セーラーキャプチャー

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魔族のお姫様がいらっしゃいました‼

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 この世界には『ヒト』として女神様から認定されている様々な種族がいる。
 その中にはファンタジー世界で神と敵対する種族の代表とも言うべき『魔族』も存在していたりする。まぁ、この世界では汎ヒト族との関係は良好だし、『女神』信仰にも反対してはないけど、その昔、魔族の王を討伐するとか言い出した魔族領周辺の王侯貴族が討伐隊を出した事があったけど、ことごとく返り討ちにあったらしい。その上、負傷者を手厚く治療し、捕虜の扱いも条約に規定されている以上に扱い、送還事には、幾つかの手土産まで渡され、盛大なお見送りを受けたと、魔族との戦争史には記載されている。まぁ、それだけ、裕福かつ、強大な軍事力を持っているんだな…
 で、何故、そんな話をしているのか?と言うと、あたしの前にその魔族のお偉いさんと思しき人物がカレーをかき込んでいるからだ…すでに、三杯目である…
「お代わり‼」
 四杯目に突入‼見た目十歳くらいの女の子で、銀髪の側頭部にツインテールならぬ羊系の巻き角が生えている。肌の色はあたし達と同じ感じ…聞けば、汎ヒト族との融和政策の一環で、王族がヒト族の王侯貴族と婚姻関係にあるらしく、現状、魔族としての血は薄まっているらしい。とは言え、魔族の特徴である膨大な魔力は王族に遺伝されており、現在もその血は受け継がれているらしい。こと、魔族を率いる者…通称『魔王』の持つ魔力は汎ヒト族のみならず、他の追随を許さない程に膨大で、その気になれば、『魔王』単騎で世界中の国々を制圧できる程らしい…
「パパはその位、強いのだ‼」
 うん。お姫様確定。
 何故、彼女が『セーラーキャプチャー』の本部に居るのか?と言うと、街の代官様からの要請があったから…いわく、暴れたら手を付けられないと…
 そんな危険物を我々に押し付けるなぁ‼と、『プレジデント』さんが抗議に向かったはずなのだが、戻って来たら、意気投合して、お姫様を連れてきやがった…
「帰してきなさい‼」
 おかん口調で『会計』さんが怒鳴るも、
「だって、事情があるんだって…」
 怯えまくって、その事情とやらを語り出す二人…
 話によると、クーデターを企てている勢力に彼女が狙われているらしく、縁戚関係のあるこの国の王族の元に身を寄せる様に『魔王』様が指示を出したとの事…その担当になったのが、毎度お馴染み第二王子。最初からあたし達に丸投げするつもりだったな…どの程度、滞在するかは分からないものの、それなりに報酬を受け取ったので、『会計』さんは渋々、お姫様の滞在を許可。それが三時間前で、現在、昼時…
「うむ‼満足だ‼」
 並盛とは言え、四杯食べた少女はスプーンを皿に置いて、一言。
 …そう言えば、連れて来た時、一人きりだったけど、お付きの方は?
「うむ‼父上の補佐の為、全員が戻った‼」
 …怪しいな…あ、誰か、お姫様の口廻り、拭いてあげて‼カレー塗れだから‼
「世話を掛ける‼」
 …いや、あたしに顔を向けられても………やるしかないのか?
 …この件を切っ掛けに、あたし『マネージャー』は彼女のお世話係になった…

 …とは言え、『セーラーキャプチャー』関係で彼女から離れなければならない時もあるので、そんな時は『忍者』さんに監視をお願いしている。
「不審者を排除する方向?」
 …ないとは思うけど、彼女が不審な行動を取った時は注意して。
「あんなカワイイ子を信用していないと?」
 実際、あたし達と接触している事だけでも、結構な情報でしょ?
「考え過ぎとは思うけど…了解‼」

 …そんなこんなで三日が経過…
 …そこまで手間を掛けられない為、お姫様には衣食住グレードを落としてもらう事を要求し、極めて平和的に、受け入れてもらえた…
 まず、衣料系。来た時に着用していた王族専用の重装備は、一人では着られないらしく、彼女の体形に合わせたセーラー襟のワンピースを制作…成長の事も考えて、大きめに作られたけど、お姫様は満足してくれた。どうやら、同じセーラー襟の衣装を着たかったらしく、その告白に、ほっこり&ほろりな我々だった…
 次に食時。さすがに王宮料理など予算的に出せるわけもなく…でも毎日三食は提供。ニンジンとピーマンを嫌う傾向があったが、そこは『調理師』コンビの力で克服させようと奮闘中。ちなみに『セーラーキャプチャー』全体では、酢豚のパイナップルが、最も許せない食材として、君臨している…あたしも許せないし…
 住環境に関しては、提携している宿の一番いい部屋で就寝されている…まぁ、あたしが従者用の部屋で休ませてもらっているけど、この従者用の部屋でも、普段使っている部屋より数段グレードが高いんですけど‼…ちなみに、この部屋の賃料は報酬からではなく、直で第二王子に払ってもらっている…
 まぁ、三日も経つと、居残り組の全員が彼女の存在を認知するようになり、お姫様の方も自主的に、お声を掛けて頂く様な関係にはなってくれた…まぁ、忙しい連中には察して、挨拶程度のお声掛けだったけど…

