セーラーキャプチャー

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『本気』と書いて『マジ』と呼ぶダンジョンアタック‼

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 …今回、我々の拠点になっている街に政府の高官さんが来た理由は、『セーラーキャプチャー』を軍属に編入させるか?の交渉だった…これは第二王子の要請ではなく、他の派閥…特に、第一王子と彼の母親の第一夫人の王妃派閥による強要で、担当の第二王子ですら抑えが効かない状態だったらしい…「正直、我々はお飾りじゃないんだから、その辺を理解してほしい‼」…と、『プレジデント』さんが高官さんと二派閥選出の地方議員相手に一喝‼…まぁ、あまり影響がなかった様で、いつもの駄々っ子を発動させて、その場をお開きにさせる事に成功…成功したのか?とりあえずの先延ばしが成功したと言えようか…?
「ダンジョンが溢れた‼」
 その情報が飛び込んできたのは、政府高官さんとの会合の終了直後で、『プレジデント』さんが一気に戦闘モードに入り、闘気全開で周囲を完全威圧。高官さん他王子・王妃派の議員の腰を砕かせた。これは大規模攻略時に行われる彼女の儀式のようなモノで、彼女が前線に出てなくとも、これをやる事で各自の肉体面・精神面・魔力面の強化がなされる彼女と『セーラーキャプチャー』の固有性質である。ただ、気を付けないと、周囲の被害をもたらしたりする。例えば、建物の破壊とか、魔法の暴発とか…あ、本部の方で爆発が…

「先行組の話では、氾濫が起きたのは西の鉱物産出系ダンジョン。排出されている魔物はウルフタイプや虫タイプが今の所はメインで、鉱物系じゃなくて生体系だって‼」
 長年、鉱物産出してたから、裏返って生体を吐き出してるのかな?
「完全攻略の許可は?」
「まだ、生産ギルドの金属加工系部門がぐずってるって‼」
 あのダンジョンは結構、この街に近いからなぁ…
「詮索は後‼みんな行くよ‼」
 『プレジデント』さんの言葉にその場で集合した全員が掛け声を挙げる。
「了解‼」

「戦況は⁈」
 …先発組の『剣士』ちゃんが剣圧の衝撃波付き横薙ぎ払いで、彼女の前方百メートル、角度百二十度程の領域がウルフ系魔獣の肉片とスプラッターな血飛沫を舞い散らせる。
「いや~‼久々に全力、振るえる~‼」
 すかさず、切り払った領域を強めの炎の魔法で焼き払う。魔獣の死体に足を取られない為の措置である。素材?要らない、要らない‼焼け残った骨を踏み砕いて前進‼飛行系の魔獣…コウモリ系やトリ系も沸きつつあるが、『魔法使い』コンビが仕掛けた領域指定対空防御用の石礫掃射魔法で、空域の魔獣は殲滅される。ついでに、飛行系魔獣の上にいた地上の魔獣も貫かれている。
「押し上げる‼外周、掃討開始‼」
 『プレジデント』さんの一声で、『セーラーキャプチャー』の一団が『剣士』ちゃんが拓いた領域から進む。
 前線の『剣士』ちゃんがヒャッハーな興奮状態の中で、右に『侍』さん、左に『騎士』ちゃんが付いて、お互いの死角を補い合いつつ、ダンジョン入口に駆けて行く。
 そのダンジョン入口付近では『超能力者』ちゃんが転移で連れて来た『聖騎士』さんが直径十メートル程のドーム状の聖域結界防御を張り巡らせており、魔獣たちの侵入を防いでいる。それでも侵入を試みる魔獣が取り付くが、数秒接触していると、魔獣の身体が塵となって霧散していく…ドーム内は他の討伐パーティの怪我人を『司教』ちゃんと『牧師』ちゃんが広域治癒系の奇蹟で千切れた肢体を復活させたり、毒や麻痺、恐慌状態等の状態異常回復の魔法や奇蹟を施している。
「届いたぁ‼」
 その外側から『剣士』ちゃんの高揚した声が聞こえて来る。
「遅い‼」
「これでもマッハで来たんだよ‼」
 『聖騎士』さんの一喝に反省の表情がない『剣士』ちゃんの声。
「我々は拠点防衛‼攻略組のケツを守る‼」
 そこに『侍』さんの一喝が割って入り、場を締める。周囲は既に魔獣の群れ…
「了解‼」
 『剣士』ちゃん、『侍』さん、『騎士』ちゃんが剣を振るい、魔獣たちを吹き飛ばす。
「ダンジョンに突入‼」
 『プレジデント』さんの声と共に、『スカウト』ちゃん、『盗賊』ちゃん、『忍者』さんが足早にダンジョンの入口である坑道に突入。三人が、ただ走り抜けているだけで、床や壁・天井に仕掛けられた罠が剥き出しで解除されつつ、襲って来る魔獣が急所を的確に突かれて、バタバタと斃されていく。
「聖域化‼」
 一ブロック進んだところで、『忍者』さんが、床、天井、左右両壁面に札を苦無で張り付ける。『巫女』ちゃん特製の清浄効果のある簡易結界が展開され、ダンジョンの壁から生成されようとしていた魔獣が塵に変わって行く。彼女の背後では『スカウト』ちゃんと『盗賊』ちゃんの静かな進攻が続いている…
「…現在、第三…いえ、第四ブロックを制圧…」
 『プレジデント』さんの隣の『マッパー』さんが戦況を淡々と告げる。
「『ダンジョンコア』への直通ルートを拓いてるので、枝道には魔獣が残っています」
「『鍛冶師』トリオ‼枝道の魔獣掃討をお願い‼」
 『マッパー』の進言に『プレジデント』さんの指示。
「おう‼」「任せろ‼」「了解です‼」
 三者三様の返答に、空間収納から身の丈程の大槌を取り出し、先行組が通った側と逆の通路に向かう。
「久々に暴れるぞ‼」
 H2さんの一喝の前に、
「どっちが多く始末するか、賭けない⁈」
「いやですよ‼数えるの面倒臭いんですから‼」
 H1とJ1ちゃんが魔獣の群れに大槌を振るい、的確に叩き潰していくと、
「あたしの分、残せよ~‼」
 H2さんも参戦し、魔獣を高速で殲滅していく。

