7 / 11
林檎を離すことなんて出来なくて。
しおりを挟む
あの日から小原田さんとは会っていない。会社ですれ違っても目も合わなくなった。もう会わないと決めたのは自分なのに、毎日のようにLINEを見てしまう。
小原田さんはもう、好きな人に思いを告げたのだろうか。作り上げたあみぐるみを持って、誰かに告白する小原田さんの姿を思い浮かべ、引き裂かれるような痛みと悲しみに襲われる。
駄目だ、集中できない。コーヒーでも飲もう。本当は紅茶が好きだけど、会社にはコーヒーしかないのだ。給湯室へと向かうと、先客がいた。顔は知ってるが、名前は知らないという感じの人だった。もう少ししてから来よう。踵を返したが…
「ねー!知ってる!?小原田さん、配達先の女性に告白されたんですって!」
足が止まる。血の気が引くのがわかった。
「え、え、それで、どうしたの!?」
「丁重にお断りしたって言ってたわ!好きな人がいるからって!」
ほっとすると同時に、鋭い痛みが胸に走った。
「好きな人!?小原田さん、好きな人がいたの!?」
「そうなのよー!びっくりよね!信じられないでしょ?でも、この間見ちゃったのよ…」
思わず耳をすました。
「小原田さん、すっごく可愛い女性と腕を組んで歩いていたのー!その後、高そうなホテルに入っていったの!きっと、彼女よ!」
「ええええ!じゃ、本当だったんだー!」
音が遠くなる。ぐじゃぐじゃに引き潰された心が悲鳴をあげる。涙が溢れそうになり、止めようとするも、無理だった。
近くのトイレに走り込み、泣いた。
「嫌…小原田さんっ…」
気付いた。自分はもう、あの時から小原田さんが好きだったのだと。でも、何もかも遅い。彼はもう、他の女のものなのだ…。その事がたまらなく悲しくて辛い。
「この顔で仕事なんて到底無理。」
目元で隠れているとはいえ、気付かれるだろう。私は会社を早退した。
家に着いて、ソファに倒れ込んだ。給湯室での会話を思い出し、また涙が出そうになる。編み物でもしよう。そうして、今だけでも忘れてしまおう。
そう思って、道具を持ってこようとした、その時。小原田さんから貰ったコースターが目に入った。
「っ……!」
抱きしめた。小原田さんの姿が、声が、笑顔が消えてくれない。好きが溢れて止まらない。
「無理…諦められない…」
愛しくて甘くて幸せな時間を知ってしまった。前の日々には戻るなんて考えられなかった。
「ごめんなさい、小原田さん。あなたが好きなの。だから…」
あなたの好きな人の座を、盗りにいく。
小原田さんはもう、好きな人に思いを告げたのだろうか。作り上げたあみぐるみを持って、誰かに告白する小原田さんの姿を思い浮かべ、引き裂かれるような痛みと悲しみに襲われる。
駄目だ、集中できない。コーヒーでも飲もう。本当は紅茶が好きだけど、会社にはコーヒーしかないのだ。給湯室へと向かうと、先客がいた。顔は知ってるが、名前は知らないという感じの人だった。もう少ししてから来よう。踵を返したが…
「ねー!知ってる!?小原田さん、配達先の女性に告白されたんですって!」
足が止まる。血の気が引くのがわかった。
「え、え、それで、どうしたの!?」
「丁重にお断りしたって言ってたわ!好きな人がいるからって!」
ほっとすると同時に、鋭い痛みが胸に走った。
「好きな人!?小原田さん、好きな人がいたの!?」
「そうなのよー!びっくりよね!信じられないでしょ?でも、この間見ちゃったのよ…」
思わず耳をすました。
「小原田さん、すっごく可愛い女性と腕を組んで歩いていたのー!その後、高そうなホテルに入っていったの!きっと、彼女よ!」
「ええええ!じゃ、本当だったんだー!」
音が遠くなる。ぐじゃぐじゃに引き潰された心が悲鳴をあげる。涙が溢れそうになり、止めようとするも、無理だった。
近くのトイレに走り込み、泣いた。
「嫌…小原田さんっ…」
気付いた。自分はもう、あの時から小原田さんが好きだったのだと。でも、何もかも遅い。彼はもう、他の女のものなのだ…。その事がたまらなく悲しくて辛い。
「この顔で仕事なんて到底無理。」
目元で隠れているとはいえ、気付かれるだろう。私は会社を早退した。
家に着いて、ソファに倒れ込んだ。給湯室での会話を思い出し、また涙が出そうになる。編み物でもしよう。そうして、今だけでも忘れてしまおう。
そう思って、道具を持ってこようとした、その時。小原田さんから貰ったコースターが目に入った。
「っ……!」
抱きしめた。小原田さんの姿が、声が、笑顔が消えてくれない。好きが溢れて止まらない。
「無理…諦められない…」
愛しくて甘くて幸せな時間を知ってしまった。前の日々には戻るなんて考えられなかった。
「ごめんなさい、小原田さん。あなたが好きなの。だから…」
あなたの好きな人の座を、盗りにいく。
0
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる