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6話・どうしてダメなの?
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その晩、アシュリーはまたエルナンの部屋を訪れた。
エルナンはそれを予想してかベッドには入らず、机に向かって本を読んでいた。
「アシュリー、夜に男の部屋を訪問するのはダメなんだぞ」
エルナンは本に目を向けたまま、ぼそぼそと言う。
「どうして?」
「……ダメなものはダメなんだ」
「……わかんない」
エルナンはうまくアシュリーに説明できないで無言になる。
「ねぇ、お兄さんの話聞かせて」
アシュリーはスタスタと入っていくと入口に近いソファに腰かけた。
「ええ? さっきまで散々話しただろ」
「もっと聞きたいの」
「……」
「お兄さんって、花園に来たことあるのかな」
「そりゃあ……あるんじゃない」
「じゃああたしもはじめましてじゃなかったのかもしれないよね」
「……うん」
「会ったことある気がするって言われたの」
「へぇ」
「もしかして小さなころはフェアリーが見えてたのかなぁ」
「かもね」
「エルナンといくつ離れてるの?」
「さぁ」
「!! 知らないの?」
「……知ってる」
エルナンはなぜかイライラしている。
「年は24。あとは直接本人に聞けば? 頼めば一緒に寝てくれるかもよ」
やけになって当てこすりを言ったが、アシュリーには通じない。
「え!? 寝てくれるかな……」などと顔を赤らめている。
「でも……なんか恥ずかしい」
(オレと寝るのは恥ずかしくないのかよ)
「もし今度はお兄さんと口がくっついたらどうしたらいい?」
(はぁ……!?)
自分でもこのイライラの正体が何かわからないまま、エルナンは怒りが頂点に達しそうになる。アシュリーには人間の常識が通じないことはわかっているが、無邪気すぎて嫌になる。
「もう、その話はいいよ!」
エルナンの強い言い方にビックリしているアシュリーに近づき、その腕を引こうとしてやめる。
「オレもう寝るから」
「どうして怒ってるの……?」
「怒ってない」
「怒ってるじゃない」
「そう思うならそうなんじゃない」
「だからどうして?」
「……自分で考えてよ」
エルナンはそう言って廊下に続く扉を開けた。
「……」
アシュリーは諦めて部屋を出ていく。
廊下に出て振り返ると、静かにだが容赦なく扉が閉じられ、鍵のかかる音がした。
アシュリーは一度は自分の部屋のベッドに戻って横たわってみたものの、静かな部屋が落ち着かなくて眠れない。窓の部屋を開けて風の音や虫のなく音を聞いてみる。
書庫で会ったお兄さんのこと、なぜか怒っていたエルナン……じっとしていてもいろいろ考えてしまう。
さすがにエルナンの部屋にはもう行けない……エルナンはお兄さんの部屋に行けば、と言ったが勇気が出ない。そもそも部屋の場所も知らない……。
アシュリーは何度も寝返りを打った後、はっとして起き上がった。
さっき開けた窓をもう一度閉めて、部屋を出ていく。
コンコン、扉を控えめにノックをすると出てきたのは昼間のメイドではなく、エイプリルだった。
「アシュリー? どうしたのですか?」
エイプリルは少し驚いたようだが、部屋に迎え入れてくれた。
「ごめんね、もう寝ていた?」と申し訳ない顔で聞くと、エイプリルはかぶりを振る。
「夕方、少し具合が悪くて寝てたんです。そしたら今度は眠れなくて。」
アシュリーが「一緒に寝てもいい?」と聞くとうれしそうに微笑んでくれる。
「うれしい!じゃあベッドで昼間のお話の続きをしましょう……!」
二人並んでベッドに横になる。
ついついお兄さんの話を訊いてしまうが、エイプリルは怒らないでいろいろ話してくれる。やさしいグレンお兄ちゃんは王都から帰ると甘いお菓子をお土産に必ず顔を出してくれる。
幼いころ、外に出たいと駄々をこねるエイプリルを抱きかかえて、庭を見せてくれたこと。父に頼んで裏側の玄関からすぐのところに小さな温室を作ってくれたこと。エイプリルの持っているいくつかのフェアリーの本は兄が買ってきてくれたこと……。
そんな話をしながら、気づくとエイプリルはウトウトと眠り始めていた。
アシュリーはその顔をしばらく眺めていた。
(本当にきれいな顔だわ。フェアリーたちも形無しね)
人を惑わすこともあるというフェアリーたちはみな美しい顔をしている。アシュリーもおそらく悪くない容貌だと思うが、エイプリルは天使か、月の女神のようだ。
白い顔に眉毛もまつげもプラチナの輝きを持っていて、もっと元気になって薔薇色の頬になったら完璧ね、などと考えながら、控えめな小さな鼻とその下にあるピンク色のくちびるに目をやった。
(きれい……それに、とても柔らかそう)
アシュリーはためらいもせず、そのくちびるに自分のくちびるを寄せた。
ちゅっ……
ぴりぴりと体に快感が走る。
人とくちびるを触れ合うのはどうしてこんなに気持ちがいいのだろう。
ちゅっ、ちゅっとくちづけを繰り返すと、パチっとエイプリルが目を開けた。
「綺麗な碧い目……」
アシュリーが微笑みかけると、エイプリルはびっくりした顔をしている。
「ねぇ…もっとくちびるをつけてもいい?」
「アシュリー……私たち女の子同士なのに……」
「女の子同士だとダメなの??」
「えっ?」
ちゅっ
「ほら……気持ちいいでしょう。……エイプリルのくちびる……すごく柔らかい。もっとくっつけたい……」
ちゅっ、ちゅっ……
流されるように受け入れてしまったエイプリルも、いつしかアシュリーのくちびるに夢中になっていた。
エルナンはそれを予想してかベッドには入らず、机に向かって本を読んでいた。
「アシュリー、夜に男の部屋を訪問するのはダメなんだぞ」
エルナンは本に目を向けたまま、ぼそぼそと言う。
「どうして?」
「……ダメなものはダメなんだ」
「……わかんない」
エルナンはうまくアシュリーに説明できないで無言になる。
「ねぇ、お兄さんの話聞かせて」
アシュリーはスタスタと入っていくと入口に近いソファに腰かけた。
「ええ? さっきまで散々話しただろ」
「もっと聞きたいの」
「……」
「お兄さんって、花園に来たことあるのかな」
「そりゃあ……あるんじゃない」
「じゃああたしもはじめましてじゃなかったのかもしれないよね」
「……うん」
「会ったことある気がするって言われたの」
「へぇ」
「もしかして小さなころはフェアリーが見えてたのかなぁ」
「かもね」
「エルナンといくつ離れてるの?」
「さぁ」
「!! 知らないの?」
「……知ってる」
エルナンはなぜかイライラしている。
「年は24。あとは直接本人に聞けば? 頼めば一緒に寝てくれるかもよ」
やけになって当てこすりを言ったが、アシュリーには通じない。
「え!? 寝てくれるかな……」などと顔を赤らめている。
「でも……なんか恥ずかしい」
(オレと寝るのは恥ずかしくないのかよ)
「もし今度はお兄さんと口がくっついたらどうしたらいい?」
(はぁ……!?)
