セーラーキャプチャー

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『開拓旅団』と主人公のさだめ

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 『ロボった』さんが持ち込んだ『エクスカリバー(仮称)』はダンジョンに送り返す事になった。問題は『エクスカリバー(仮称)』の存在を公表するか、秘匿するか…
「じゃあ、あたし、持って行くわ」
 『受付』さんに全権を委譲した‼あたし達より大人なんだから上手く立ち回ってくれると信じています‼だから、せめて、抜き身で持ち出さないで下さい‼
 後日、冒険者ギルドに『勇者(恥)』が現れたと話題になった。
「例のあれね。危険物じゃないか?って検査されたの」
 こっちで作った箱から出したんですね?
「驚いた鑑定職の女の子が箱を落としたら、中味があたしの前まで転がって来たのよ」
 それを気にせず、持ってしまったと?
「結構、遠くから転がって来たから、お~いって…」
 ああ。頭上に掲げてしまったと…
「ところで『勇者(恥)』って誰だろうね?」
 え~…と、鏡を見たら、そこに映っている人で、今、とても悪い顔で笑っています…いや、コワい話じゃなくて…

 …恥辱で引き篭もった『受付』さんは置いておいて、マッピング調査の方でも問題が発生した。『開拓村』らしき跡が見付かったらしい。
 この世界において、開拓、開墾は、色々な制約がある。
 例えば、ダンジョン内は基本厳禁‼自然発生的魔力溜まりの近くもダメ‼なので、一般的には森林・草原・山岳部の麓から岩床地帯、礫平原から砂漠地帯、海岸線にある砂浜などが開拓可能とされているが、許可が要る場合がある。この許可は開拓許可を貰う場合と、依頼される場合がある。
 開拓許可とは、国や近隣の都市・町などが指定した場所や、新たに開拓しても良し‼と許可した場所が開拓可能となる公的機関のお墨付き。ただし、許可をもらうには色々と煩雑な手続きが必要だし、お金もそれなりに取られる。ちなみに、お金を取られる理由は冒険者ギルドなどに国や近隣の都市・町などが調査依頼をした分の依頼料を回収する為だそうだ。大抵の場合は国の補助があるが割に合わない場合もあるらしい。冒険者が頑張り過ぎて魔物を間引き過ぎた場合だな…開拓許可を得る目的は食い扶持の確保。なので、お金を取られるのは厳しいらしく、各村々が共同で資金を出し合うか、裕福な町などから開拓許可分の資金援助をしてもらう場合が大半らしい…
 開拓依頼の場合は、これまた国や近隣の都市・町が依頼を出す場合と、その地方を管轄する有力者…まぁ、王族や貴族・裕福な商人からの依頼の場合。国や近隣の都市・町が開拓依頼を出す場合は大抵が宿場町など交通の要衝を建設する場合。そこを拠点に道を整備するのが、この世界の交通網整備のセオリーらしい。食料確保の目的での開拓もあるが、そこは近隣農村に遠慮して、あまり依頼が出されていないのが現状…
 さて、ここまでの開拓に関しては、まともな部類。ちゃんと地域に還元されているからね‼…結果はどうあれ…だけど…
 開拓に関して、最も問題なのは王侯貴族や有力商人などが個人で依頼を出す場合。いや、ちゃんと地域の調査結果を見て選んでくれるなら問題ないのだけど、いきなり、場所の指定をしてくる場合が大半‼権力とカネに物を言わせて強引に推し進める‼まぁ、要望通りに開拓できたなら問題ないが変な注文を付けて来たりする。例えば…地域で信仰の対象とされているご神木を切り倒せ‼とか、住民が使っている川の向きを変えろ‼とか、完成した屋敷を一から建て替えろ‼とか、魔物の生息域を変える為に植生を変えろ‼とかの無茶振りのオンパレード‼更に要望通りにいかなければ責任転嫁で開拓責任者の首を平気で斬り落とす‼酷い時は開拓に関わった者全員‼…いや、物理的にって意味じゃなくて、解雇するって意味で…開拓失敗で斬首とかって悪い噂は評判を落とすし…
 そして最も深刻な問題となるのが、その後の開拓地の活用に関して。保養地や別荘としてなら、まだマシな部類。貸し出しや管理業務で地域が潤うし、所有している貴族が飽きれば買い取る事も可能だし…ただし、多額の借金を背負う事になるけど…しかし、貴族の狩場に使われる場合は、かなり厄介。狩りの対象以外の獣や魔物は地域で消費されるが、狩りの対象となる貴族の獲物は一定数残さなければならない。こいつらが畑を荒らしたり、住民を襲ったりと生活いている住民の迷惑になる‼でも、ここは我慢の一択。だって領主様が狩りに来た時に獲物が獲れないなんて楽しくないでしょ?接待目的な場合もあるし…これによって、魔物の生息域が変わってしまい周辺地域の警戒対象が変化してしまう。しかも一つの狩場で獲物の指定を変更する場合もある…中途半端なイケイケ貴族なんかが、やらかすパターンだな…
 更に問題となるのが、所有者が狩場の権利を放棄した場合。魅力的な獲物が獲れる場所なら他の貴族や商人が買い取るだろうが、利用価値のない害獣用の狩場の場合は厄介極まりない。だって、貴族様が狩りを楽しむ為に放置した魔物を地域住民が対処しなければならないから。保障費用を出す貴族もいるが、とても地域全体の手助けにはならない額‼しかも費用を出さない貴族もいる‼しかしながら、こういった狩場は一定数必要となる。貴族の戦闘訓練用だ。と言っても、用兵の訓練の為で生きたモノを相手にする事が重要らしい…まぁ、こう言った訓練狩場は国の方で管理しているらしいけど…個人や一領主が持っていたら謀反の疑いが掛けられるしね…ただ、大半の貴族は魔物の動きよりカネの動きを気にしているみたいだけど…

「…で?その『開拓村』の跡地は娯楽狩場の跡?」
 あたし『マネージャー』は、今回、調査に向かってくれたチームのリーダーである『魔法使い』さんと話し合う。他のチームの面々は食事を終えて、お風呂に向かっている。
「いや、ちゃんとした家が…十軒くらい建ってたかな?」
 今回の調査は三人で行ってもらった。いや、急な依頼が立て続けに入ってマッピング調査に人を割けなかったから仕方がない。
 話によると、家の造りは汎ヒト族系が五軒、小さめの汎小人系が三軒と、大型の汎巨人族系が二軒。生活していた形跡があったが、どれも数日程度らしい。畑はないが主要交易路からは二キロ程離れている草原エリアのど真ん中。井戸を掘った形跡はあったが、もちろん水は出ていない。しかも、最も近い水場からは一キロは離れていたらしい。
「…宿場町からも他の農村からも離れているから…作ってから放棄した?」
 『魔法使い』さんの言う通りだが、実は結構こんな事態が多発している。
 『開拓旅団』の仕業だ。
 この『開拓旅団』と言うのが各地で出没して、村…と言うか集落を造っている。目的は良く分かっていないが、一部の放牧民の為の家…と言う説がある。ただ造って放置されている状態なので、良くない連中…野盗団の根城にされるケースがあって、実際に捕まえた野盗の一人が吐いた場所には立派な家が建っていたらしい。もちろん、野盗団は一網打尽にされたらしいが…ちなみに、この話は役場でナンパして来た騎士の一人が自慢げに話していた事だけど…うん、騎士さんはテキトーにあしらいました…しつこいから、あたしが『セーラーキャプチャー』の『マネージャー』だと言ったら、何故か退散したけど…?
 この『開拓旅団』、正体が一切掴めていない。年齢、性別、人種などの人員構成から習得している技能スキル天恵ギフト職能ジョブの種類、開拓された場所の選定から生活様式まで、分かっていない事だらけ。言いたくないけど、排泄物すらない‼…探したんですね?周辺も…
 実は一時期、『セーラーキャプチャー』の一部門が『開拓旅団』なのでは?との疑いを掛けられた事がある。それは『開拓旅団』の中で唯一判明している『無限収納』的な『空間拡張』系の能力がある事。家の建材をどうたって用意したか?の答えだ。
「うん。そう言う反応は確かにあった」
 『魔法使い』さんの鋭敏な魔法探知能力なら間違いない。
 報告書に纏める為、もう少し、詳しい話を『魔法使い』さんに聞いて、後日、冒険者ギルドに届けようと思う…『受付』さんに頼むかな…?

