5 / 11
転がる林檎は甘くなる
しおりを挟む
ぴこん!とLINEの通知が来た。差出人は小原田さんだった。
『こんばんは!今週の水曜日、仕事が終わったらスイーツバイキングに行きませんか?』
水曜日の仕事帰り…多分大丈夫だ。
『いいですよ。』
と返信し、ちょっと考えてから、
『楽しみにしています』
と送った。なんだか無性に嬉しくて、ガッツポーズをしてしまった。
「白戸さん!こっちです!」
そうして、水曜日の仕事が終わった後、私は小原田さんとスイーツバイキングへ向かった。会社の人の目を気にする私を思いやってか、少し離れた場所で車に乗せてくれた。その気遣いにまた、ふわふわした。
そうして、小さなお店に到着した。
「にいちゃーーん!!来たよー!」
勢いよくドアを開け、中の人へ声をかける小原田さん。
「雪斗!!待ってたよ!」
そして、それを上回る元気な声が飛んできた。
「にいちゃ…??」
混乱する私を見て、悪戯っぽく小原田さんが微笑んだ。胸が大きく高鳴る。こんな表情もできるんだ…
「ここのケーキ屋『はるいろ』の店主件パティシエは僕の兄の晴也なんです!そして、今日は新作、試作ケーキの試食会です!」
「私、大した感想言えないですよ…?」
話が違うじゃないかー!と叫びそうになるのを堪える。
「いえいえ!食べてくれるだけでいいんです!ただ、美味しかったー!と言って欲しくて!今日は代金は貰いません!」
なるほどね。くちコミか。
「人脈ないけれど…美味しく頂きます。」
そう言って、席に着いた。
「んっ…!このロールケーキ、美味し!?」
中にイチヂクが入っていてる。さっぱりとした生クリームとイチヂクの酸味が溶けそうだ。
「それ、この中で1番の自信作なんです!」
ぱあっと顔をほころばせた晴也さんは、小原田さんそっくりだ。
「僕はチョコレートケーキの好きだなー!」
「それ、少し改良したんだ!どうだ?前より美味しいか?」
「うん!前のふわっとしたチョレートケーキも好きだけど、この重厚感のあるのも好き!」
甘いケーキに舌鼓をうち、和やかな会話が続いた。そうして、全てのケーキが私たちのお腹に収まった。
「今日はありがとうございました。どれも美味しくて幸せでした。ご馳走様でした。」
「いえいえ!こちらこそ、美味しくて食べてくれて、ありがとうございました!それに、弟がお世話になっているようで…!」
え、と小原田さんを見ると、
「兄ちゃんに白戸さんにあみぐるみ教えて貰ってるって話したんだ。そしたら、お礼も兼ねて試食会に招待しようって事になって。」
「そうだったんですか…ありがとうございます。」
嬉しかった。すごく。小原田さん兄弟はそんな私を見て微笑んでくれた。
「じゃ、俺達そろそろ帰るね!」
車の準備をしに行った小原田さんの元へ向かおうとしたら
「あ、白戸さん待って!」
晴也さんが小さな包みを私にくれた。
「これ、イチヂクのロールケーキ。少しだけど食べて。」
「ありがとうございます!!」
すごく美味しかったから、嬉しい。
「うちの弟は、すごく優しくて明るい、いい子なんです。白戸さん、どうかこれからも、弟をよろしくお願いします。」
私達の関係は!口を開こうとしたら、
「白戸さーん!帰ろー!」
小原田さんの声に遮られた。
「では、今日はありがとうございました!また、ぜひ来てくださいね!」
こうして、晴也さんとわかれた。
「小原田さん、今日はありがとうございました。とても美味しくて、びっくりでした。」
「よかったー!気に入ってくれて嬉しいです!また、一緒に行きましょう!」
また、次も一緒に…。
「はい、ぜひ。次が楽しみです。」
心の底からそう思えた。次を楽しみにする事も、久しぶりだった。満腹だからだろうか。
少しウトウトしてしまう。
「寝ていいですよ。起こしますから。」
その言葉に甘えて、目を閉じた。
「白戸さんは…可愛い、ですね。」
薄れゆく意識の中、聞こえてきた言葉。
「そんな事、ないです…でも私、小原田さんと一緒にいると、なんだかほわほわして…だから、可愛いとしたら、きっと…小原田さんだけなの…」
むにゃむにゃ、ぽろりと転がった言葉。
そうして、私は眠りに落ちた。
「っ~~~!!!!」
だから、その隣で悶絶する小原田さんには気付かなかった。