自分でもこのイライラの正体が何かわからないまま、エルナンは怒りが頂点に達しそうになる。アシュリーには人間の常識が通じないことはわかっているが、無邪気すぎて嫌になる。
「もう、その話はいいよ!」
エルナンの強い言い方にビックリしているアシュリーに近づき、その腕を引こうとしてやめる。
「オレもう寝るから」
「どうして怒ってるの……?」
「怒ってない」
「怒ってるじゃない」
「そう思うならそうなんじゃない」
「だからどうして?」
「……自分で考えてよ」
エルナンはそう言って廊下に続く扉を開けた。
「……」
アシュリーは諦めて部屋を出ていく。
廊下に出て振り返ると、静かにだが容赦なく扉が閉じられ、鍵のかかる音がした。
アシュリーは一度は自分の部屋のベッドに戻って横たわってみたものの、静かな部屋が落ち着かなくて眠れない。窓の部屋を開けて風の音や虫のなく音を聞いてみる。
書庫で会ったお兄さんのこと、なぜか怒っていたエルナン……じっとしていてもいろいろ考えてしまう。
さすがにエルナンの部屋にはもう行けない……エルナンはお兄さんの部屋に行けば、と言ったが勇気が出ない。そもそも部屋の場所も知らない……。
アシュリーは何度も寝返りを打った後、はっとして起き上がった。
さっき開けた窓をもう一度閉めて、部屋を出ていく。
コンコン、扉を控えめにノックをすると出てきたのは昼間のメイドではなく、エイプリルだった。
「アシュリー? どうしたのですか?」
エイプリルは少し驚いたようだが、部屋に迎え入れてくれた。
「ごめんね、もう寝ていた?」と申し訳ない顔で聞くと、エイプリルはかぶりを振る。
「夕方、少し具合が悪くて寝てたんです。そしたら今度は眠れなくて。」
アシュリーが「一緒に寝てもいい?」と聞くとうれしそうに微笑んでくれる。
「うれしい!じゃあベッドで昼間のお話の続きをしましょう……!」
二人並んでベッドに横になる。
ついついお兄さんの話を訊いてしまうが、エイプリルは怒らないでいろいろ話してくれる。やさしいグレンお兄ちゃんは王都から帰ると甘いお菓子をお土産に必ず顔を出してくれる。
幼いころ、外に出たいと駄々をこねるエイプリルを抱きかかえて、庭を見せてくれたこと。父に頼んで裏側の玄関からすぐのところに小さな温室を作ってくれたこと。エイプリルの持っているいくつかのフェアリーの本は兄が買ってきてくれたこと……。
そんな話をしながら、気づくとエイプリルはウトウトと眠り始めていた。
アシュリーはその顔をしばらく眺めていた。
(本当にきれいな顔だわ。フェアリーたちも形無しね)
人を惑わすこともあるというフェアリーたちはみな美しい顔をしている。アシュリーもおそらく悪くない容貌だと思うが、エイプリルは天使か、月の女神のようだ。
白い顔に眉毛もまつげもプラチナの輝きを持っていて、もっと元気になって薔薇色の頬になったら完璧ね、などと考えながら、控えめな小さな鼻とその下にあるピンク色のくちびるに目をやった。
(きれい……それに、とても柔らかそう)
アシュリーはためらいもせず、そのくちびるに自分のくちびるを寄せた。
ちゅっ……
ぴりぴりと体に快感が走る。
人とくちびるを触れ合うのはどうしてこんなに気持ちがいいのだろう。
ちゅっ、ちゅっとくちづけを繰り返すと、パチっとエイプリルが目を開けた。
「綺麗な碧い目……」
アシュリーが微笑みかけると、エイプリルはびっくりした顔をしている。
「ねぇ…もっとくちびるをつけてもいい?」
「アシュリー……私たち女の子同士なのに……」
「女の子同士だとダメなの??」
「えっ?」
ちゅっ
「ほら……気持ちいいでしょう。……エイプリルのくちびる……すごく柔らかい。もっとくっつけたい……」
ちゅっ、ちゅっ……
流されるように受け入れてしまったエイプリルも、いつしかアシュリーのくちびるに夢中になっていた。
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