「…この国で出るのも久し振りだな…」
 書類に目を通して、『受付』さんはポツリと呟く。詳しい話は『ギルドマスター』に聞いてくれと言って、再び、引き篭もった…あ、『エクスカリバー(仮称)』を鑑定した女性職員さんが来ているんですが…はい、謝罪の為に…一応、面会するそうです…
「あ。やっぱ、ギルドに行く?」
 『魔法使い』さん。『受付』さんがギルドに行きたくないと駄々を捏ねて…
「『エクスカリバー(仮称)』の件はあたしも聞いた…ん?」
 あ、『魔法使い』さんが『占術師』モードに移行した。
「…気を付けた方が良いよ…」
 え?何を?
「…あ、ゴメン。もう無理だ…」
 え?何が無理なんですか⁈
「…結論だけ言おう…いや、それもダメか…」
 だから、何が起こるんです?
「…あたしから言える事は一つ‼がんばれ主人公‼」
 …相変わらず、何一つ分からない『占術師』さんだ…あの状態、しばらく続くかな?

 拠点から目の前の通りに沿って、冒険者ギルドに向かう。
 この街は冒険者によって拓かれた街で、王都や他の領主が治める都市と違って、街の中心に冒険者ギルドが建っている。地域貢献と発展に寄与していると言う事で、この街を収めている代官様も認めている。代官様は第二王子派の優秀な人材らしく、こんな街に置くには勿体ない‼と好評価だが、そんな事はおくびにも出さない。切れ者と言うよりは実直な方…と言うのが面会した時の印象だ。何しろ、腰が低い。
 拠点に面している外周通りから中央部に伸びる大通りに到着。拠点から一キロくらいかな?大通りは馬車が四車線通れる道で左右に二車線ずつ通行。あ、馬車は右側通行ね。
「あれ?」
 見慣れない女の子を発見。辺りをキョロキョロしている。いや、この辺りは、あたし達の管轄外だから、この辺に住んでいるのかも知れないけど、周りと衣装が随分と違う。
 何か、こう…中国とかの小数部族の民族衣装っぽい着流し系…?
 通りを渡って、その少女の脇を抜ける…五歳くらいかな?…『プレジデント』さんや魔族のお姫様に比べて、頭一つ分くらい背が低い。汎小人族ではなく、ちゃんと汎ヒト族の子供だな…手足の長さと細さで分かる。
 …うん…後を付いて来ている…気配じゃなくて、足音で分かる。こっちの速度に合わせて、忙しなくバタバタと歩いて…いや、走っているっぽい。
 …ふと、出掛けに『占術師』さんに言われた言葉を思い出す…『がんばれ主人公』‼
そう。ここで振り返ったら負けな気がする。走っている幼女の発する言葉次第だが、絶対に巻き込まれる‼しかも、厄介で面倒な事態に‼
「ひゃん‼」
 後方から、可愛らしい悲鳴が‼音から転倒したみたいだ‼
「‼大丈夫⁈」
 ヤバい‼振り返ってしまった‼後方二メートルの位置で幼女が転んでいる‼だが、まだチャンスはある‼幼女は顔を上げていない‼
「すいません‼この子の…」
 親を呼び出すんだ‼保護者、出て来~いカモ~ン
「おかあさ~ん‼だっこ~‼」
 な?この幼女、あたしに手を向けて、思いっきりデカい声で、言い放ちやがったぁ‼
 …衆人環視の下、あたしは幼女を抱きかかえた…どうして、こうなった‼
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