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貴方の隣にもう一度立ちたいの。
しおりを挟む「いやー!まさか、あんたからこんなお願いされる日が来るなんて!」
待ち合わせ時間ぴったり5分前に現れたのは、見慣れた美女だった。
「ありがとう、急にごめんね。」
「いいのよ!どうせ暇だし!さ、行きましょ!」
まず、服を買いに行った。
「あんた、可愛いのが似合うのよ…ふわっとした感じ…」
ぶつぶつ言いながら、これもいい、あれもいい…と私に服をあてる。やがて、数着服を持ってきた。
「たぶん、あんたの趣味とか可愛くなる服、ここら辺だと思う。」
その中の淡い赤の服を選んだ。チューリップ畑の写真の色と同じ色。小原田さんの色。
メイクはBAさんと一緒に選んでもらった。
「次は髪よ!あんた暗いのよ!主にその重い髪と、目元まで覆ってる前髪のせいで!!せっかく可愛いのにもったいないのよ!」
そう言って、燈子行きつけのヘアサロンに連れて行かれた。
「まず、前髪を…それから…」
燈子はテキパキとスタイリストさんに指示を出し、自分もついでと、隣で髪を染めてもらっている。
「んで?なんで急に変わろうとしたの?」
「あのね…」
燈子に、小原田さんの名前は伏せて話した。
「へ~?」
ニヤニヤしながら、燈子は聞いてくれた。
「その人の隣に立ちたい、誰かに譲りたくない、ねぇ…あたしに何言われても、変わらなかったあんたが…」
「だって、すごくかっこいいし、お洒落で可愛い人なんだもん。好きな人いるって言ってたけど、諦めるなんて無理…」
「ふふ!よっぽどいい人なのね、その人。」
燈子はとても嬉しそうに笑った。
「…あんた…変わりすぎよ…」
髪型を変え、メイクを変え、買った服を着た私は別人だった。重苦しい髪はナチュナルストレートになり、目元まで覆っていた前髪はゆったりと流れている。地味でどんよりした顔はなりを潜め、清楚で控えめな愛らしさになった。
「すごい。メイク、髪型と服で、こんなに違うなんて…燈子、ありがとう!」
「いや、あんたね…はぁ。」
呆れたように溜息をついた燈子に、思わず抱きついた。
「これで戦う準備は出来た?」
「…うん。ありがと。私、頑張るね。」
そう言った私を燈子はぎゅっと抱きしめてくれた。
小原田さん、ごめんなさい。私、酷い女だ。
貴方の隣にほんの少し立っただけなのに、誰かに譲りたくないって思ってしまった。他の人が貴方の隣に立つなんて、考えたくない。
…好きな人なんて関係ない。私を好きになって。
ひねくれてるし、素直じゃないし、あまり可愛い女じゃないけれど、それでも貴方のそばにいたいの。
そして私は歩き出した。
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