『こんばんは!今週の水曜日、仕事が終わったらスイーツバイキングに行きませんか?』
水曜日の仕事帰り…多分大丈夫だ。
『いいですよ。』
と返信し、ちょっと考えてから、
『楽しみにしています』
と送った。なんだか無性に嬉しくて、ガッツポーズをしてしまった。
「白戸さん!こっちです!」
そうして、水曜日の仕事が終わった後、私は小原田さんとスイーツバイキングへ向かった。会社の人の目を気にする私を思いやってか、少し離れた場所で車に乗せてくれた。その気遣いにまた、ふわふわした。
そうして、小さなお店に到着した。
「にいちゃーーん!!来たよー!」
勢いよくドアを開け、中の人へ声をかける小原田さん。
「雪斗!!待ってたよ!」
そして、それを上回る元気な声が飛んできた。
「にいちゃ…??」
混乱する私を見て、悪戯っぽく小原田さんが微笑んだ。胸が大きく高鳴る。こんな表情もできるんだ…
「ここのケーキ屋『はるいろ』の店主件パティシエは僕の兄の晴也なんです!そして、今日は新作、試作ケーキの試食会です!」
「私、大した感想言えないですよ…?」
話が違うじゃないかー!と叫びそうになるのを堪える。
「いえいえ!食べてくれるだけでいいんです!ただ、美味しかったー!と言って欲しくて!今日は代金は貰いません!」
なるほどね。くちコミか。
「人脈ないけれど…美味しく頂きます。」
そう言って、席に着いた。
「んっ…!このロールケーキ、美味し!?」
中にイチヂクが入っていてる。さっぱりとした生クリームとイチヂクの酸味が溶けそうだ。
「それ、この中で1番の自信作なんです!」
ぱあっと顔をほころばせた晴也さんは、小原田さんそっくりだ。
「僕はチョコレートケーキの好きだなー!」
「それ、少し改良したんだ!どうだ?前より美味しいか?」
「うん!前のふわっとしたチョレートケーキも好きだけど、この重厚感のあるのも好き!」
甘いケーキに舌鼓をうち、和やかな会話が続いた。そうして、全てのケーキが私たちのお腹に収まった。
「今日はありがとうございました。どれも美味しくて幸せでした。ご馳走様でした。」
「いえいえ!こちらこそ、美味しくて食べてくれて、ありがとうございました!それに、弟がお世話になっているようで…!」
え、と小原田さんを見ると、
「兄ちゃんに白戸さんにあみぐるみ教えて貰ってるって話したんだ。そしたら、お礼も兼ねて試食会に招待しようって事になって。」
「そうだったんですか…ありがとうございます。」
嬉しかった。すごく。小原田さん兄弟はそんな私を見て微笑んでくれた。
「じゃ、俺達そろそろ帰るね!」
車の準備をしに行った小原田さんの元へ向かおうとしたら
「あ、白戸さん待って!」
晴也さんが小さな包みを私にくれた。
「これ、イチヂクのロールケーキ。少しだけど食べて。」
「ありがとうございます!!」
すごく美味しかったから、嬉しい。
「うちの弟は、すごく優しくて明るい、いい子なんです。白戸さん、どうかこれからも、弟をよろしくお願いします。」
私達の関係は!口を開こうとしたら、
「白戸さーん!帰ろー!」
小原田さんの声に遮られた。
「では、今日はありがとうございました!また、ぜひ来てくださいね!」
こうして、晴也さんとわかれた。
「小原田さん、今日はありがとうございました。とても美味しくて、びっくりでした。」
「よかったー!気に入ってくれて嬉しいです!また、一緒に行きましょう!」
また、次も一緒に…。
「はい、ぜひ。次が楽しみです。」
心の底からそう思えた。次を楽しみにする事も、久しぶりだった。満腹だからだろうか。
少しウトウトしてしまう。
「寝ていいですよ。起こしますから。」
その言葉に甘えて、目を閉じた。
「白戸さんは…可愛い、ですね。」
薄れゆく意識の中、聞こえてきた言葉。
「そんな事、ないです…でも私、小原田さんと一緒にいると、なんだかほわほわして…だから、可愛いとしたら、きっと…小原田さんだけなの…」
むにゃむにゃ、ぽろりと転がった言葉。
そうして、私は眠りに落ちた。
「っ~~~!!!!」
だから、その隣で悶絶する小原田さんには気付かなかった。
0
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる