セーラーキャプチャー

o2ca

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女の子のお菓子の恨みは恐ろしいのです‼…多分…

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 拠点の街近くにある鉱物産出系だったダンジョンの変異に伴う魔獣の氾濫の調査は、どう言う訳か、『セーラーキャプチャー』を締め出した形で行われる事となった。
「…今、調査してるのは、第一王妃派の息の掛かった人員だな…」
 『忍者』さん。さっき、アカデミーの生化学部門と鉱物学部門って言ってましたけど…
「…何を作ろうとしてるのか…あたしは予想が付いてるけど…」
 …我々は、隠蔽スキルを掛けるだけ掛けて、ただの洞窟と化した元氾濫ダンジョンの中層辺りを歩いていた…今回はあたし『マネージャー』と『忍者』さんの二人だけの潜入調査…もちろん、第二王子からの依頼だ…ってか、何で、あたしと『忍者』さん?
「あたしと一緒じゃ、イヤか?」
 そう言う問題じゃないんです。
「なら、良かった」
 …って言うか、あたしじゃなくて、他に…
「しっ‼」
 …研究員じゃない人が来た‼…ってか、あたしの口許を塞がなくても良いです…
「…大物のご視察だ…」
 …うわぁ…第一王妃だ…
「付けるぞ」
 あ、はい…ってか、同行者があたしである必要は…

 あ、ここからのト書き語りは、『会計』のあたしで…
 …私の目の前には、『プレジデント』のヤローが、近隣住民からの差し入れのお菓子を喰いつつ、『調理師』ちゃんが淹れたお茶を飲んでやがる…その背景には拠点を再建している『セーラーキャプチャー』の面々が駆け回っているんだがな…‼
「…あ、これ、意外に美味しい‼」
 口にモノ、入れながら、しゃべるな‼きったねぇな‼
「…で、例のダンジョンコア、何をしゃべってた?」
 …ここから本気と書いてマジモードか?
「あたしだって、街の議会に、今回の拠点爆散の件で呼ばれているんだ」
 だったら、最初から真面目にやれ。
 …そう呟いて、あたしは『ダンジョンコア』の言葉を『記録』から引き出す…
 …この『記録』と言うのは、長文の呪文詠唱用の無詠唱魔術の一つで、子供から大人…うん、ボケ老人は危ないので強制忘却させる事になってるけど…まぁ、誰でも使えるお手軽記録魔法だ…もっとも、こんな風に記録用に使うのは、我々くらいだが…
 …意識を『記録』に集中させると、自分の意識が薄らいで行く…
 …ん?こんな事、今までなかったぞ⁈何だ?これ‼やばい‼意識が…
 
 …あれ?ここからト書き語りが、『プレジデント』のあたしに移ってる…?
「…許さん…許さんぞ…」
 語り始めたな…あれ?何か、いつのも事務的な語りじゃないな…大分、感情籠ってる。
「…我の性質を替えるなど、ヒト族共め…‼欲を掻きおって‼産出される鉱物は平等に流さねばならぬのに、特定の鉱物を生み出せだと⁈ふざけるな‼」
 …これは恨み節、全開だな…聞き流してぇ…
「『盟約の王』との約定を破棄するか‼」
 ?『盟約の王』?
「…ってか、あのチンチクリン、人の王共と、勝手な盟約結んでんじゃねぇよ‼こちとら、人に管理された時の約定に縛られて、細かい産出量を調整させられてんだぞ‼前の担当者はその辺、気ぃ遣ってくれたけど、今回来たヤツ、何だよ‼偉そうに、指示しやがって‼産出量は偏って出せねぇんて、何度言えば分かんだよ‼上からの命令?知るか‼」
 …この辺りは聞き逃したい…‼
「…ってか、何、勝手に皆に向けての差し入れ喰ってんだよ‼一人二つのつもりで差し入れてもらったのに、お前一人で何個、喰ってんだ⁈」
 …あれ?『会計』の個人的な感情が入ってないかな?
「そもそも、お前、駄々捏ねれば、何でも通ると思うなよ‼見た目が可愛いだけで愛でられてるけど、中味はドロドロの高校三年生だって…」
 ストップ‼ストップ‼『解呪』‼
「…は‼あたしは何を…?」
 いや、途中からあたしへの愚痴になってなかったか?
「え~?そんな事ないよぉ?」
 …わざとらしい…まぁ、『ダンジョンコア』と交渉官の間に問題があったみたいだな…
「…あ、いや、済まない…『記憶』を使った段階で、意識が乗っ取られて…」
 おいおい。そんな事あるか?長文呪文の中には、意思を持った危険な魔法文言もあるから、その対策として『記録』は開発されたって…
「…『ダンジョンコア』だったからか?」
 …まぁ、可能性はあるか…
「…それで、私は何を言っていた?」
 …メモを取ってくれ…あたしの言葉を口にして、再発されては困る…