 二十分程で『ダンジョンコア』の居る部屋に到着。
「…覚悟は出来ているか?」
 『プレジデント』さん、『会計』さん、『マネージャー』のあたしが『ダンジョンコア』に対応する事になった。本来、この程度のダンジョンなら、『セーラーキャプチャー』メンバーの誰でも攻略可能なのだが、最大火力での攻略を『プレジデント』さんは選んだ…そう、我々は『セーラーキャプチャー』における最大火力パーティなのだ。
 対する『ダンジョンコア』は女性ヒト型で威圧的な高濃度のマナを湧出させながら、項垂れて玉座に鎮座している…何事かを呟いている様に、口許が動いている…詠唱系の魔法ではない事はマナの乗せ方で分かっている…
「…何を語っているか、記憶してくれ…」
 『会計』さんに『プレジデント』さんが声を掛ける。
「了解」
 戦闘準備とばかりに、『会計』さんが虚空から大剣を取り出す。
「よぉし‼やるぞ‼」
 『プレジデント』さんは両手に片手剣を持ち、
「了解‼」
 あたしは薙刀を取り出す。
 それに合わせて、『ダンジョンコア』が広域魔法を放つ‼やはり土属性多め‼
 そんな魔法の群れを『会計』さんの大剣が払い切り、すかさず出来上がった道を「プレジデント」さんが駆け込み、後ろをあたしが追う。
「はぁ‼」
 右の剣を先行させた十字斬りを『ダンジョンコア』の肩口に入れるが、表面を滑って斬り込めていない。思った以上に硬い⁈
「魔法‼」
 薙刀の穂先を『ダンジョンコア』に押し付け、持てる最大級の炎の魔法を放つ。穂先に収束する赤い光球が瞬時に膨張し、爆発。傍にいる『プレジデント』さんの首根っこを捕まえて、瞬時に『会計』さんの下へ後退。
「手強いか?」
「勝てなくない‼」
『会計』さんの言葉に、『プレジデント』さんが答える。強がりじゃない。
「作戦は?」
「二人で斬り込め‼」
 尻を叩かれる様な一喝に、あたし達は駆け出す。
「同じ場所を攻撃し続けるな‼攻撃をずらせ‼」
 後方からの『プレジデント』さんの声の補足で、あたし達は作戦の意図を汲み、
「了解‼」
 左右に展開し、防御される事を織り込み済みの全力斬りを繰り出す。
 徐々に、動きのパターンが読め、頭部、肩口、上腕、脛部を叩き付けていると、『会計』さんの大剣の刃先とあたしの薙刀の石突が胸部を同時に強打する。
「よくやった‼」
 後方に控えていた『プレジデント』さんが『ダンジョンコア』に駆け込み、
「はぁ‼」
 気合一閃‼『ダンジョンコア』の胸部正中に掌底を入れる。
「‼」
 『ダンジョンコア』に驚愕の表情と、『プレジデント』さんが押し込んだ拳から走る罅。胸の奥にある真の『ダンジョンコア』が砕けており、
「あ…あ…あ…」
 何かに縋る様に両手を虚空に向ける『ダンジョンコア』が徐々にその姿をボロボロと崩壊させて、床面に陶器の欠片となって崩れ落ちる…それにしても、『プレジデント』さん、いつの間に『鎧通し』みたいな衝撃波系の技なんて身に着けたんですか?
「さあ?」
 …おどけて見せる『プレジデント』さん…謎の多い人だ…

 その後、途中でメンバーを拾いつつ、ダンジョンを出ると、外は粗方が片付いている様子で、遅れて到着した国軍に『聖騎士』さんが事情聴取を受けている…いや、逆に、遅れた事へのクレームを吐いているな…
「その辺にしてあげな‼」
 まだ言い足りない様だが、『プレジデント』さんの言葉に渋々下がり、
「聞いてくださいよぉ~‼」
 と、こっちで文句を垂れ始めた。
 その後、『セーラーキャプチャー』の面々に集合を掛け、国軍の偉い人にその場を任せると、あたし達は拠点への帰路についた…
 あ、拠点、直さないと。そのままで、こっち来たんだった。でも、全員無事‼
 こんな感じの、ちょっと忙しい一日があった。
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