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『賢者の石』とファイナルシャウト
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「ここに私の離宮を築くぞ」
第二王子、ご乱心‼王都に帰るんじゃないのかよ‼ほら、お付きの方々が…あんまり慌ててないな…良くある事?…我が儘言ってんじゃねぇよ‼とっとと帰れよ‼
「離宮と言っても常駐する訳じゃないぞ」
あ、そうなんですね…じゃなくて‼とっとと帰れ‼
離宮建設に伴い、生産組が駆り出される事となった…と言っても、現状,『調理師』の二人だけで、他は工房で頑張っている…『錬金術師』ちゃんが寂しがってるかな…?
「余ってる食材で『賢者の石』作りました‼」
…ジャガイモと人参と玉ねぎと豚肉で…?
「あと、水と食用油と小麦粉も使いました‼」
…ほぼカレーの材料で?
「あと、コリアンダー、クミン、ターメリック…」
…カレーに使うスパイスだね。
「調合比率と合成用の魔力がモノを言うんですよ‼」
…で、出来上がったのが、これ?
「炊いた米と一緒じゃないと、『賢者の石』にならないのがネックなんですけどねぇ…」
うん。カレーライスだね。見た目も匂いも…
「冷めても美味しく頂けますよ?」
食べるんだね?やっぱり…
「経口補給で魔法の深淵に至れるんですよ?スゴくないですか?」
何だろう…他の錬金業者の皆様方に謝った方が良いような偉業だよ?
「ありがとうございます」
褒めてないよ。
第二王子の護衛を兼ねて『外回り組』が王都に向かった。第二王子がこちらに来る時もやったけど、もう一度王都までの進路を掃除した上で、王子一行外周部の護衛を担当するとの事…魔獣・魔物関係は、あまり深追いしない様に…盗賊・刺客・謀反人は容赦しない様に…と、一応の釘は刺しておく…そう言えば、工房の前にダ〇ラム、放置して行きやがった…必要な事態が来たらどうするつもりだ?…ああ、『ゴーレムマスター』が一から造るのね?今度は別の作品になるだろうと…だったらせめて『アー〇ード・トルー〇ー』サイズにしなさい…『コン〇ット・〇ーマー』サイズは大き過ぎるから…
さて、あたし達『セーラーキャプチャー』の事務組の何人かが討伐任務に就くことになった。時期的に魔物・魔獣の出現率が高くなるらしく、攻略組の手が廻らなくなったのだ。これは、あたし達が拠点にしている小都市の周辺村落も同様で、現在、討伐内容の確認の為に村落の代表の家にいる…地域信仰ってあるからね。一般的には魔物・魔獣でもその地域では神聖化してる場合もあるし、周辺の村落に悪影響が出ていないなら、無理に討伐する理由もない訳で…勿論、該当村落が困窮していなければ…って前提はあるけど…
「奴らを滅ぼして下され‼」
いきなり物騒な発言をする村長は鬼気迫る迫力で訴えて来た。あ、ちなみに今回のパーティリーダーはあたし『マネージャー』です…『プレジデント』さんもいるんだけどね‼
彼の言い分では、こちらに迫って来る魔物の群れは、種族的に彼等には受け入れ難い存在らしい…野蛮で卑劣な単一種族って考えしかない様だ…ゴブリン族的には…
うん。彼等はあたし達のいる国では市民権を持っている。勿論、他の国では認めていない場合もある。ただ、女神の教えの中に、いわゆる知能を持った『人型の魔物』を差別する事を禁じている内容もあるらしく、ゴブリン以外に、オーク、オーガ、コボルド…果てはドラゴンまで、申請すれば市民権を得られるとの事。この辺は汎ヒト族と交配可能かどうかの問題はあるようだけど…その他、市民権獲得の条件として、同一種族との交配が可能か?と言う条件もある。種族によっては単一の性別しか誕生しない事もある為、その辺りはシビアな面もあったりするし、別性別が誕生可能であっても、一部のゴブリン種やオーク種に見られる、ヒト攫い行為が種族の伝統と言い張る集団もあったりする…
…で、このゴブリン村長が危惧しているのは隣のコボルド集落の人口増加である…
…コボルドとゴブリン…ファンタジー世界では定番のザコ種族…なのか?
