セーラーキャプチャー

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『鍛冶師』たち

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 前回、第二王子から頂いた褒章はお金だった。しかも、結構、大金‼
 これで、念願だった工房が建設できる‼やったー‼

 今までは、攻略組の活躍を語ってきましたが、生産組が陰で彼女らを支えていたんですよぉ…でも、専門の工房がなくて、他所の工房や、飲食店の一角を間借りして、武器防具の整備や新装備の開発、栄養管理が行き届いた食事の提供、新メニューの開発等々を、肩身の狭い思いをしながらやり繰りしていたんですよぉ…それが『セーラーキャプチャー』専用の工房として集結‼…あ、一応、今回建てるのは、『工房』であって、『宿舎』ではありません。『宿舎』も併設すれば?とお思いでしょうが、鍛冶場の騒音とか、キッチンの生ごみ臭とか…まぁ、色々とあって、『宿舎』は今まで通り、女神信者の経営する『宿』に格安価格で泊めて頂かせているのが現状です…

「いやぁ、寂しくなるなぁ」
 工房が完成し、『鍛冶師』J1ちゃんと、『鍛冶師』H1と、『鍛冶師』H2さんが、間借りしていた鍛冶場を去る日がやって来た…あ、J1とかH2とかは同じ『名前』の職能持ちの区分けで、Jは中学生、Hは高校生、数字は学年になっています。それと、『ちゃん』や、『さん』は学年が上か、下かの差で、呼び捨ては同学年って意味です…『ちゃん』『さん』は、あたしこと『マネージャー』基準です…

 間借りしていた鍛冶場の裏口で、あたしを含めた『鍛冶師』シスターズがお別れの挨拶と言う事で、一列に並んでいた…この場でのあたしは保護者役かな…?
「親方達には、鍛冶の基礎を教えていただき、本当に助かりました‼」
 H2さんが、愛用の槌を持って、一礼。
「手が空いたら、お手伝いに伺います‼」
 H1も一礼し、
「おじいちゃんたち、お酒飲みすぎちゃダメだよ‼」
 J1ちゃんがウィンク一つで、窘める。
「ははは‼そいつぁ、聞けねぇな‼」
 先頭の背の低い&ヒゲもじゃの代表格が豪快に笑い飛ばし、
「そうだぜ、酒は俺たちの命の水だからな‼」
「酒こそ俺らの生き甲斐だぜ‼」
 と、ジョッキ片手に笑い合う…お察しの通り、彼らはドワーフである…
「まぁ、俺達が教えたのは基礎の基礎だ。そいつを疎かにしねぇ限り、何とでもなる」
 リーダー格のドワーフがしんみりした口調で語り出す…
「それにお前らの腕なら、すぐに俺達を超えちまうだろう」
 と、肩をポンポンと叩く…
「親方…」
 肩を叩かれたH2さんの見下ろす先には親方ドワーフ…
「セクハラです」
 きっぱりとした口調。
「え?」
「この際ですから、はっきり言いますけど、皆さん、昨今のコンプライアンスに思いっきり抵触しています‼」
「あれ?ここはお別れのしんみりシーンなんじゃないの?」
「ここで言っておかないと、業界全体のイメージに関わると思うので、言わせてもらいますが、何ですか⁈その髭は⁈そんなに伸ばしていたら、火が燃え移って、火傷しますよ⁈作業する時の服装もだらしない‼シャツはズボンに入れる‼靴は踵を潰して履かない‼鋼材の鍛錬、研磨時にはゴーグルを着用‼何と言っても、作業中は飲食禁止‼」
 …いや、H2さん…?ドワーフさん達は凄腕の鍛冶職人で…
「『マネージャー』ちゃんも、あの親父共、酒くせーって言ってたじゃん!」
 いやまぁ…それは内輪の話で収める所ですよ…?
「こっちは我慢の限界だったんだよ‼こんちくしょー‼」
 あああ‼槌を振り回さないでぇ‼
「大体、こいつらのお陰で、カワイイ後輩たちがイヤな感じに毒されてんだよぉ‼」
 え?そうなの?
「…って言うか、仕事上がりの一杯はサイコー‼とか、この一杯の為に生きてる~‼ってH2さんも言ってたでしょ?」
 …おい、酒飲んでんのか?
「あああ‼違う違う‼レモネード‼厨房組が作った‼」
 ああ‼あれ‼間借りしてた食堂で出したら、人気になった‼
「言いたくなるじゃない‼あの灼熱地獄から解放されたら‼」
「だったら、あたしだって、言っていいでしょ⁈」
「花の乙女が言っていい事と悪い事が、あたしの中にあるんだよ‼」
 …めんどくせぇなぁ…酔ってんのか?
「素面に決まってんだろ‼」
 …このままでは手に持った槌で親方の工房を破壊し兼ねないので、H2さんだけ先にあたし達の工房へ送り届けた…その怒りを新製品の開発にぶつけて下さい…
「まぁ、あたしはこういう工房の雰囲気、嫌いかなかったぜ‼」
 おお‼H1、漢気ある言葉‼
「お前はホント、勢いだけはあったからな‼」
「親方達に負けたくなかったからな‼」
 今度はH1が親方の肩に手を置き、
「…で、負け分はきっちり払ってくれるんだよな?」
 …あれ?H1、何、そのダークサイド…
「あ、ああ。まぁ、今は、かみさんからの小遣いが…」
 親方、何、キョドってんの?
「あんたんトコのかみさんに建て替えてえもらってもいいんだぜ?」
「そ、それは止めてくれ‼俺の沽券に関わる‼」
「じゃあ、きっちり返してくれるんだよな?」
「来月‼来月には必ず‼」
 親方の言葉に、H1の手が離れ…
「まぁ、期待しないで待ってるよ‼」
 軽い口調で、手をひらひらさせつつ、その場を退場…
 …聞くのはコワいけど、何があったの?
「休憩時間のサイコロゲームが…何故、儂はあの時、七と…」
 賭け事良くない。後でH1説教。
「あははは。あたしは鍛冶とかあんまりしてなかったかなぁ」
 あれ?J1ちゃんは鍛冶場に立ってなかったの?
「一回だけ、剣を打たせてもらった‼」
 そうなんだ。それで?
「今、『剣士』さんが使ってるのがあたし打ったやつ‼」
 …え?『剣士』ちゃんが使ってるの?
「あと、『侍』さんの刀と、『聖騎士』さんの盾も‼」
 え⁈あれも?
「うん‼」
 いや、良い笑顔だけど…確か、剣、刀に関しては、卸してから一度も刃こぼれ、歪みが一切ない上に、切れ味が変わらないとか…盾にしても、傷も凹みも一切ないって…
「おじさん達に『免許皆伝』って言われた‼」
 …だろうね‼最初にこの工房で買った剣とかは、そこそこ持ったけど、J1ちゃんの打ったモノは永久に使えんじゃないか?って、おっさんら、言ってたし‼
「だから、あたしは皆のごはん作ってた‼」
 そうか。出来る事を見付けて、頑張ったんだ‼
「向こうに行ったら、厨房組が要るから、ごはんは作らなくて良くなるんですよね?」
 あ、いや、そんな事ないよ。厨房組と混ざって、作って良いよ。
「ほんと‼やったー‼」
 …ああ、カワイイなぁ…薄汚れた鍛冶場に現れた天使だよ…
「いや、あの子がいたお陰で、儂らもほっこりさせてもらった」
「最初、こんな小さな子が鍛冶なんぞ出来るのかと思ったわい」
「まぁ、クズ鉄から打ち出した包丁で、ドラゴンの鱗を賽の目切りにしていた時は、儂らも目を疑ったがな」
 料理の具材にそんなモノが混じっている時点でおかしいんですけどね?
「じゃあ、たまに来るから‼」
 そう言って、天使の笑顔を振り撒いて、J1ちゃんは新工房に向かった…

