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27話・覚悟して
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フェアリーの力が残っている可能性……アーネスト先生と話してさらに情報が増えて、頭がパンクしそうになりながらアシュリーは考えていた。
先ほど、先生と抱き合い、くちびるを合わせながらも先生はアシュリーの瞳の様子をうかがっていたように思う。
何も言わなかったということは、今日は問題なかったのだろう。もっと体にも触って欲しかったが、あっさりと「時間だ」と言って帰ってしまった。おとといから悶々と悩んでいる間、誰とも触れ合えず欲求不満だったアシュリーにはキスだけでは物足りなかったが、明日の授業では……などとついそっちに考えが脱線しそうになる。
自分の顔を両手でパシッと叩いて、もう一度考えてみる。アシュリーは自分たちフェアリーのことをよくわかっていないと思った。
(この本の作者が先生の曾祖父さんだなんて……どうして当時のフェアリーはいなくなったのかしら?曾祖父さんがいなくなったから?)
アシュリーは、本の表紙を眺めたり中を開いてみたりしながら考えてみる。ダグラス・アーネスト、もしこの人もフェアリーと絆を結んでいたとしたら……? ううん、それなら加護があったんじゃないかしら。事業を失敗するなんて……。
本の中身をもう一度ざっと見てみたが、幸せに暮らしていたころの思い出やフェアリーから聞いた話が中心で、彼が加護を受けていたのか、絆を結んでいたのかなどはわからない。
——加護があったとしても永遠じゃないのかも……ジャンの力がどれくらい続くか気をつけていたらわかるかしら。エルナンに対する加護は本当にお兄さんが帰ってきたことなのかしら……。
ふと、もしかしたら他にこの人の本がないだろうか、そう考えてアシュリーは書庫に行ってみることにした。
カチャリ
書庫の鍵は開いていた。今日も高窓からやわらかく光が射し、部屋の中はほんのりと明るい。アシュリーはフェアリーの本があった棚を探して奥に進んでみる。
(確かこの辺りに……)
並んでいる本を指でたどりながら、元の場所を探すとちょうど1冊分場所が開いているところがあった。近くに並んでいる本を何冊か取り出して見てみるが、同じ作者の本は見つからない。
(この1冊だけなのね……でも、もしかして、お兄さんに訊いたら他の本も知っているかも)
その時、すっと背後から影が差し、アシュリーを挟むようにして二本の腕が伸びてきて、とん、と目の前の棚に手を付いた。
「アシュリー」
低い声で耳元でささやかれビクッと反応してしまう。振り返らなくてもグレンの声だとわかった。
「また星を見に来てくれるのを待ってたのに、なかなか来てくれないんだね」
アシュリーが少しだけ振り返ると、グレンが微笑んでいた。でもまなざしが真剣な気がしてドキドキと緊張でいたたまれなくなる。
ドキドキドキドキ……
(うう、何これ……胸が……)
「今晩は会いに来てくれないか?」
その声は優しいがあらがえない言い方で、アシュリーは真っ赤になってこくりと頷くしかできない。
「よかった。ありがとう。……でも、そうだな。今夜は満月だから南向きの俺の部屋のバルコニーの方が夜空が楽しめる。部屋に来てくれるか……?」
「あ、あの、あたし、お兄さんの部屋がどこか知らなくて」
そう答えるとふふっとグレンが笑う。
「エルナンの部屋の隣だよ。今夜はいつもと間違えないでこっちに来て」
「む、むねが……」
「え?」
ずっと耳元で囁かれていると、アシュリーは胸が張り裂けそうに苦しくなってきた。グレンはチラとアシュリーの胸元を見たのでさらにドキドキが高まった。
「う、ううん。あの、いつもって……」
グレンの意味深な言い方が少し気になってしまった。ディーンに注意されたから周りは気にしていたつもりだけど……。
「この季節はバルコニーで星を見ているとね、外のいろいろな会話や物音が聞こえてくるんだ。まあ、何度注意しても窓を開けたまま寝るのはエルナン1人だけだけどな、いつもはいびきが聞こえてくる」
アシュリーは、さらに血がかぁっとのぼる感じがした。エルナンの部屋にいる時の声や物音を聞かれていたのだろうか? いびきまで聞こえるなんて……いつも窓なんて気にしていなかった。
(胸が破裂しそう……!!)