実は、先に隣のコボルド村に行って、同じ内容でゴブリン村を滅ぼしてくれと懇願されたのだが、まさか、同じ希望だったとは…
「『マネージャー』、ちょっと…」
村長以外の村人の事情聴取を終えた『会計』さんが手招きする。
「何か?」
『プレジデント』さんに話相手を交代しつつ、あたしは『会計』さんの元に…
「いや、どうも、村長同士の仲が悪いんだよねぇ」
…二人に聞かれない距離で『会計』さんが語り出す…
何でも、事あるごとに彼らは張り合う関係らしく、今回話題の村民の人口数から、狩猟成果を含む食物収量、危険な魔物の討伐数、旅客宿泊数、特産品の企画・製造・販売、標準語の識字率から国の奉税額まで…その辺りは両村民が辟易しているらしい…
「向こうの村で話、聞けたの?」
「いや、前回の訪問調査が、向こう側だったから」
実際、今季、あたし達が駆り出されるのは、今回で四回目で、コボルド集落の担当も彼女だったらしい。
「…どうする…?」
…どうすると言われても…彼らは正式な国民だし、出来れば仲良くしてほしいし…
…元の世界でも、民族の違い以外に、主義主張の違いだけで戦争始める事もあるし、まして、種族が違えば、思想も習慣も違う訳で…どちらが上とか下とかは…まあ、種族的な優位性をお互いに張り合うってのは…逆に、平和だからなのかねぇ…
「共通の敵がいれば、手を取り合うと?」
共通の敵が消えたら、ふりだしじゃん…まぁ、思想的には分からなくないけど…
「何なら、あたし達が脅威になってあげる?」
止めてよ‼ただでさえ、あたし達、異界の存在って事で警戒されてんだから‼
「やぁやぁ。解決案を受けてもらったよ‼」
え?『プレジデント』さん、何言ったの?
「簡単な内容だし、上手く行けば恒例行事になるかもよ‼」
…良い笑顔でVサインだ…そして、不安でしかない…
…数日後…
「青コーナー‼ゴブリン族代表‼ゴブリンA~‼」
歓声の中、登場する筋骨隆々の巨躯のゴブリンと
「赤コーナー‼コボルド代表‼コボルドC~‼」
同程度の歓声と共に、同程度の体格のコボルドが登場。
場所はあたし達が特別に原野を切り開いたちょっとした広場。陸上競技の二百メートルトラックが入る程度の大きさで、中央にはリングが設置。周囲には観客と屋台…あ、あの焼きそば美味しそう。あとで作ってもらお‼
リングの上に立った二人の巨漢は…正直、戸惑っている…
「やれ‼叩き潰せ‼」
「容赦するな‼」
…はっきり言って、ヒートアップしているのはお互いの村長だけで、仕方なく両種族が歓声を挙げている状態だ…茶番感がハンパない…
何が起ころうとしているか?と言おうと、両種族代表のボクシング対決。グローブを着用された両種族代表がリング中央に向かい、レフリーのあたしが、最低限のルールを二人に伝える…一旦、お互いのコーナーに戻って、セコンドである各村長の檄を受ける二人…
「ん?」
「お?」
と、リング上の二人が、セコンドの二人を首根っこ捕まえて、リングに上げ、
「ファイ‼」
ゴング一発‼あたしは手を素早く交差させる仕草で二人に開戦を告げる。
「おい‼ちょっと待て‼」
「なんの真似だ⁈」
あたしに詰め寄る二人。まぁ、当然の反応だろうな…
「これは両選手からのお願いです」
溜め息一つで、大きく息を吸い込み、
「決着付けるなら、てめぇらだけでやれ‼」
一喝を叩きつける‼
そんなあたしの喝にこれまで以上の歓声が沸き起こり、
「ファイ‼」
あたしの声に、仕切り直しのゴング‼さらなる歓声が上がる‼
