毛糸の恋人

もなか

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転がり続けた林檎は誰ものか

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息を大きく吸う。いるかどうかはわからない。でも…小原田さんの部屋のチャイムを鳴らした。

『はい、小原田です…!?!???!』

懐かしい声が答えて、ほっとした。

「白戸です。話したい事があるんです。」

しばらくして、ドアが開いた。驚き、不安、喜び、色々なものが入り交じった小原田さんが現れた。

「どうぞ…」

久しぶりに入ると、色々変わっていた。
玄関の花はバーベナになっていたし、ひよこは増殖しているし、クッションカバーもテーブル掛けも、違うものに更新されている。

小原田さんは紅茶とクッキーをもって、私の元へ来た。しばらく沈黙した後、

「白戸さん、なんだよね…?なんか、すごく綺麗になったね。」

とちょっと残念そうに言った。少しは何か揺らせたようだ。

「小原田さん。私、あなたが好きです。」

小原田さんが目を見開いた。

「最初にあなたに会った時、不安しかなかった。友達は一人しかいない、こんな地味女に一体何の用なのか、何かしたのか、違う意味でドキドキしました。」

「あなたは私を見つけてくれた人だった。優しくて穏やかで、頑張ろうって思えるなんて、言われた事がなくて、嬉しくて…たぶん、その時からあなたが好きだったと思います。」

そう、きっとあの時からあなたが好きなのだ。勇気を出して私に声をかけてくれた、あなたが大好きなのだ。

暖かくて花が咲いたような笑顔が、ちょっと子供なところが、真剣に働く背中が、懸命に教わった事を飲み込もうとするところが、大好きで、それ以外の全ても愛しい。

「あなたとの暖かくて、甘い幸せな時間を知ってしまった。貴方が好きで、好きでたまらない。」

赤い熱い止まらない。止まれない。小原田さんが、真っ赤だ。林檎みたい。チューリップみたい。可愛い。

「あなたは好きな人がいる。それは知ってる。わかっています。でも、本当に結ばれる前に、少し待ってください。」

一つ大きく息を吸った。そして…

「貴方の隣にいる権利を私にください。手を繋いで口付けて抱きしめられる約束を私に下さい。あなたの好きな人の座を私に奪わせて下さい。」

言い切った瞬間_

「うわあああ!ちょっと、ちょっと待ってくださいいい!!!」

赤く熟れたような小原田さんが、爆発した。

「なんで気付かないんですか!僕の好きな人はあなたですよ!ずっとずっと好きだったんだ!画面の中にいるウォナットが!そして、出会った白戸さんが!優しい声が、指が、僕と話す時だけほころぶその唇も、微笑みも!!あみぐるみなんて言い訳で、ずっと白戸胡桃さんが欲しくて頑張ってたんだ!」

え…?呆けた顔をしている私にそっと小原田さんは手を伸ばし、いつの間にか流れていた涙をそっと拭ってくれた。

「好きな人の座なんて元から君のものだよ。僕の身も心も全部。」

どうしよう、涙が止まらない。

「白戸胡桃さん。好きです。恋人になってください。」

そう言って、小原田さんはあの日作り上げた、くまのあみぐるみを差し出してくれた。

答えのかわりに、私は小原田さんに思いっきり抱きついた。

「小原田さん、大好き…」

「僕もです。」



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