十日が経過した時、あたしが魔獣討伐に向かう事態になった。
場所は街の西側の平原…草原と荒野の中間位で、まばらに草木が見える。
「…犬系か…」
 黒い体毛で体調二メートルはあるイヌ系…
「ブラックウルフです‼」
 ブラックウルフね…それが見渡す限りの一面に居るね…丘を越えた先に見えたこの光景は正直、絶望的…今回、連れて来たのは、『剣士』ちゃんと『聖騎士』さんと『会計』さん…誰か、広域魔法を使えるヒト‼
「は~い‼」
 元気に手を挙げてくれたのは、お姫様…そう、付いて来ちゃったのだ‼そして、他の連中は目を逸らしている…どーすんだ?この状況⁈
「近くに他の連中が居るかも…」
「さっき念話が入った‼向こうは向こうで対処中だ‼」
「ハズレ引いた~‼」
 いや、絶望するには早い‼奴らはまだこっちに気付いていない‼
「だからって、アレ全部は相手にし切れないぞ‼」
 …策はない事はない…トーチカ造って、籠れば…
「ジリ貧じゃねぇかよ‼ここ掘れワンワンで引き摺り出されるぞ‼」
「じゃあ、逃げて、街の警備隊に任せる?」
「警備隊で対処できる数の上限を超えてる‼」
 …領軍や国軍を呼ぶにしても、時間が掛かる…
 …雰囲気的に万事休す…
「私なら蹴散らせるよ~‼」
 お姫様、その心意気だけで、充分です。
「そうだ‼お姫様だけでも逃がさないと‼」
 …分かってるけど…‼
「お守りは『マネージャー』ちゃんだ」
 …‼何を…『会計』さん…突き飛ばさなくても‼
「姫様。『マネージャー』に付いて行って下さい。」
 『剣士』ちゃん‼
「分かっているな?第一に、街に戻って住民の避難誘導‼次に、領主なり国軍なりに支援を仰げ‼敵討ちは余裕が出てからだ‼」
 『聖騎士』さん‼
「金銭関係の書類がある場所、分かっているでしょ?あとで、第二王子に慰謝料たんまり請求してよね‼」
 『会計』さん‼
 …幸い、まだ、こちら側は風下だ…風向きが変わったら、一気に攻め込まれる…
 …逃げるべきか…?…応戦すべきか…?
そこに、
「あたし、広域殲滅魔法使えるよ~‼」
 お姫様の言葉と共に、ブラックウルフの群れの上空百メートル程に太陽を思わせる光球が発生したかと思うと、
「え~い‼」
 お姫様の掛け声に、群れの中央に光球が落下。直径一メートル程の光球が一気に広がり、落下地点がら直径十メートルのブラックウルフが消し炭化…地面が溶解し、ガラス化しながら飛散し、場に居たブラックウルフの殆どが消え…跡地には直径一キロはあるクレーターが地面を抉り取っていた…
「…あ…」
 …呆気に取られるメンバーを前に、胸を張るお姫様…さっきまでの季節の空気が熱波を帯びて、あたし達に向けて吹き抜ける…
「危ない‼」
 生き延びた満身創痍のブラックウルフがお姫様に襲い掛かる。完全に真後ろを取られているし、お姫様は反応しているとは思えない。
 しかし、
「‼」
 一陣の風が吹き抜けたかと思うと、襲ってきたブラックウルフが縦に両断され、お姫様を避ける様に崩れ落ちる…気が付けば、振り向いて、右手を挙げているお姫様の姿…
「びっくりしたぁ~‼」
 …カワイイ笑顔で振り返るお姫様に、その場に居合わせた我々は戦慄した…某『SE〇D』の第一期エンディングの二番の歌詞をあたしは思い出していた…

「『マネージャー』‼ご飯、まだ~?」
 …一か月後、お姫様は『セーラーキャプチャー』に居座っている…
 後に判明したのだが、このお姫様、現役『魔王』様以上の戦闘力を有しているとか…パパと敵対したくないとのお姫様の我が儘で、魔族の王都の謀反勢力から逃げて来たらしい…いや、あれだけの魔法使えるなら、その謀反勢力もぶっ飛ばせるだろうよ‼
「…お兄様たちをぶっ飛ばすのは、抵抗あるなぁ…」
なるほど。謀反勢力はお兄様達か…
 その辺の対応は、第二王子にお願いしている。その返答で、魔族の国からの来訪者には厳格な入国審査が課される事になるとか…軋轢が生まれるとどうする?
 そう考えると、あのブラックウルフの群れは魔族側の策略の可能性もあるかも…まぁ、あのお姫様の魔法で証拠が消し飛んでいるだろうけど…今度、国からの調査団が来るらしいから、聞いてみよう…
「ねえ?『マネージャー』は歌って、踊ったりしないの?」
 それは、あたしの仕事じゃありません‼
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