うん。今回の対決、あらかじめ、AさんとCさんから相談されていたのだ。曰く、そんなにお互いが気に入らないなら、村長同士で闘り合うべきだ‼と懇願して来たのだ。何でも、二人は穏健的平和主義者な上に、農耕愛好者。戦う事は超苦手で異種族どころか同族とも喧嘩した事もないチキンハートの持ち主らしい。ちなみに、あの巨躯は隔世遺伝との事。伝え聞く所によると、そのご先祖様も穏やかな性格だったとか…
正直、良かった‼アレが暴れたら、あたしじゃ抑えられない‼
そして、現実に目を向けると、やる気マンマンの村長二人…
「まさか、この拳で貴様を下す事になるとはな…‼」
ゴブリン村長がジャブを繰り出す中、
「何だ?おまえ、俺に勝とうなどと思っていたのか?」
軽いフットワークで、コボルド村長が拳を払う。
…なんか、フツーにボクシングの試合になってる感じだ…
試合の流れは、序盤はコボ村長のフットワークを生かしたアウトファイトに対し、ゴブ村長が機を見たインファイトに持ち込もうとする展開…三分間の感覚が身体に刻まれている様でラッシュを何度か逃れている。その内、ラッシュを避ける為のクリンチが多くなり、ノックアウト系ではない玄人好みの試合巧者同士の試合展開を見せる。
まぁ、はっきり言って、見ていて面白くない。更に言えば、誰もポイントなんて取ってねぇぞ‼あんたら、気付いてんのか?ってか、皆、出店の方に夢中だよ‼誰もボクシングなんて観てねぇよ‼ほら、マッチョな二人もほんわかオーラ全開で語り合っているよ‼あたしもいい加減、あんたらのクリンチ解くのイヤになってんだよ‼
そんなこんなで最終ラウンド…ここで倒れなかったらどうするんだろう?二人共、立っているのがやっとな状態…いや、演技だな…こいつら…この後、一発当てる振りしてクリンチする動き…分かるぞ…そもそものファイティングスタイルが消極的だ…
あ、何かムカついて来た…拳を交えて芽生えた友情と言うより、べったりクリンチの協議談合が見えて来るぞ…神聖なリングの上で何やってんだ⁈こいつら‼
「そんなお前ら、しゅーせーしてやるうううぅぅぅう‼」
目の前の茶番と、粉モン&ソースの焦げた臭いと、イライラ交じりの空腹が、あたしの拳を村長共の顔面にめり込ませ、『会計』さんのカウントが十回…終了‼
「え~ど〇あ~ん‼」
足元に沈む村長を前に、あたしは拳を突き上げ叫んだ…やっちまった…
第二王子、ご乱心‼王都に帰るんじゃないのかよ‼ほら、お付きの方々が…あんまり慌ててないな…良くある事?…我が儘言ってんじゃねぇよ‼とっとと帰れよ‼
「離宮と言っても常駐する訳じゃないぞ」
あ、そうなんですね…じゃなくて‼とっとと帰れ‼
離宮建設に伴い、生産組が駆り出される事となった…と言っても、現状,『調理師』の二人だけで、他は工房で頑張っている…『錬金術師』ちゃんが寂しがってるかな…?
「余ってる食材で『賢者の石』作りました‼」
…ジャガイモと人参と玉ねぎと豚肉で…?
「あと、水と食用油と小麦粉も使いました‼」
…ほぼカレーの材料で?
「あと、コリアンダー、クミン、ターメリック…」
…カレーに使うスパイスだね。
「調合比率と合成用の魔力がモノを言うんですよ‼」
…で、出来上がったのが、これ?
「炊いた米と一緒じゃないと、『賢者の石』にならないのがネックなんですけどねぇ…」
うん。カレーライスだね。見た目も匂いも…
「冷めても美味しく頂けますよ?」
食べるんだね?やっぱり…
「経口補給で魔法の深淵に至れるんですよ?スゴくないですか?」
何だろう…他の錬金業者の皆様方に謝った方が良いような偉業だよ?
