セーラーキャプチャー

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この『幼女』の父も母も知りません‼

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 あたし『マネージャー』は冒険者ギルドに到着。『ギルドマスター』にマッピング調査の報告書を手渡した。『幼女』は抱えたままだ。
「父親は誰だ?」
 分かりません、ついでに、母親も分かりません。
「お前が母親じゃないのか?」
 これ、懐いている様に見えますけど、単純に引き剥がされたくないだけです。服をギッチリ掴んで、足をガッチリホールドして。お陰で、ちょっと苦しいです。
「そうか。エラく懐かれたな」
 探してもらえませんか?この子の親。依頼出しますので。
「冒険者ギルドでは管轄外だ。役場の公設警邏隊に申請しろ」
 あそこ行きたくないんです。騎士のガラが悪いんで。
「地方に飛ばされた連中の溜まり場だからなぁ…まじめにやる気がない連中だ」
 あと迷子の受入となると…やっぱり教会ですか?
「あそこなら大歓迎だろうが、変に勘繰られるぞ?」
 『セーラーキャプチャー』メンバーの誰かの子って事で?
「特別扱いどころか、祀られるんじゃないか?」
 うわぁ…教育に悪そう…
「そうなったら残りは一択だろう?」
 拠点に受け入れるんですか?
「分かっているじゃないか」
 ウチの拠点はクセが強い人達の受け入れ先じゃないんですよ?
「だが、あそこ以上のセキュリティーとなると…この街では騎士団の牢屋くらいか?」
 悪い事してない子を牢屋に入れるのは問題ですよ?それと、この子やっぱり面倒事の種だったりしますか?
「育った面倒事の果ての可能性もあるな」
 知っているなら、教えてもらえますか?あたし達は、色々と情報不足なんです。
「危険領域の調査をするのも冒険者の仕事だぞ?情報は自分達で集めたらどうだ?」
 つまり、この子は危険と?
「そう言う事じゃない。もっと街の人達と触れ合えって事だ」
 そんなに我々は他人行儀ですか?
「ああ。踏み込んじゃいけない線がこの世界の連中とは離れ過ぎている」
 そこは国やギルドや教会の約束がありますから。
「どこの庇護も受けないと言うなら、そう言った制約も必要になるだろ?お前たちの世界は、こちらの世界に比べて文明度が高いんだからな」
 …もう一度宣言しますが、あたし達は元の世界では学生だったんです。大人の社会に触れる機会のない子供だけの集団の一員に過ぎません…‼
「…つまり、何も知らないし、何も教える事が出来ない…か…」
 もちろん、この世界に適応するなら、大人にはなりますが…?
「何を言っている?大人になれない連中の集まりが冒険者ギルドの連中だろ?」
 「それとこれとは話が違う」では、通りませんよ?
「分かったよ。だが、その子はお前らの拠点で受け入れてくれ」
 …後で、ウチの連中に資料庫の書物を調べさせますんで、申請お願いします…
「ん?あたしから聞かなくて良いのか?」
 冒険者なんだから自分で探しますよ‼それと、報告書ちゃんと目を通してください‼
 何だか、腹が立ったので、あたしはドアを強く閉めて、『ギルドマスター』の部屋から出て行った…この苛立ちは通り掛かる人達に同じ質問をされるからだ。
「え?父親って誰?」
 だから、知りません‼ついでに母親も‼

