱ぎ…脱ぐな‼
「え?脱いじゃ、だめなの?」
 相変わらず、脱ぎ癖が治ってないんですか?
「いや、脱ぎ癖なんて…」
 だから、スカートのホックを探らない‼
「あたしのスカートはボタン式なの‼」
 どっちでも良いから、入りますよ‼

 …村(?)に入っても、周囲は変わらずヒトの喧騒がある…
「どうします?いつものフォーメーションで進みますか?」
 …『スカウト』ちゃんが、あたしに確認する。一応、この場のリーダーはあたしになっている。『マッパー』さんに任せたら、全員脱がす勢いで深部を目指すかもしれない…
 …少し不安なので、『盗賊』ちゃんも。まぁ、いつもの並びだ。
 ああ、ただ、得物を抜くのは控えて‼警邏の人に何を言われるか分からないから‼
「りょーか~い‼」
 『スカウト』ちゃんが『盗賊』ちゃんの手を引いて、人ごみに紛れる…血の繋がりはないらしいけど、姉妹…いや、双子にも見えるな…
「我々も行きましょう‼」
 …この状況で、『マッパー』さんを放置するのは危険と判断して、あたしは『マッパー』さんと並んで歩いた…
「相変わらず、マップの反応は廃墟ですか?」
 一区画分を過ぎた所で、あたしは隣の『マッパー』さんに問う。
「そーだねぇ…」
 …建造物は古いから、廃墟のままなのかな?
「年代物の住居なら、王都の王宮はちょー廃墟だよ」
 …その判断は合ってるような、間違っている様な…
「…一応、あたしのマップ機能はヒトの位置も確認できるけど…」
 やっぱり、ここの皆さんは生きてる人?
「それより、『盗賊』ちゃんが串焼き、四本盗んだ」
 おい‼どこの屋台だ?
「…気付かれず盗むとは、やるなぁ…」
 いや、『盗賊』のスキルとして窃盗があるけど、そのスキルは延ばさなくて良いから‼
「あ、串焼きどうぞ」
 あ、ありがとね…『盗賊』ちゃん…って、待てやぁ‼ガキィ‼
「次は、お饅頭持ってきますね‼」
 え?お饅頭あるの?甘味なんて滅多に味わえないから…じゃねぇ‼
「情報、分かった分だけ報告します‼」
 『スカウト』ちゃん‼『盗賊』ちゃんから、目を離さないで‼
「一区画目東側三軒目の麺料理はスープに牛骨を使ってます」
 別にそんな事報告しなくていいよ‼
「一区画目西側二軒目の服飾店は紐パンティが売れ筋です」
 …際物、扱ってるなぁ…拠点の街では、かぼちゃパンツしかないのに…
「ちなみに、今食べている串焼きのお肉はネズミ肉です」
 ああ。今更、ゲテモノとは思わないよ…ちょっと、味濃いなぁ…
「『マネージャー』さん‼お饅頭、持ってきました‼」
 おおお‼これは日本三大饅頭の一つ。薄〇饅頭‼まさか、この異世界で出会えるとは‼
 …一端、冷静になろう…とりあえず、薄〇饅頭を一口…う~ん…最近不足していた糖分が脳に染みる……………ここにいる人に話を聞くべきだな………

 近くを歩いていたオバサンに聞くと、この村(?)は確かに数か月前までは廃村だったとの事…ただし、最近、近くに交易路ができ、大きい街の中間地点に位置していた事により、人が押し寄せ、現在の活気ある光景になったらしい…ただ、建物に関しては未だ廃墟の頃のままな上に、この地方の建材の高騰もあって、新築、建て替えも進んでいない状態…現在、建材価格の安い地域から建材を取り寄せているとの事。ちなみに、到着まで二か月掛かるらしい…
 で、我々にとって肝心のダンジョン反応については「おばちゃんが知るわけないじゃない‼」と一蹴された。情報提供のお礼に食べかけのネズミ肉を渡す…だって、欲しそうに見てたんだもん…
「ダンジョンコアの反応は中心部だね」
『マッパー』さんの言葉に、あたし達の進路は決定した。
 目指すは村の中心部‼…っと、危ない、危ない…我々はあくまで偵察部隊‼本攻略部隊の為に、道を示すのが我々の役割‼
「でも、もう攻略しちゃっても、良くないですか?」
 …三区画目東側二件目のお茶屋さんで、一服する我々の中、『スカウト』ちゃんが意見を出す。手には三色団子を持ち、一番上の白は、既に彼女の口の中…
…ん~…今回の偵察は国にも報告しないといけないんだよ…
「あ~…前に話があった、国からの合同攻略部隊派遣の件ですか?」
 ダンジョンの魔物対策を軍部で推し進めたいって言うのが建前だけど、本音はあたし達の引き抜きか、戦力低下だろうね…
「あたし達の戦力が低下しちゃったら、ダンジョンの魔物対策が後手になりませんか?」
 むしろ、あたし達みたいな若造共にイイ顔されたくないんじゃないの?
「今更、その話、受けないってのは、ナシですか?」
第二王子の件を知られたら、強引にねじ込んでくるだろうけど…
 …我々はこの世界で異世界人だからなぁ…
「………」
「………」
「………」
 しんみりさせちゃってゴメン‼団子とお茶終わったら、帰ろっか‼
「お土産とかどうします?」
 『盗賊』ちゃん。その前に、お金はちゃんと払う‼