「ありがとうございます」
褒めてないよ。
第二王子の護衛を兼ねて『外回り組』が王都に向かった。第二王子がこちらに来る時もやったけど、もう一度王都までの進路を掃除した上で、王子一行外周部の護衛を担当するとの事…魔獣・魔物関係は、あまり深追いしない様に…盗賊・刺客・謀反人は容赦しない様に…と、一応の釘は刺しておく…そう言えば、工房の前にダ〇ラム、放置して行きやがった…必要な事態が来たらどうするつもりだ?…ああ、『ゴーレムマスター』が一から造るのね?今度は別の作品になるだろうと…だったらせめて『アー〇ード・トルー〇ー』サイズにしなさい…『コン〇ット・〇ーマー』サイズは大き過ぎるから…
さて、あたし達『セーラーキャプチャー』の事務組の何人かが討伐任務に就くことになった。時期的に魔物・魔獣の出現率が高くなるらしく、攻略組の手が廻らなくなったのだ。これは、あたし達が拠点にしている小都市の周辺村落も同様で、現在、討伐内容の確認の為に村落の代表の家にいる…地域信仰ってあるからね。一般的には魔物・魔獣でもその地域では神聖化してる場合もあるし、周辺の村落に悪影響が出ていないなら、無理に討伐する理由もない訳で…勿論、該当村落が困窮していなければ…って前提はあるけど…
「奴らを滅ぼして下され‼」
いきなり物騒な発言をする村長は鬼気迫る迫力で訴えて来た。あ、ちなみに今回のパーティリーダーはあたし『マネージャー』です…『プレジデント』さんもいるんだけどね‼
彼の言い分では、こちらに迫って来る魔物の群れは、種族的に彼等には受け入れ難い存在らしい…野蛮で卑劣な単一種族って考えしかない様だ…ゴブリン族的には…
うん。彼等はあたし達のいる国では市民権を持っている。勿論、他の国では認めていない場合もある。ただ、女神の教えの中に、いわゆる知能を持った『人型の魔物』を差別する事を禁じている内容もあるらしく、ゴブリン以外に、オーク、オーガ、コボルド…果てはドラゴンまで、申請すれば市民権を得られるとの事。この辺は汎ヒト族と交配可能かどうかの問題はあるようだけど…その他、市民権獲得の条件として、同一種族との交配が可能か?と言う条件もある。種族によっては単一の性別しか誕生しない事もある為、その辺りはシビアな面もあったりするし、別性別が誕生可能であっても、一部のゴブリン種やオーク種に見られる、ヒト攫い行為が種族の伝統と言い張る集団もあったりする…
…で、このゴブリン村長が危惧しているのは隣のコボルド集落の人口増加である…
…コボルドとゴブリン…ファンタジー世界では定番のザコ種族…なのか?
実は、先に隣のコボルド村に行って、同じ内容でゴブリン村を滅ぼしてくれと懇願されたのだが、まさか、同じ希望だったとは…
「『マネージャー』、ちょっと…」
村長以外の村人の事情聴取を終えた『会計』さんが手招きする。
「何か?」
『プレジデント』さんに話相手を交代しつつ、あたしは『会計』さんの元に…
「いや、どうも、村長同士の仲が悪いんだよねぇ」
…二人に聞かれない距離で『会計』さんが語り出す…
何でも、事あるごとに彼らは張り合う関係らしく、今回話題の村民の人口数から、狩猟成果を含む食物収量、危険な魔物の討伐数、旅客宿泊数、特産品の企画・製造・販売、標準語の識字率から国の奉税額まで…その辺りは両村民が辟易しているらしい…
「向こうの村で話、聞けたの?」
「いや、前回の訪問調査が、向こう側だったから」
実際、今季、あたし達が駆り出されるのは、今回で四回目で、コボルド集落の担当も彼女だったらしい。
「…どうする…?」
…どうすると言われても…彼らは正式な国民だし、出来れば仲良くしてほしいし…
…元の世界でも、民族の違い以外に、主義主張の違いだけで戦争始める事もあるし、まして、種族が違えば、思想も習慣も違う訳で…どちらが上とか下とかは…まあ、種族的な優位性をお互いに張り合うってのは…逆に、平和だからなのかねぇ…
「共通の敵がいれば、手を取り合うと?」
共通の敵が消えたら、ふりだしじゃん…まぁ、思想的には分からなくないけど…
「何なら、あたし達が脅威になってあげる?」
止めてよ‼ただでさえ、あたし達、異界の存在って事で警戒されてんだから‼
「やぁやぁ。解決案を受けてもらったよ‼」
え?『プレジデント』さん、何言ったの?