 …再び、こちら、『マネージャー』です…
 『ダンジョンコア』の居た部屋まで戻って来ました…いや、最奥じゃないんです…管理された『ダンジョンコア』は管理者の意向で、安置場所の変更が可能なんだって…
「…交渉官は氾濫の一番の犠牲者に成り果てましたか…」
 王妃様の声、初めて聴いたけど…うん、体格と顔の形から予想した通りの女性的な声だ。ただ、偉い人特有の響く声だな…若干、喉の使い過ぎが祟ってるかな…?…ハスキーが掛かってる…あ、敬礼してる…死者の追悼のつもりかな?最敬礼にしては頭の角度が浅いし、脚の動きがチグハグだ…式典なんかに出席してないから、やり慣れてないな…確か、そう言った場には第二王妃が出席してるって、第二王子が愚痴ってたな…
「それで、どれ程、確保出来ましたか?」
「ハイ、予定の量は確保いたしました」
 書面?『忍者』さん、覗きに行きます?
「モチ」
 …最上クラスの隠蔽で王妃様の後方にあたし達は回り込む…
「どれどれ…」
 …うん…何がなんやら…
「意味は後で。とにかく覚えて」
 …了解です…『転写』で脳裏に焼き付けて…っと…
「任務完了。戻るよ」
 あ、はい。
 …そんな訳で、あたし達は元ダンジョンを後にした…
 …そう言えば、去り際のすれ違う時、王妃様が呟いてた…
「王もふざけた行動を…‼」

 拠点に戻ったら、大じゃんけん大会が開かれていた。何でも、差し入れのお菓子の個数が全員に均等に行き渡らない数だったらしい…
「あれが喰ったからな‼」
 『会計』さんが指差す先には、残っている残骸の中でも、門状に組まれている梁の中央部分に吊るされている『プレジデント』さん。
「で?そっちは成果があったか?」
「第一王妃が訪問されたぞ」
「大物だな‼」
「そっちは何が分かった?」
「『ダンジョンコア』の交渉官と資材の産出量で揉めてた様だ」
 あたしの前で『会計』さんと『忍者』さんの軽い報告会…
「繋がったな?」
 え?は、はい。『忍者』さん。

 じゃんけん大会が終わって、各自お菓子を持って行ったり、その場で食べたりしている…あたしもその場で食べている…一個だけだったし…あ、美味しい…
 『転写』の擦り合わせは終わっている。記憶している文字が間違っているかの確認なんだけど、この『転写』も完全じゃない。特に、文字の『転写』は読めてしまう文字があると、そっちに意識が持って行かれて、他の文字の印象が薄れてしまうからね。
「…で、これがおそらく第一王妃派が確保した鉱物関係だ」
 『錬金術師』ちゃんに見てもらうと、武装関係に使われる幻想世界特有の鉱物でも、貴金属系の希少鉱物でもないらしい。気になるのは…
「水銀がありますね」
 毒物として有名なヤツね。暗殺にでも使う?
「…この鉱物で調合できるのは…化粧品ですね…」
 あ、そうか。白粉に使うのか。昔の白粉には水銀が使われてたって聞いたことある。
 …じゃあ、自らの美の追求の為に、『ダンジョンコア』怒らせて、氾濫起こしたの…?
「それも違うと思います」
 どうして?
「『ダンジョンコア』の性質を変えるには、特殊な魔法と共に、薬品が必要になります」
 特殊って、どの程度の調合難易度なの?
「国の宝物庫に収蔵されているレベルです。ただ、最奥って訳じゃありませんが」
 …いつでも使える場所に…って事か…
「調べて来たよ~‼」
 と、『盗賊』ちゃん‼どこ行ってたの⁈
「『テイマー』さんの魔獣借りて、王都の宝物庫まで」
 …まさか、侵入しちゃった?
「前にも何回か忍び込んでますよ?」
 …いや、今はいいか…多分だけど、『プレジデント』さんの命令ね?
「ええ。『ダンジョンコア』の性質変性薬が少量、減ってましたね」
 …そこまで読んでたのか…あの人、ただの『永遠のロリ』じゃないな…
「…それと王様なんですが…」
 ああ、そう言えば、気色の悪い変装してこっちに来てたよね?第二王子より早く帰ってもらったけど。
「…女装にハマってました…」
…そうか…そっちの道にイっちゃったかぁ…
「じゃあ、後でレポート出しますんで」
ご苦労様。あ、今日は休んでいいからね。
「…それより、皆の口から、美味しそうな匂いしてるんですけど…?」
 お菓子貰ったの。
「あたしの分は⁈」
 『プレジデント』さんが喰った。
 …『プレジデント』さんは就寝時間間近まで吊るされていた…マジ泣きしてた…
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