 ギルドを出て、拠点に戻る…途中、肉串の屋台で買い食いする。使っている肉は牛っぽい魔物で看板にそれの絵が描いてある。再現度はまぁまぁ。ご主人の奥さんが描いたらしい。塩とタレがあるけどあたしはタレ派。ん?『幼女』も食べる?
「いいの?」
 いいよ。ただし、食べるんだったら降りなさい‼服を汚されるのはイヤだから‼
「…だったら、いらない…」
 子供は遠慮しないの‼おっちゃん、タレ二本‼
「あいよ‼焼き立てどうだい?」
 もらう‼ハイ‼中銅貨四枚‼
「まいどぉ‼」
 おっちゃんがお金を受け取ると、焼かれている串の二本をこっちに手渡す。基本、この世界は先払いの後渡し。貨幣価値的には中銅貨一枚当たり百円くらいかな?貨幣は小銅貨から金貨までが一般市場で取引されている貨幣で、種類は、銅貨が大・中・小の三種類、銀貨が大・小の二種類、金貨が一種類の計六種類。価格は全部十倍上がり。つまり金貨一枚百万円相当の価値がある。それ以上の価値のある貨幣もあるらしいけど、一般市民はお目にかかる機会などない代物。貴族同士の土地取引などに使われるらしい。
 あたし達『セーラーキャプチャー』は小銀貨二枚が月初めに支給される。これはお小遣い分。つまり私用で使えるお金。必要経費については別途相談となっている。額については会議で決まった。と言うか、『プレジデント』さんの駄々コネに『会計』さんが折れた結果に近い。支給時には希望に応じて両替して渡される。この世界の商店の中には『お釣りは大銅貨以下はお支払いしません』みたいな高級店や、『小銀貨以上は受け付けねぇぞ‼』的な庶民派の店舗もあったりするので、それに対応しての配慮…だって、この世界の金融機関で両替してもらうと、手数料が発生するからね…あ、両替は『セーラーキャプチャー』のメンバーなら、誰でも随時受付可能‼ただし良識の範囲内の時間で…特に、『会計』さんの寝起きや就寝直前、ご飯時やお風呂の時間はキレるので要注意‼
 あたしは近くの公園に向かう。近道…と言うか、裏道を使って見付けた場所だ。では、何故、行きでこの道を使わなかったのか?入り組んでいるので下手に迷い込むと迷子になるから…それと他のメンバーがおいしい串肉の屋台を見付けたとの情報をキャッチしたので来てみたかったんだよなぁ…
「ほら、降りて‼」
 公園と言っているが、遊具も何もないただの空き地。いざ、火事になった時に延焼を防ぐ為の緩衝地の様だな。ただ、一応ベンチはある。全部で二十脚。一辺五十メートルの正方形状の公園の各辺に五脚置いてある。と言うより設置されている。このベンチ、いざと言う時、腰掛部分を外すと、脚の部分が竈になる‼ただ、通常時も竈として使われ、良く、貧民向けの炊き出しを作るのに使用されている。そんな事情もあって、南東端の一脚だけは竈用として、ベンチの腰掛板をなくしている…いや、盗まれたのかな…?
 あたしは『幼女』を抱えたまま、北側中央のベンチに座る。ざっと周囲を見渡すと、公園中央で遊んでいる子供の集団が十人程…鬼ごっこかな?追い駆けっこをしている集団と地面に座っておままごとをしている集団に分かれている。その子供達とは少し離れた位置に保護者らしい女性の集団が世間話をしている。西側南西角のベンチと東側中央のベンチにはぐったりしたカンジで寝ている男性…うん、職ナシ宿ナシなダメな大人だな…一応は生きている様だ…手足の太さや呼吸の深さ、魔力的な反応を見ても、何処かの密偵と言う訳ではないみたいだ…『忍者』さんや『スカウト』ちゃんが居れば、見ただけで分かるんだろうけど、彼女達の『職能』は特殊だからなぁ…いくら万能系の『マネージャー』でもあの能力は持っていない…安全は確保済み。脅威になる存在は周囲になし。
「降りなさい」
 『幼女』に促す。いや、はっきり言おう。
「重いから降りて」
 この『幼女』、あたしがベンチに腰を降ろしても、膝に乗ろうとしない‼ずっと、ガッチリ胴体をホールドしている…ってか、それって歩くより疲れない?
「大丈夫。平気」
 こっちが大丈夫でも平気でもないの‼
「それより、お肉食べたい」
 …よし。交換条件だ…降りたら食べさせる。降りなきゃ食べない…‼
「じゃあ、早く、おウチに行って」
 あたしが休みたいの。
「お肉冷める。せっかく焼き立てなのに」
 拠点で、温め直すよ。
「そんなの堅くなっちゃう~‼」
 …『空間収納』に入れれば、焼き立てアツアツを頂けるんだが、こんな衆人環視の下で使う訳にはいかない…ここが『セーラーキャプチャー』の巡回領域なら、ある程度の無茶は出来るんだけど、他の管轄だと理不尽なイチャモン付けられる。貴族管轄の領域だと余計に面倒なんだよなぁ…
「あれ?『マネージャー』じゃん。どうしたの?こんな所で?」
 あ‼『調理師』さんに『栄養士』さん‼いい所に‼
「お?かわいい子に懐かれているねぇ」
 抱っこ、変わって下さい‼この子、離れてくれなくて‼
「こんだけ懐いているんだから、無理じゃないの‼」
 『幼女』、離れて‼あたしの仲間だから‼服を引っ張らないで‼脱げるから‼
「噂のおいしい肉串の屋台があると言うから来てみたんだけど…それ?」
 あ‼うん‼食べちゃって良いから、助けて‼
「…ああ‼そういう事か‼じゃあ、『栄養士』さんはサンプルに何本か買って来て」
「あ?…ああ‼じゃあ買って来る」
 そう言って、あたしは肉串の一本を『栄養士』さんに渡した。
「この区画を抜ければ、あたし達の巡回領域だから」
 ああ、南東側ね…東側に寝ている人物を警戒。
「りょ~か~い」
 そう言いながら、『調理師』さんは肉串を一口。
「…ん‼普通に美味しい‼」
 あ、『幼女』にあげて‼
「『マネージャー』は?」
 あたしは、とりあえず、いいや…早く戻りたい…
 ベンチから立ち上がって、あたし達は、公園を横切って、南東の巡回領域に入る。
 …緊張したぁ…何も起こらなくて、良かったぁ…
「災難だったね。『超能力者』ちゃんのテレパシーがなかったら、一悶着あったかもね」
 「超能力者」ちゃん、あたしの位置を把握してたのか…ギルドで、あの辺りを管轄している貴族が住民に密告を義務付けているって噂してたの、思い出したんだよ…
「『空間収納』なんて使わなくて正解だね。下手すりゃあたし達と全面戦争だもん‼」
 あ、『栄養士』さんの肉串の代金、あとで払わないと。
「ただの買い食いなのに?」
 …そういう事にしておきます…
「それより気になっているんだけど」
 ?何でしょう?
「その子、いつ産んだの?」
 だから、あたしは産んでねえええぇえ‼
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