 …そして、現在…
 …ドワーフの親方衆は『セーラーキャプチャー』の工房にいる…うん、我々と立場が逆転し、彼らの方が工房を間借りしている…と言うより、ほぼ、主と化している…
「やっぱり新しい工房はいいなあ」
 …そう言う問題じゃねぇ‼

 そうそう‼厨房組は何組かは間借りしている厨房に留まる事となった。
 理由は単純、栄養素無視のハイカロリー食品が現地の人達に受けたから。要するに、間借りしている厨房から、残る様に泣きつかれたから…
「栄養の偏りがないモノは美味しくないからねぇ」
 それでも、育ち盛りのJグループにはそう言った食生活が必要‼でもたまに、出張して甘味等を作ってくれている…とても、有難い‼
 あと、食事は基本、この新工房の近くに建てた東屋で食べる事となり、食事時には攻略で不在だったり、遠征で戻ってこれない者以外は、集まって食べる事たなった。不規則な生活してたコもいたので、生活改善の一環にはなっただろうか…
「ほう。栄養のバランスか」
 新工房完成の日、包帯率十パーセントになった第二王子がお祝いに駆け付けてくれた。
 まぁ、身内だけの完成記念パーティを開いていた中でのサプライズだったので、かなり不意を突かれた…いや、良いんだよ。皆、化粧とか気にしてなくても…
 あ、あと、これはパーティ料理なので栄養素の均等化とか無視してます。
 所で、わざわざ、新しい工房の完成をお祝いに来たわけではないのですよね?
「話しが速くて助かるが、せっかくのパーティなのだから、楽しんだらどうだ?」
 偉い人がいるのに、それを無視して、楽しむってのは…
「君も損な役回りをしているなぁ」
 みんなの『マネージャー』なので。
 あ、アルコールはないので、新作のジュースを…
「彼らはアルコールを飲んでいる様だが?」
 ああ、ドワーフの皆さんのですか…あれはヒト族には向きません。
「どうして知っている?」
 料理用に使えるかと思って、舐めたんですが、舌が痺れちゃいました。
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