その時、グレンがさらに顔を近づけてきたので、アシュリーは耳にグレンの鼻か唇が当たった気がして身体がビクッと跳ねた。
「アシュリー、覚悟して来てくれ。待ってる」
先ほど、先生と抱き合い、くちびるを合わせながらも先生はアシュリーの瞳の様子をうかがっていたように思う。
何も言わなかったということは、今日は問題なかったのだろう。もっと体にも触って欲しかったが、あっさりと「時間だ」と言って帰ってしまった。おとといから悶々と悩んでいる間、誰とも触れ合えず欲求不満だったアシュリーにはキスだけでは物足りなかったが、明日の授業では……などとついそっちに考えが脱線しそうになる。
自分の顔を両手でパシッと叩いて、もう一度考えてみる。アシュリーは自分たちフェアリーのことをよくわかっていないと思った。
(この本の作者が先生の曾祖父さんだなんて……どうして当時のフェアリーはいなくなったのかしら?曾祖父さんがいなくなったから?)
アシュリーは、本の表紙を眺めたり中を開いてみたりしながら考えてみる。ダグラス・アーネスト、もしこの人もフェアリーと絆を結んでいたとしたら……? ううん、それなら加護があったんじゃないかしら。事業を失敗するなんて……。
本の中身をもう一度ざっと見てみたが、幸せに暮らしていたころの思い出やフェアリーから聞いた話が中心で、彼が加護を受けていたのか、絆を結んでいたのかなどはわからない。
——加護があったとしても永遠じゃないのかも……ジャンの力がどれくらい続くか気をつけていたらわかるかしら。エルナンに対する加護は本当にお兄さんが帰ってきたことなのかしら……。
ふと、もしかしたら他にこの人の本がないだろうか、そう考えてアシュリーは書庫に行ってみることにした。
カチャリ
書庫の鍵は開いていた。今日も高窓からやわらかく光が射し、部屋の中はほんのりと明るい。アシュリーはフェアリーの本があった棚を探して奥に進んでみる。
(確かこの辺りに……)
並んでいる本を指でたどりながら、元の場所を探すとちょうど1冊分場所が開いているところがあった。近くに並んでいる本を何冊か取り出して見てみるが、同じ作者の本は見つからない。
(この1冊だけなのね……でも、もしかして、お兄さんに訊いたら他の本も知っているかも)
その時、すっと背後から影が差し、アシュリーを挟むようにして二本の腕が伸びてきて、とん、と目の前の棚に手を付いた。
「アシュリー」
低い声で耳元でささやかれビクッと反応してしまう。振り返らなくてもグレンの声だとわかった。
「また星を見に来てくれるのを待ってたのに、なかなか来てくれないんだね」
アシュリーが少しだけ振り返ると、グレンが微笑んでいた。でもまなざしが真剣な気がしてドキドキと緊張でいたたまれなくなる。
ドキドキドキドキ……
(うう、何これ……胸が……)
「今晩は会いに来てくれないか?」
その声は優しいがあらがえない言い方で、アシュリーは真っ赤になってこくりと頷くしかできない。
「よかった。ありがとう。……でも、そうだな。今夜は満月だから南向きの俺の部屋のバルコニーの方が夜空が楽しめる。部屋に来てくれるか……?」
「あ、あの、あたし、お兄さんの部屋がどこか知らなくて」
そう答えるとふふっとグレンが笑う。
「エルナンの部屋の隣だよ。今夜はいつもと間違えないでこっちに来て」
「む、むねが……」
「え?」
ずっと耳元で囁かれていると、アシュリーは胸が張り裂けそうに苦しくなってきた。グレンはチラとアシュリーの胸元を見たのでさらにドキドキが高まった。
「う、ううん。あの、いつもって……」
グレンの意味深な言い方が少し気になってしまった。ディーンに注意されたから周りは気にしていたつもりだけど……。
「この季節はバルコニーで星を見ているとね、外のいろいろな会話や物音が聞こえてくるんだ。まあ、何度注意しても窓を開けたまま寝るのはエルナン1人だけだけどな、いつもはいびきが聞こえてくる」
アシュリーは、さらに血がかぁっとのぼる感じがした。エルナンの部屋にいる時の声や物音を聞かれていたのだろうか? いびきまで聞こえるなんて……いつも窓なんて気にしていなかった。
(胸が破裂しそう……!!)
その時、グレンがさらに顔を近づけてきたので、アシュリーは耳にグレンの鼻か唇が当たった気がして身体がビクッと跳ねた。
「アシュリー、覚悟して来てくれ。待ってる」
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