「簡単な内容だし、上手く行けば恒例行事になるかもよ‼」
…良い笑顔でVサインだ…そして、不安でしかない…
…数日後…
「青コーナー‼ゴブリン族代表‼ゴブリンA~‼」
歓声の中、登場する筋骨隆々の巨躯のゴブリンと
「赤コーナー‼コボルド代表‼コボルドC~‼」
同程度の歓声と共に、同程度の体格のコボルドが登場。
場所はあたし達が特別に原野を切り開いたちょっとした広場。陸上競技の二百メートルトラックが入る程度の大きさで、中央にはリングが設置。周囲には観客と屋台…あ、あの焼きそば美味しそう。あとで作ってもらお‼
リングの上に立った二人の巨漢は…正直、戸惑っている…
「やれ‼叩き潰せ‼」
「容赦するな‼」
…はっきり言って、ヒートアップしているのはお互いの村長だけで、仕方なく両種族が歓声を挙げている状態だ…茶番感がハンパない…
何が起ころうとしているか?と言おうと、両種族代表のボクシング対決。グローブを着用された両種族代表がリング中央に向かい、レフリーのあたしが、最低限のルールを二人に伝える…一旦、お互いのコーナーに戻って、セコンドである各村長の檄を受ける二人…
「ん?」
「お?」
と、リング上の二人が、セコンドの二人を首根っこ捕まえて、リングに上げ、
「ファイ‼」
ゴング一発‼あたしは手を素早く交差させる仕草で二人に開戦を告げる。
「おい‼ちょっと待て‼」
「なんの真似だ⁈」
あたしに詰め寄る二人。まぁ、当然の反応だろうな…
「これは両選手からのお願いです」
溜め息一つで、大きく息を吸い込み、
「決着付けるなら、てめぇらだけでやれ‼」
一喝を叩きつける‼
そんなあたしの喝にこれまで以上の歓声が沸き起こり、
「ファイ‼」
あたしの声に、仕切り直しのゴング‼さらなる歓声が上がる‼
うん。今回の対決、あらかじめ、AさんとCさんから相談されていたのだ。曰く、そんなにお互いが気に入らないなら、村長同士で闘り合うべきだ‼と懇願して来たのだ。何でも、二人は穏健的平和主義者な上に、農耕愛好者。戦う事は超苦手で異種族どころか同族とも喧嘩した事もないチキンハートの持ち主らしい。ちなみに、あの巨躯は隔世遺伝との事。伝え聞く所によると、そのご先祖様も穏やかな性格だったとか…
正直、良かった‼アレが暴れたら、あたしじゃ抑えられない‼
そして、現実に目を向けると、やる気マンマンの村長二人…
「まさか、この拳で貴様を下す事になるとはな…‼」
ゴブリン村長がジャブを繰り出す中、
「何だ?おまえ、俺に勝とうなどと思っていたのか?」
軽いフットワークで、コボルド村長が拳を払う。
…なんか、フツーにボクシングの試合になってる感じだ…
試合の流れは、序盤はコボ村長のフットワークを生かしたアウトファイトに対し、ゴブ村長が機を見たインファイトに持ち込もうとする展開…三分間の感覚が身体に刻まれている様でラッシュを何度か逃れている。その内、ラッシュを避ける為のクリンチが多くなり、ノックアウト系ではない玄人好みの試合巧者同士の試合展開を見せる。
まぁ、はっきり言って、見ていて面白くない。更に言えば、誰もポイントなんて取ってねぇぞ‼あんたら、気付いてんのか?ってか、皆、出店の方に夢中だよ‼誰もボクシングなんて観てねぇよ‼ほら、マッチョな二人もほんわかオーラ全開で語り合っているよ‼あたしもいい加減、あんたらのクリンチ解くのイヤになってんだよ‼
そんなこんなで最終ラウンド…ここで倒れなかったらどうするんだろう?二人共、立っているのがやっとな状態…いや、演技だな…こいつら…この後、一発当てる振りしてクリンチする動き…分かるぞ…そもそものファイティングスタイルが消極的だ…
あ、何かムカついて来た…拳を交えて芽生えた友情と言うより、べったりクリンチの協議談合が見えて来るぞ…神聖なリングの上で何やってんだ⁈こいつら‼
「そんなお前ら、しゅーせーしてやるうううぅぅぅう‼」
目の前の茶番と、粉モン&ソースの焦げた臭いと、イライラ交じりの空腹が、あたしの拳を村長共の顔面にめり込ませ、『会計』さんのカウントが十回…終了‼
「え~ど〇あ~ん‼」
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偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
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