 こうして、偵察任務は無事終了…帰ってから、三日がかりで観察レポートを作成。
 …軍の人に渡すと、あたし達を値踏みするような目で見渡している…
 …色々な意味で、あれは『男』の目だ…

 十日後、あたし達は、再び、あの村(?)に来ていた。いや、メンバーは以前のメンバーとは大幅に変更。あたしの他に『剣士』ちゃん、『騎士』ちゃん、『魔法使い』ちゃんの攻撃的布陣で、軍からは二個小隊二十人と指揮官、副指揮官が同行している。
 ところで、我々『セーラーキャプチャー』は、元々は、ただの女学生。多少、武道の経験がある者がその方向の『名前』を持っているが、基本的に、運動神経的には一般女子の域は出ていない…と思う…そんな我々がダンジョン攻略を遂げられる理由は事前の準備の他に、あたし達が異世界人であることも理由の一つであったりする。

 事前の通知を受けて、住人は避難済。攻略時、マナが急激に膨張する事によって、マナから直接生成される魔物が溢れる危険がある為である。
 攻略に関しては、軍が五人ずつ四パーティで先行し、彼等の動きが見える位置にあたし達…指揮官、副指揮官とお付きの警護兵が後詰と言う陣形となった。
 こういう場合、ダンジョンコアを刺激せずに、一思いに破壊する事が、あたし達の間のセオリー…と言うか、冒険者の常識なのだが、
「魔物が溢れるぞー‼」
 何を思ったのか、軍の連中はダンジョンコアを剣で割ろうとしていた。基本ダンジョンコアは球形なので、芯を捉えれば真っ二つに割れるが、それは『剣士』ちゃんレベルの達人でなければ無理な話。しかも、支給されている一般鋼の剣では傷一つ付けられない超硬い物質で出来ている為、ダンジョン攻略パーティは業物の武器か、手持ちのハンマーを携行している場合が多い。
 状況を見るに、明らかに劣勢。ヒト型の魔物一体に五人で抑え込んでいる。
 今の所、魔物は四体しか発生していないが、五体目の腕らしき姿がダンジョンコアから見えてきている…
「あたしら、前に出ま~す‼」
 …後方の指揮官に声を掛け、あたし達は、ダンジョンコアの破壊に向かった…

「良くやってくれた‼」
 かなり包帯が取れた第二王子から、お褒めの言葉と報奨金を頂いた。
 軍側に負傷者が十数人あったが、死者は出なかった。
 聞けば、今回、派遣された軍の指揮官さんは、第二王子派と言うより第一王子派で、第二王子のお気に入りのあたし達が失態を犯す事を狙って、軍との合同討伐を画策したらしい…『忍者』さんからの情報である…ってか、あたし達、第二王子のお気に入りなの?

 …あたし達が異世界の存在である事で優位性を保てる理由は、あたし達全員が、この世界の時間に干渉可能なこと…と言っても、意識的に干渉している訳ではなく、「高速移動したい‼」とか、「強い衝撃を与えたい‼」と言った意志に反応するらしい。これは魔法研究グループが発見した事で、時間干渉が上手く出来る者はすべて攻略組に配置されているのが現状である。ちなみに、あたしも時間干渉が上手くできる組で、今回のダンジョンコアを、手持ちのハンマーで破壊したMVPとして祭り上げられた…
 …恥ずかしくて精神がボロボロになるよ…
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